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打球の角度と速度とHRになりやすさ

 突然ですがHR/FBというスタッツはご存じでしょうか。フライ(FB)に占めるHRの割合の値のことです。

 当然ながら、強打者ほどこのHR/FBの値が高くなるわけですが、一方で、あるシーズンにHR/FBの値が高いと、その翌年の値は低くなるという性質もあることで知られています。

 この性質はBABIP(Batting Average on Balls In Play:打球が安打になった割合)と似ており、フライとなった打球がHRになるかどうかは運も影響しているといえます。

“バレル”を考慮する

 今回のテーマですが、このHR/FBの性質に打球の角度と速度の影響を調べてみたいと考えました。

 これまでも分析してきましたが、打球の角度と速度にはHRになりやすいゾーンが存在し、それは“バレル”と呼ばれています。

 このバレルの割合であるBarrel%が低いのにHR/FBが多い打者は、実際の打球に対してHRが多い打者といえると思います。こうした打者は、翌年になるとHR/FBの値が低下してしまうのではないでしょうか?

 この仮説を検証してみたいと思います。

HR/FBの性質の確認

 今回は2015年から2021年までのMLBで2年連続50打席以上の記録のある打者を対象に、分析を行いました。データは、Baseball Savantを参照しています。

 分析に当たり、フライ(FB)はHit-FBとOut-FB、H-PopupとOut-Popupを合計した値といました。今回はこれにライナー(Hit-LDとOut-LD)を加えたFBLDの値も求め、HR/HBとHR/FBLDと2種類の値で分析しました。

 それでは最初にHR/FBの性質を確認するために、HR/FBとHR/FBLDの値のシーズン間の相関を求めました。データを以下の図1-1に示します。

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 相関係数は0.48と0.54で弱~中程度の正の相関関係が認められました。これは、HR/FBとHR/FBLDともに、前年の成績が翌年に継続するものの、それほど強く安定したスタッツであるわけではないことを意味します。

 続いて、前年のHR/FBとHR/FBLDと、翌年のHR/FBとHR/FBLDから前年の値を減産したものとの関係を以下の図1-2に示します。

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 相関係数は-0.57と-0.52で中程度の負の相関関係が認められました。これは、前年のHR/FBとHR/FBLDの値が高いほど、翌年の成績が前年よりの低下することを意味します。

 以上の分析結果より、一般にいわれるHR/FBの性質を確認することができました。

“バレル”の影響

 ここからが本題です。このHR/FBのシーズンを跨いだ性質に、バレルの影響を分析するために、前年のHR/FBとバレル(Barrel%)、HR/FBのシーズン間の変化の3つのデータを集計しました。以下の図2-1にデータを示します。

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 この図は、横の軸に前年のBarrel%の値を、縦の軸に前年のHR/FBの値をとってプロットしています。HR/FBのシーズン間の変化はプロットの色で表しており、プロットが赤いほど、翌年のHR/FBはプラスに、青いほどマイナスであることを意味しています。

 データの傾向ですが、以下の図2-2の緑のラインあたりで、HR/FBのシーズン間の変化の色がきれいに分かれていることを確認できます。

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 これは、前年のBarrel%に対してHR/FBが緑のライン以上の打者は、翌年のHR/FBが低下、ライン以下の打者は翌年には増加していること意味します。

 同様の集計をHR/FBLDでも行ったものを以下の図3-1に示します。

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 こちらも以下の図3-2の緑のラインで示したように、プロットの色がきれいに分かれます。HR/FBと同様の傾向といえるでしょう。

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 以上の結果から、Barrel%から期待されるHR/FBの値というものがあり、そこから実際の値がずれた分が翌年は収束する関係にあるといえそうです。

まとめ

 以上、HR/FBと打球の角度と速度から求められるバレルの関係でした。単純に、HR/FBから翌年のHR/FBを予測するよりもバレルを加えたほうが、翌年の予測精度は高くなりそうです。

 次回は、同じようなテーマとしてBaseball SavantにあるHRの値に注目したいと思います。


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