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ウイルスが体臭を変化させる!?それを防ぐのはニキビを治す塗り薬。

世界人口のほぼ半数が熱帯病の危険にさらされている亜熱帯や熱帯地域に住んでいる。
熱帯病の治療法は完全に確立されておらず、高い発症率と死亡率が今もなお見られている。
今回の研究で、熱帯病でもジカ熱とデング熱を発症する2つのフラビウイルス属のウイルスは、宿主の体内をハイジャックし、より多くの蚊を引き付ける分子を放出させることが判明し、2022年6月30日のcell誌に掲載されました。
 
研究者たちは何十年も前から、いくつか特定の病気の原因となるウイルスが、有益に宿主を利用するために、体臭を変えるよう進化させる可能性があることを知っていました。
例えば、キュウリモザイクウイルスに感染した植物は、天敵となるアブラムシを引き付ける分子を放出し、ウイルスはさらに新しい植物に感染させるためのベクターとして宿主を使用していました。
他にも、マラリアを引き起こす寄生虫が、宿主の体臭を変化させ、蚊に刺される確率を増加させ、宿主自体を広告塔にさせることも発見されています。

北京の清華大学 微生物学者で著者のCheng氏は、ジカ熱ウイルスとデング熱ウイルスに感染すると、実際に蚊の注意をひくのかどうかを調べました。
マウスにどちらか一方のウイルスを感染させ、次に、感染したマウスと健康なマウスを別々の囲いに入れ、両方の囲いを覆った部屋に蚊を満たし、どちらのグループを好むかを実験しました。
その結果、蚊の約65〜70%が感染したマウスの囲いに向かって移動しました。
過去の研究より、感染したマウスには魅力的な匂いがすることが示唆され、空気中の化学分析を行うと、感染したマウスから健康なマウスの10倍量のアセトフェノンと呼ばれる芳香の化合物を滲出していることが明らかになりました。
さらに健康なマウスにアセトフェノンをドービングすると、蚊がこの匂いに引き寄せられたことも明らかになりました。
 
アセトフェノンとは細菌から産生され、皮膚上で自然に増殖するが、その数は通常、皮膚細胞から分泌される抗菌タンパク質(RELMα)によって抑制されている。
マウスがデング熱やジカ熱に感染していると、この抗菌タンパク質を構成する遺伝子があまり活発ではないことが判明しました。
その結果、感染したマウスの皮膚はアセトフェノン産生菌で溢れかえり、蚊の注意を引き付けたと結論づけました。
研究者らは、デング熱患者から脇の下綿棒を採取し、人間がウイルスに感染しているときもマウスと同様のメカニズムで蚊が引きつけるのだろうと示唆しました。

さらに、感染したマウスに、 にきび薬として一般的に使用され、ビタミンA誘導体が含まれるイソトレチノインを与えることが、動物から滲み出すアセトフェノンの量を減らすのに役立ち、潜在的にジカ熱とデング熱の両方の疾患の蔓延を制御する新しい方法を提示しました。
今後、蚊のアセトフェノンに対する特定の嗅覚受容体を同定し、遺伝子技術によって蚊から嗅覚受容体遺伝子を除去する計画も立てているようだ。
 
(2022年6月30日にcell誌に投稿されましたが、2022年7月5日現時点で確認されていませんのでご注意ください。)
 
 
参照:
Dengue and Zika viruses make infected hosts more delicious to mosquitoes

持続性植物ウイルスによるアブラムシ行動の操作 - PubMed (nih.gov)

マラリア原虫に関連する人間の臭いの変化が蚊を引き付ける - PubMed (nih.gov)

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