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【STU48座談会】映画「選ばなかったみち」


「身近な人が認知症になった経験はありますか?」認知症患者が年々増加している現代において、切り離せない関係にある”認知症とその家族”。2022年2月に公開の映画「選ばなかったみち」では、認知症を患った父(レオ)と、その娘(モリー)の愛と葛藤が描かれています。この映画の指揮をとったのは、イギリスの名匠サリー・ポッター監督。本作は、サリー監督自身が認知症の弟と時間を共にした経験をもとに表現されています。大切な家族が認知症になり、自分を認識できなくなる切ないストーリー。

今回は、STU48の尾崎と小島、鈴木、高雄の4人が、自分の人生と重ねて家族の愛と介護について語り合います。


家族の介護と仕事の狭間で

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――――まずは、この映画の中で1番心に残ったシーンを教えてください

鈴木:最後のシーンで、父のレオが「モリー」と言ったシーンが印象的でした。それまで娘のモリーは「レオがなにを考えてるかわからない」っていう、父との心のすれ違いを悲しむ涙が多かったんですけど、この最後のシーンでは初めて嬉し涙を流していて。

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――――同じく、あの涙のシーンは心に残りました。あの場面って、もしかしたら人によって感じ方が違うところかなと思うのですが、他の方どうでしょうか。

小島:嬉しかった涙だと思う。けどそれだけじゃない、「またちょっと違う別の感情も入った涙だな」って思いましたね。

鈴木:私もあらすじ的にちょっと違う意味も含まれてるんじゃないかなとは思いました。

高雄:私は娘のモリーがやりたかった仕事が父の介護との両立を考えるとできなくなっちゃって、その気持ちをお父さんにぶつけてしまった場面ですね。モリーは全て投げやりな気持ちになったと思うけど、そのあと混乱してるお父さんを見て、そばにいてあげようと思う家族の愛が、心に刺さりました。

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――――高雄さんがおっしゃった仕事と介護について、ちょうどみなさんに話してもらおうと思っていました。この映画では「仕事と介護」がひとつのキーワードでした。「大事な仕事のタイミングで親の介護が重なり、自分のしたかった仕事ができなかった」といった娘の葛藤がすごくちゃんと描かれていたなと思います。大事な仕事と家族の介護が重なった時に、皆さんだったらどういう選択をすると思いますか?

尾崎:自分だったら、いっぱいいっぱいになって逃げ出したくなるかもしれない。

小島:私も仕事やプライベートを考えた時に、精神的にも肉体的にも疲れてしまってモリーのように強くなれるかなって思いました。

鈴木:モリーのお父さんへの愛情と優しさがすごい。

尾崎:それね、モリーは両親が離婚してる訳じゃないですか。だからこそ、自分が父親を見捨てたら本当にお父さんが孤独になってしまう、「お父さんには自分しかいない」っていう娘としての責任感があったんじゃないかな。モリー自身も、母親に新しい相手がいるっていう寂しい気持ちもあったのかなって今思いました。

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――――作中では”親子の愛ゆえの葛藤”を感じる場面がありましたが、皆さんが家族から無償の愛を感じたのってどんな瞬間ですか?

尾崎:私はSTUに入る前、高校を休学してたんですよ。同学年の子より1個遅く卒業して、バイトもせず家にずっといて。でもその時アイドルのオーディションとか受け続けてて。周りの大人から「あれ?」って言われたりする時も、家族だけは優しく応援してくれてたというか。私の両親は単身赴任で離れて暮らしているので、モリーが母と父の味方につけずに戸惑ってるシーンも自分と重なる部分がありました。

――――そうだったんですね。ではもし、尾崎さんが自分が介護される側だとしたらという理想はありますか?

尾崎:家族は優しく接してくれると思うので、無理をしてほしくないなって思います。でもやっぱりさみしい気持ちもあると思うし・・・難しいです。

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――――難しいですよね、ありがとうございます。では、小島さんが家族からの無償の愛を感じたエピソードはどうですか?

