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2020年のダルビッシュ投手の試合中のリリースポイントとボールの変化量

 先日の分析では、ダルビッシュ投手の試合中のリリースポイントと球速、回転率の変化を分析しました。

 今回は先日分析した”球速、回転率”の部分を球種ごとの変化量に変えてデータを集計してみたいと思います。

ダルビッシュ投手のボールの変化量

 Statcastでは投手が投げたボールの変化量を水平方向(pfx-x)と垂直方向(pfx-z)で測定しており、これを見ることができます。2020年のダルビッシュ投手のデータを以下の図1に示します。

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 横の軸に水平方向(pfx-x)の変化量をとっています。このプロットは捕手・審判側からの視点なので、値がプラスになるほど左打席方向への変化が、マイナスになるほど右打席方向への変化が大きいことを表します。

 縦の軸が垂直方向(pfx-z)なのですが、この軸の0はボールに回転が無かったと仮定した場合のボールの位置を表します。値がプラスなのはこの位置よりも高い位置であることを意味しており、ボールがホップしているわけではありません。

 これら7球種ごとに、投球数とリリースポイントの位置と、ボールの変化量を見ていきたいと思います。

ストレート(FF:4-Seam Fastball)

 最初に見るのはストレート(FF:4-Seam Fastball)です。図1からストレート(FF:4-Seam Fastball)の変化量を抽出した図を以下の図2に示します。

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 このボールの変化量を、これまでやってきたようにリリースポイントを表す図の中に組み込んだものを以下に示します。

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 この図は10球ずつのGifファイルになっており、投球数が増えていくごとにリリースポイントの位置と、それに伴うボールの変化量を見ることができます。左側の図が水平方向(pfx-x)の変化を、右側の図が垂直方向(pfx-z)の変化を表します。

 縦の軸がリリースポイントの高さを表します。横の軸は、プレート中央からの位置を表し、ダルビッシュ投手は右投手なのでマイナスが大きいほど、プレートの中央から遠い位置でリリースしていることを意味します。図中の破線は、縦横のリリースポイントの平均値を表しています。

 プロットの色は変化量の大きさを表しています。プラスに大きくなるほど赤色、マイナスに大きくなるほど青色になります。

 図を見ると、水平(pfx-x)垂直方向(pfx-z)ともに、投球数が増えると特定の色に偏るという現象が見られないことから、投球数が増えることによる影響を特に見ることはできません。ただ、90級から100球(Pitch90~100)のところで、リリースポイントが低く水平方向(pfx-x)の図ではプロットが青色になっており、右打席シュート方向への変化が大きくなっていることを確認できます。

シンカー(SI:Sinker)

 次に、シンカー(SI:Sinker)の変化量を以下の図3に示します。

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 こちらもリリースポイントに変化量を組み込んだ図を以下に示します。

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 シンカー(SI:Sinker)も投球数の変化が、リリースポイントや変化量に影響しているとはいえないデータです。

カットボール(FC:Cutter)・スライダー(SL:Slider)

 続いてカットボール(FC:Cutter)スライダー(SL:Slider) の変化量を以下の図4と図5に示します。

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 図4のカットボール(FC:Cutter)はプロットの傾向から、垂直方向(pfx-z)の変化量が0付近のボールと、1.0から1.5付近の2種類の球種がありそうですが、ここでは同じものと扱って集計します。リリースポイントに変化量を組み込んだ図を以下に示します。

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 投球数が増えることでリリースポイントの位置が低くなってくることは確認できますが、ボールの変化量には特に影響があるとはいえません。

カーブ(CU: Curvebal)・ナックルカーブ(KC: Knuckle Curve)

 カーブ(CU: Curvebal)とナックルカーブ(KC: Knuckle Curve)のデータの変化量を以下の図6と図7に示します。

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 リリースポイントに変化量を組み込んだ図を以下に示します。

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 これまでのデータと同じく、投球数と変化量の間に関係はなさそうです。

スプリット(FS: Split-Finger)

 最後に、スプリット(FS: Split-Finger)の変化量を以下の図8に示します。

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 水平方向(pfx-x)の変化量の幅が大きく、これも複数の球種を投げ分けていそうですが、ここではまとめて集計します。リリースポイントに組み込んだ図を以下に示します。

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 投球数と変化量の間に関係はなさそうです。

まとめ

 以上、ダルビッシュ投手の投球数とリリースポイント、ボールの変化量の関係を集計してきました。

 特に目立った関係性は見られませんでしたが、これは1年分のデータをまとめて集計したことが原因で、前回のように失点の多い日と少ない日等で分けてデータを見ると、また違った傾向が見られるかもしれません。そこら辺は工夫の余地があります。

 また、今回は変化量が球種ごとの平均よりも大きくなるほど色を付けましたが、投手によって、このくらいの変化量がベストというのが分かっていれば、そこを中心にした色付けも可能です。

 日々のパフォーマンスのちょっとした変化を拾うための集計方法なので、工夫の余地は結構あります。

 次回はリリーフ投手で同じような集計をしてみたいと思います。

タイトル画像:いらすとや

使用データ



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