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HRのシーズン間の変化と球場の影響

 以前の分析では、HRになりやすい打球の角度と速度(バレル)の割合に対して、実際のHRの少ない打者は翌シーズンのHRは増加傾向にあること、反対にバレルの割合に対して実際のHRの多い打者は翌シーズンのHRは減少傾向にあることを確認しました。

 一方で、最近は打者の飛球と球場の関係を見ています。

 これは、飛球がMLBのどの球場でもHRになるような打球だったか、それとも球場によってはHRにならないような打球だったかという分類をします。

 さて、今回のテーマですが、バレルに対して実際のHRの少ない打者、もしくは実際のHRの多かった打者の飛球はどんなものだったのだろう?というものです。

 例えば、バレルの割合に対して実際のHRの多かった打者は、球場によってはHRにならないような打球がHRになったためにバレルの割合に対するHRが多かったりするのでしょうか?

バレルの割合とHR

 まずは、フライに対するバレルの割合(Barrel/FB)とHRの割合(HR/FB)の関係を以下の図1に示します。

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 データは2019年から2021年までのレギュラーシーズンとプレーオフの成績を合わせたものです。

 強い正の相関関係が認められました。また、HR/FB = 0.5118 x Barrel/FB + 0.0353 という予測式を求めました。

 この予測式によって求められる値は、バレルの割合(Barrel/FB)から推定されるHR/FBの値となります。この値と実際のHR/FBの差分(HR/FB:実測値-推定値)を求めました。この値を後で分析に用います。

球場を考慮した飛球の分類

 次に、前回までの分析で用いた飛球の分類ですが、これはLeaderboardにあるホームランのデータにあります。

・No Doubters: Out at All 30 Stadiums,
・Mostly Gone: Out at 8 to 29 Stadiums
・Doubters: Out at 7 Stadiums or Fewer

 “No Doubters”はMLB30球団全ての球場でHRとなる打球の意で、文句なしのHRとでも呼ぶことができるでしょうか。“Mostly Gone”は8~29のほとんどの球場でHRとなる打球、最後の“Doubters”は限られた球場でしかHRにならない打球を意味します。

 これらの飛球と、先ほど求めたHR/FBの値の関係を見たいのですが、その前にフライに対する3つの飛球の割合と、バレルの割合(Barrel/FB)の関係を以下の図2-1から図2-3に示します。

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 バレルの割合(Barrel/FB)と相関が認められるのは、Mostly Gone/FBとNo Doubters/FBです。この関係は、前回分析したHR/FBと3つの飛球の関係でも認められたものです。図1で見たようにバレルの割合(Barrel/FB)とHR/FBには強い正の相関が認められていることから、同じような結果となったと思います。

HRの差と3つの飛球の割合との関係

 それでは、HRの実測値と推定値の差分(実測値-推定値)と3つの飛球の関係を以下の図3-1から図3-3に示します。

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 図は横の軸にHRの実測値と推定値の差分(実測値-推定値)をとっています。右に行くほど実測値の値のほうが大きく、その結果として翌年のHR/FBは低下傾向にあります。逆に左に行くほど推定値のほうが大きく、こちらは翌年のHR/FBは上昇傾向にあります。

 相関があるといえるのは図3-3のNo Doubters/FBで、HRの実測値と推定値の差分(実測値-推定値)がプラス、つまり推定よりもHRの多い打者はNo Doubters/FBも多いという関係を確認できました。

まとめ

 HR/FBの実測値と推定値の違いの背景として、今回見た3つの飛球の分類の関りを確認しました。とりあえず、まぁこういうものかという結果を受けて、次回はシーズン間で成績がどう変わっていくかを確認していこうと思います。

 Baseball Savantにここから物申しても届かないとは思いますが、できればMostly GoneとDoubtersのうち何本がHRになったかというデータは欲しいところです。

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