小島:お母さんと一緒に暮らしてた時は「朝は食べなさい」「バランスのいい食事を取りなさい」っていつも言われてて。実家を出てから、これが母親の無償の愛だったんだなってすごく感じます。


より明確になった運命

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――――話は変わりますが、よくする妄想やあの時こうだったらと言う、”選ばなかったみち”を考えることはありますか?

小島:私がSTUに落ちてたらどういうことしてたんだろうって思う。

尾崎・鈴木・高雄:それは思う!

小島:STUに入ってなかったら、会社で働いてたのかな・・・「今と違って自分の人生に満足できてたのかな?」とかしょっちゅう考えます。STUのメンバーに会うこともなかったし、かわいい衣装を着たり、ステージで踊ったりすることもなかったって思うと、今と美意識が違ったのかなっ、とか(笑)。

尾崎:見られてる意識だよね(笑)。私の場合はSTUに入る前、「もし自分がアイドルだったらどうなってるんだろう」って妄想してました。アイドルになってからは、先輩の1期生さんのオーディションも受けてたので、「もし自分が1期生として受かってたら先輩との関係はどうなってたんだろう」「後輩からどういう風に見られてたんだろう」とか考えます。

小島:私も「1期生だったら」みたいなの思う。

尾崎:思うよね。ファンの方とそういう話もするんですけど、そうすると「このタイミングだから出会えたんだよ」って言ってくれて。ファンの方の言葉にすごく納得して、私の運命だったんだなって落ち着きます。


たった1人のお父さん

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――――娘目線で”認知症の父をかまう娘”を見て思ったことは?

小島:(作中で)お父さんをひどいって思った場面があります。お父さんが小説を書くために家を出た理由が、赤ちゃんだった娘の「泣き声がうるさくて」って言ってて。でもそのあとのシーンで娘に似た人をボートで追いかけてて、娘のことが好きなのかなんなのかなって思いました。レオが自分のお父さんだったら、モリーと同じようにお父さんの考えてることを理解できないかも。

尾崎:わかる、レオが過去に囚われてる感じあったよね。でも病院で、前の奥さんからレオが人間扱いされてないようなシーンはかわいそうって思いました。その時父を庇った娘のモリーはやっぱりいい人だなって。

小島:でもモリーがレオをそうやって庇うほど、どこで父を愛するポイントがあったんやろ。映画の中でそういうシーンがなかったから。

鈴木:やっぱりたった1人の父親ってことには変わりないから・・・それがモリーの心の中では強かったのかな。

高雄:モリーが小さい頃に父と一緒に過ごしてない分、寂しさで愛が欲しくて、逆にモリーから無償の愛を届けていたのかもしれない。

尾崎:つらい経験をした人は優しくなれるって言うしね。モリーは幼少期つらい思いをした分、困っている父親を助けたいっていう気持ちがあるのかなって思います。

高雄:モリーは幼少期の自分と今のお父さんの姿を重ねたのかもしれないね。


新しい価値観に触れる

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――――この映画は、どんな時に誰と観てほしいですか?おすすめの視聴方法があったら教えて下さい。

小島:親子で観たらどうなるんだろうって思います。それぞれの家庭で色々な事情があると思うので、親子で観たら考え方や人生に影響を与えるんじゃないかなって感じました。

高雄:人生の分かれ道で迷ってる時に観てほしいです。この映画を観て客観的に自分がどう感じたかを考えることで、何かを決断したくても踏み出せない時に答えが出てくるかもしれないなっと思いました。

尾崎:友人とわいわい言い合って、新しい考え方が生まれるのがこの映画の醍醐味だと思います。今日も3人の話を聞いて「そういうことか」って思うところもあれば、「いや、でも私は」っていう自分の意見もあったので、この映画が自分の考え方を変えるきっかけにもなるかも。

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――――最後に言い残したことはありますか?

高雄:パンちゃん(鈴木)の考察がめっちゃ面白かった!眼鏡をかけてる時とかけてない時で違うみたいな。

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――――詳しく教えてください!

鈴木:えっそう思いませんでしたか?

