HRのシーズン間の変化と球場
前回の分析では、HRになりやすい打球の角度と速度(バレル)の数から推定されるHRの量と実際のHRとの差を求め、この差の性質を分析しました。
これまでの分析では、多くの打者のデータを集めその傾向を分析してきましたが、今回は個人に注目し、シーズン間のHRの変化と、それに合わせて変化する成績を見てみようと思います。
バレルから推定されるHRとシーズン間の変化
最初に確認で、バレルから推定されるHR/FBと実際のHR/FBの差の値(HR/FB:実測-推定)と、シーズン間のHR/FBの値の変化(HR/FB:翌年-前年)の関係を以下の図1に示します。
バレルから推定されるHR/FBの値は前回の分析で用いた予測式から求めています。
差分と差分の関係で分かり辛いですが、横の軸がHR/FB(実測-推定)の値で、値がプラスで右に行くほどHR/FBの実測値が推定値よりも大きいことを意味します。逆に左に行くほど推定値のほうが実測値よりも大きいことを意味します。
縦の軸は、HR/FBを翌年から前年の値を減産した値で、上に行くほど翌年にHR/FBが増加したことを意味します。下に行くほど翌年に低下したことを意味します。
相関係数を求めたところ値は-0.49で負の相関関係が認められたといえます。したがって、前年にHR/FBの実測値が推定値よりも大きいと、翌年のHR/FBは低下傾向にあるという関係です。
HR/FBが推定値よりも低い打者
前置きが長くなりましたが、ここからが本題でバレルから推定されるHR/FBの値よりも実際のHR/FBが低い打者のデータを3人ほどピックアップしてみてみたいと思います。
図1で見たように、こうした打者は翌年のHR/FBが増加する傾向があります。その際、併せて変化するデータとして、飛球の分類も確認してみたいと思います。
前回までの分析でも用いている飛球の分類ですが、これはLeaderboardにあるホームランのデータにあります。
・No Doubters: Out at All 30 Stadiums,
・Mostly Gone: Out at 8 to 29 Stadiums
・Doubters: Out at 7 Stadiums or Fewer
“No Doubters”はMLB30球団全ての球場でHRとなる打球の意で、文句なしのHRとでも呼ぶことができるでしょうか。“Mostly Gone”は8~29のほとんどの球場でHRとなる打球、最後の“Doubters”は限られた球場でしかHRにならない打球を意味します。
分析対象に選んだのは、
・Ryan McBroom
・Jared Walsh
・Jake Cronenworth
という3人の打者で、バレルから推定されるHR/FBの値よりも実際のHR/FBが低い打者となります。かれらのHR/FBとBarrel/FBと上記の3つの飛球について2シーズン分のデータをまとめたものを以下の図2-1から図2-3に示します。
バレルから推定されるHR/FBの値よりも実際のHR/FBが低かったのは、2シーズンのうち前年(水色)になります。
3人の翌年のHR/FBが増加すると予想していましたが、実際のところHR/FBが増加した打者はいませんでした。彼らが例外的な打者なのか、それとも実際のHR/FBが低い打者にはこの傾向が当てはまらないのかはもう少し検証が必要です。
HR/FBが推定値よりも高い打者
それでは逆にHR/FBが推定値よりも高い打者として、
・James McCann
・Aaron Judge
・DJ LeMahieu
の3人をピックアップしました。彼らは翌年のHR/FBが低下すると予想されますが、2シーズン間のデータはどうなっているのでしょうか。以下の図3-1から図3-3に示します。
HR/FBが推定値よりも高いのは図のオレンジの線の前年のデータになります。
図3-1のJames McCann選手は、確かに2021年(翌年)のHR/FBが低下はしているのですが、Barrel/FB自体が低下しており前年の揺り戻しというよりはスケールダウンした成績といえます。
図3-2のAaron Judge選手もHR/FBが低下はしていますが、2021年(翌年)のBarrel/FBが大幅に増加しており、単なる前年からの揺り戻し以上に2021年(翌年)はHR/FBが推定値よりも低い結果です。3つの飛球の分類を見るとNo Doubters/FBは2020年(前年)よりも低下しています。
最後に、図3-3のDJ LeMahieu選手は、Barrel/FBに大きな変化はありませんが、HR/FBが低下しており予想通りの結果といえます。彼の場合、Mostly Gone/FBとDoubters/FBの低下が確認できます。
まとめ
以上、個人のデータの確認でした。あまり全体の傾向と合致した例ではありませんでしたが、彼らが例外的なデータなのか、それとも1人1人のデータを見ればこんなものなのかは、もう少し確認が必要です。
Leaderboardで3つの飛球の分類を見つけて分析してみましたが、もうひとつ扱いにくいこともあり、今後の改善を求めます。次回からは、打球の飛距離のデータを見ながら、HRとの関係を分析しようかと思います。
タイトル画像:いらすとや
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