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StatcastデータでHRを比較してみる

 今回のテーマは、打球の角度と速度から本塁打を比較してみようというものです。

 確か最初に紹介したと思いますが、以下のNHKの番組より、

 本塁打になりやすい打球の角度は30°前後、時速158キロ(≒98m/h)以上であるとのことですが、これを実際の打者の打球の角度と速度から見てみようと思います。

誰のデータを見てみよう?

 全ての選手のデータをここに示すのは、作る方も見る方も大変です。そこで適当な選手をピックアップしてデータを見ていこうと思います。

 ただ、HR打者とHRの少ない打者を比較した場合、HRの少ない打者がゴロの多い打者だったりすると、そもそもフライの数が違うので比較が難しいという問題があります。そこで今回は、同じくらいのフライを打つ打者で、且つHRの多い打者と少ない打者で打球の角度と速度、HRの関係を比較してみようと思います。

 フライの量が同程度であれば、よりHRになりやすい角度30°付近に打球を集めることのできる打者のHRが多いのだろうか?というあたりに注目していけたらと考えています。

1打席あたりのフライとHR/FBから

 というわけで、選手のピックアップを1打席あたりのフライとHR/FB(フライに占める本塁打の割合)からやってみようと思います。以下の図1に2つのデータを示します。

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 この中から選んだのは、2017年のBuster Posey選手と2019年のNelson Cruz選手の2人です。以下の表1に示すように、1打席あたりのフライは25%ほどですが、Buster Posey選手はHR/FBが8.4%と低く、Nelson Cruz選手はHR/FBが31.3%と高いのが特徴です。

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打球の角度と速度とHRの比較

 それでは、2人の打球の角度と速度を以下の図2-1と図2-2に示します。

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 この図は、原点からの角度を打球の角度で、距離を打球の速度で表しています。それぞれの角度で、速い打球ほど原点よりも遠いところにプロットされます。黒い◆は欠損値を補填したデータになります。

 2人のデータを比較すると、HRの少ないBuster Posey選手は、HRが30°付近に集中しているのに対し、Nelson Cruz選手は30°よりも小さい角度でのHRも多いことが確認できます。

 Nelson Cruz選手の場合、HRになりやすい30°付近のフライをHRにしているというよりは、100m/hを超える速度のフライが多いため、30°よりも小さい角度でのHRが多いと考えられます。

 先に示したNHKの番組でも、打球速度が上がるほどHRになる角度が広くなっていることは確認できます。Nelson Cruz選手は、30°付近に狙いすました打球を放つというよりは、持ち前のパワーから生み出される打球速度によって、HRになる角度の幅が広いといえそうです。

2015~2019年の変化

 2人の特徴を確認することができましたが、この単年の成績がシーズン間でどのように変化していくのかを確認しておきたいと思います。2人とも2015年以降の記録がありますので、まずはそれを表2に示します。

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2人の打球の角度と速度とHRのデータを以下の図3と図4に示します。

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 図3のBuster Posey選手は、シーズンが進むごとにHRが30°付近の範囲へと狭くなっていっていることを確認できます。100m/hを超える打球が減ってきているためではないかと考えられます。

 図4のNelson Cruz選手は、正直なところ毎年HRの分布が変化していて、現状がどのようなものなのかの判断が難しいです。年齢的にはもういい歳なので、衰えのような兆候が見えてもおかしくはないと思うのですが……。

まとめ

 以上、Buster Posey選手とNelson Cruz選手の2人のデータを見てきました。Statcastデータを個人で見るならこんな感じかな、というテストの意味合いが強いです。

 次回は、球種や投球位置と打球の角度や速度の関係を見ていこうと思います。

画像:いらすとや


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