(一同・爆笑)

高雄:すごいですよね、見てるとこがすごくて。

鈴木:眼鏡かけてる時とかけてない時とちょっと違いがあるんじゃないかなって。「この時はメガネかけてたのに、この時かけてないってことは・・・」とか思いながら観てました。

――――気付かなかったです。もう1回観たくなりますね。

鈴木:やった!色々推測できるような出来事が散りばめてあったから、観てて面白かったなー。

尾崎:2回観たら考え方がまた変わると思う。「さっきこう思ったけど、もしかしたら違うかも」って。2回目観る前に友人と感想を言い合うと、考えが広がりそう。

高雄:そういえば、モリーの書いた小説”説”はどう思う?

尾崎:私もモリーの理想を描いた、実体験の小説だと思った。

鈴木:じゃあ最後のシーンのレオが「モリー」って言ったとこだけ、理想?

尾崎:そう、理想。

高雄:私はモリーの実体験と想像の世界が混ざり合ってると思った。お父さんがたまに言う単語を全部メモしといて、それを元にモリー自身の実体験と想像を重ねて小説を書いてるんだなって。

小島:じゃあ、モリー主体のストーリーってこと?

鈴木・高雄:そうそう。

鈴木:違うの?

尾崎:違う!モリーがレオに「私も小説書いてるんだよね」って言ってたから、もともとレオが自分の理想と現実の小説を書いてて、最後レオが「モリー」って呼んだシーンだけモリーの理想と現実を入れてるのかなって。

高雄:ちょっと違うね、みんな。

小島:私はレオが認知症になる前に、自分の初恋をテーマに小説を書いたんだと思った。モリーが介護の影響で仕事を失ったことと、レオが小説家としてうまくいかなかった過去がリンクしてる気がして。悪循環のあんまり良くないストーリーなのかなって思った。

高雄:私が1つ不審に思ったのは、レオは自分の気持ちを1回も言ってないの。でもモリーは自分の気持ちを言葉にしてるから、モリーが書いた小説なんじゃないかなって考えた。

鈴木:うん、すごくわかる。

尾崎:最後のシーンはモリーの「こういう人生になれば良かったな」っていう感情だと思った。「最後くらい名前を呼んでほしかったな」って。

小島:じゃあみんなの中では、モリーの書いた小説っていう結末になったんや。考えつかなかった!

2月25日(金)から公開!ぜひ劇場でご覧ください!

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ハビエル・バルデムとエル・ファニングが父娘役で豪華初共演!
あの日、あの時、あの瞬間・・・別の道を選んでいたら―。
サリー・ポッター監督の実体験に基づき、父の幻想と娘の現実を描いた問題作


本作はイギリスを代表する女性監督サリー・ポッターの弟が、若年性認知症と診断され、監督自身が介護で寄り添った経験をもとに書き下ろされた物語。 父と娘が心で旅をした24時間が、豪華キャストにより美しく壮大な旅路として結実した。

父レオ役は圧倒的な存在感で観るものを引き付けて離さないオスカー俳優ハビエル・バルデム(『DUNE/デューン 砂の惑星』『ノーカントリー』)、娘モリー役をイノセントな魅力を放ちながらも確かな演技力で数多の実力派監督と組んできた人気女優エル・ファニング( 「マレフィセント」シリーズ)が演じ、ついに父娘役で初共演を果たした。その他、ローラ・リニー(『ハドソン川の 奇跡』『ラブ・アクチュアリー』)、サルマ・ハエック(『エターナルズ』『フリーダ』)ら実力派名優が脇を固める。

父の幻想と娘の現実。ふたりは同じ空間で別々の24時間を生きたー
同じ場所にいながらも景色が異なる二人の旅路の行方とは―。
人生の岐路で自分の選んだ道は正しかったのか、もしも別の選択をしていたら?
胸の奥底にしまい込んだ過去の大切な出来事や記憶を繋ぎながら、人生の奥深さに迫る感動の問題作。

[公式URL]
https://cinerack.jp/michi/


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