見出し画像

夜の散歩

人生で一番何もなく、どこにも行かないゴールデンウイークが半分終わった。


僕の会社は休みだけは充実しているのが特徴で、今回のGWも多分に漏れず8連休だ。

これまでのGWはだいたいどこか旅行に行ったり、友達と遊んでいたり、福岡にある母方の実家に帰省したりしていた。僕はこうした長期休暇はほとんど旅行に充ててきたので、ほぼずっと東京にいないこともしばしばだった。熱海から帰ってきた翌朝から福岡に行ったことや、四万温泉から帰ってきた翌々日から大阪に出張し、2泊して帰った翌朝から韓国に行ったことなどもある。ともかくそのくらい移動している方が楽しかった。ずっと動いていれば、物事を深く考えなくて済むから、かもしれないが…。これは結構根が深そうな話なのでまた今度書くことにしたい。

そんなこともあり、今回のGWももともとは色んな旅行の話をしていたのだが、昨今の某ウイルスによってそれらの予定は全て灰燼に帰し、ひたすら家でのんびり過ごすことになった。


家にずっといるのは普通に楽しい。もともと僕はかなりインドアな性格かつ趣味嗜好なので、家で映画を見たり本や雑誌を読んだり、ギターを弾いたりすることに時間を思う存分時間を当てられるのは楽しい。

さらに、僕は正直実家にいることがかなり嫌だったのだが、去年から一人暮らしをし始めたおかげでそれらのストレスもない。(両親と一つ屋根の下で暮らす事をストレス、と言い切ってしまうのはいささか心が痛むが、この長期の自宅待機・在宅勤務期間をずっと実家で過ごしていたら多分自分は発狂していたと思うのでやはり家を出ておいてよかったと思っている…)

なおかつ、自分の思い通りに自室を改造していくことに、自分の思い通りに時間とお金を使うことができるのも良い。(4月に入ってからかなり家具を買った。本棚やフェイクグリーン、PCデスクにデスクチェア、額や各種小物…)実家だと障壁は多いが、自分が一日の大半を過ごす空間を好き勝手に心地よく改造できるのはとてもいいことだと思っている。


しかし、だ。本題に入るまでだいぶ長くなってしまったが、僕はインドア派であるが、それ以上に趣味が旅行だった。自分の日常からかけ離れた所にある物を見られることがこの上なく刺激的で楽しいと思っているからだと思う。だが、今となってはこれらが一切できなくなってしまった。

外出自粛要請の中で散歩やランニングは認められているが、昼間近場ばかりをずっと散歩していてもなんだか慣れた街並み、になってしまう。そこで数日前から僕が編み出したのが、深夜12時くらいから散歩する、という「夜の散歩」だ。

これまで、そんなに時間に余裕がなかったのもあるが、夜にしっかり散歩をしたことはあまりなかった。

だが、ここ数日深夜の町を散歩して思った。深夜の町は昼間と全然違う。人がいないし、車も少ないし、また外出自粛の流れから殆どの店がやっていない。要は次にいつ見られるかわからない「完全に眠った世界」をみられるのだ。

そういう中でフラフラ歩いてみると、近場といえど結構発見がある。そもそも僕が今の家に一人暮らしを始めたのは昨年夏なので、まだ近場でも知らない道がたくさんあるのも大きい。

例えば、昭和から変わっていないような佇まいの街の八百屋や、ボロボロの酒屋の周りに煌々と光る自販機が5台くらい密集している所、一軒の店も空いていない商店街、誰も待っていない踏切を誰も乗っていない電車がすぎていく場面、など、見れば見るほど味があってかなり面白い風景が流れてくる。(これらの風景を面白いと思うかは人それぞれだが…)

それこそ自分が小説家だったらかなり想像の源泉になるんじゃないかと思う。実は僕は小中学校の頃よく小説を書いていたのだが、大学以来殆ど書かなくなった結果、今ではそのような物語的想像思考ができなくなってしまった。想像を極限まで膨らませて文章を書くということを続けていたら、きっと今とは違った見方をしていたんだと思う。


今まで見落としていたが、限りなく自分の日常に近いところで「自分の日常からかけ離れた所にある物」を見られることに気づいた。そしてこれは僕が旅行好きだった理由でもある。ミニマムな形ではあるが、刺激を味わうにはとても良い。また、近場なので安心感があり、歩いている時に色んな事に思慮を巡らせながら町並みを見られるのも良い。

ゴールデンウィークは半分終わってしまったが、この時間に途轍もない余裕がある間に、この非日常を存分に味わってみたいと思う。今日もこんな時間に投稿しているのは、さっきまでふらふらと散歩をしていたからだ。

旅行もいいけど意外と近所も面白いぞ。



うん、でも、早く旅行行きたいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?