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イタリアバレーのデータ事情 スパイク決定率

 今回からは趣向を変えて、先日集めたイタリアのデータを少し集計してみようと思います。

 日本のスポーツは、バレーボールに限らず、諸外国との比較で語られることが多いと思います。一方で、そうした比較はステレオタイプに基づくものが多く、実態をどれだけ把握できているのか疑問に感じることも少なくありません。

 そこで今回は、このイタリアリーグのデータを用いて、スパイクの決定率の基本的な情報を把握しておきたいと思います。

 何か特別な発見を目指すというよりは、そもそもイタリアでの決定率はどんなものかという基本的な前提を知っておくための分析が目的です。

分析データ

 分析に使用したデータは、下記のリンクよりイタリアリーグ男女1部、2010/11シーズンから2018/19シーズンまでのレギュラーラウンドの試合ごとのスコアとしました。

男子:https://www.legavolley.it/
女子:https://www.legavolleyfemminile.it/

シーズンごとのリーグ全体の決定率の推移

 最初に確認するのは、

そもそもリーグ全体のスパイクの決定率ってどのくらいの値なの?

 という点です。比較対象として日本のVリーグ1部のデータと合わせたものを以下の図1に示します。

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 実線がイタリア、破線が日本のデータを表します。イタリアのデータを見ると、男女ともに数%の変動はありながらも、概ね一定の水準を保っているといえそうです。

 細かい値については、以下の表1に示します。

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 日本との差は、大体イタリアのほうが1%ほど高くなっています。男子はここ数年で日本が追いついてきたでしょうか。この差が誤差程度のものなのか、何か意味のあるリーグ間の差なのかは現段階ではわかりません。もう少し調べる必要があります。

分布も見ておこう

 リーグ全体の決定率を確認しましたが、これだけだと情報として少し不十分で、データを集めた際には、分布の確認もしておくことを勧めます。

 例えば、あるシーズンの決定率を計算すると50%だった場合、データの分布は以下の図2のようになっている可能性が考えられます。

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 1つは赤線のような分布で、50%付近に多くのデータが該当し、そこから値が離れるほど該当するデータは少なくなるというタイプです。データを集めた場合、多くのデータはこのような形をしています。

 一方で、水色は75%付近に該当するデータと、25%付近に該当するデータが多いという分布です。数値は適当な値ですが、リーグの中で戦力の二極化が起こった場合このような分布になる可能性があり、現実でも起こりうると考えてよい傾向です。

 このように、決定率が同じであっても、分布を見るとグループの性質が異なるということがありますので、基礎集計の一環としての分布の確認は重要です。

イタリアリーグの決定率の分布

 前置きが長くなりましたが、イタリアリーグの決定率の分布を確認していきたいと思います。まずは男子のデータを以下の図3-1に示します。

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 9シーズン分の分布(ALL)と、3年ごとの分布を表した図となっています。分布の形は図2の赤線で示したタイプといえそうです。

 続いて、女子のデータを以下の図3-2に示します。

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 こちらも二極化しているとはいえない分布です。18/19シーズンのみ分布が右寄りですが、これは図1でも決定率の上昇として確認できます。

決定率と勝敗との関係

 最後に、決定率と勝敗との関係を男女、それぞれ9シーズン分のレギュラーラウンドの試合ごとの決定率と勝敗を集計しました。こちらもVリーグとのデータと合わせて以下の図4に示します。

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 当たり前かもしれませんが、決定率が高くなることで勝利確率が高くなります。男子のほうが右寄りなのは、決定率が全体的に高いためです。

 実線がイタリア、破線が日本のデータを表しますが、破線が上に来ていることから、同じ決定率の場合、日本のほうが勝利確率は高いことを意味します。この差が誤差なのか、意味のある差なのかは今のところはわかりません。

まとめ

 何がわかったというほどの事ではありませんが、スパイクの決定率の基本的な情報を確認できました。本来国際比較とは、こうしたデータを土台とすべきだとは思うのですが、まだまだまだ情報が足りませんね。

 世の中データでは計り知れないものもありますが、そうした計り知れない部分は、データとして把握できる部分を理解することで見えてくるものだと個人的には考えます。

 というわけで、今後もこうした情報を追加していこうと考えています。

タイトル画像:いらすとや

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