お母さんはスーパーマンじゃなきゃダメですか?
息子が小児白血病になり約1年の闘病付き添い生活を送り、いわゆる「マイノリティ」という立場になってみて、自分とは関係のない話だと思っていた政治や法律の話との距離が近くなった。*小児白血病を含めるいわゆる小児がんの年間発症数は2000人から2500人と言われている。
どうして距離が近くなったのか?
まず病院で子どもが入院している最中に感じたこと、病気の子どもへの親の付き添い問題だ。狭い簡易ベッド、食事補助はなく、風呂も決められた短時間を逃すと入れない。
「おかしくないか??」
そう思った。1日や2日なら我慢できる。だけどそれを年単位でするとなると、話は別だ。
病児の付き添いで病院に24時間缶詰め それって人間的ですか
というハフポストの記事にコメントを寄せたことをきっかけに、わたし自身が同サイトに自身の運営するポータルサイトと連動して「チャーミングケア」と称した、病気や障害のある子供たちの外見ケアやメンタルケア、寄り添う家族のメンタルケアなどの様々な話を発信するようになった。
みんなのチャーミングケアラボラトリー
そこで取り上げた、
闘う細胞不足で感染症にビクビク 頑張ったのに抗体が消える?
をきっかけに、昨年8月に厚生労働省にがんの子どもの患者会を通じて請願を提出した。
がん治療の子どもは抗体がなくなるのに、再予防接種を助成する自治体はわずかという現状
結果、厚労省は初めて再予防接種助成する自治体の調査を行い
厚生労働省は「今後、法改正の必要性や制度のあり方について、厚生科学審議会で検討していく」とし、その後、今のところこの話に動きはない。
そんな中、「抗がん剤単体治療で」今まで接種してきたワクチンが全部クリアされてしまった事例がわたしの元に報告された。
その事例は、小児白血病ではあるが、初発から少し期間があいての再発。再発の場合、治療法の選択肢として骨髄移植が濃厚になる。が、寄せられた事例の場合、初発から少し時間が経っていることと、骨髄移植という治療が子どもの予後に与える影響を鑑みて「ひとまず抗がん剤単体治療で効果を見てみましょう」という見解となったそうだ。
2回目の抗がん剤治療の際は、1回目の治療で耐性のついてしまった抗がん剤は使えない。且つ1回目よりも強い抗がん剤で治療を進めるのだ。
当然、免疫力も初発の時に比べるとガクッと落ちる。結果、今まで受けてきたワクチンの抗体が全て消えてしまったというわけだ。
予防接種は、適応年齢で受けるからこそ指定回数で抗体がつくことが予想されるのであって、接種する年齢を超えている場合は想定されている年齢との体格差などもあり、指定回数のみで抗体がつきにくく何度も接種することが当然考えられる。(現行の法律では助成に該当しない場合は、自費精算となる)
該当児の所属する都道府県の現状の取り決めでは、
兵庫県骨髄移植後等の予防接種の再接種に対する助成事業実施要綱
第1条 骨髄移植等を行った場合、定期予防接種を通じて移植前に得られていた免疫が低下若しくは消失し、感染症に罹患する頻度が高くなることから、再度予防接種を実施し、免疫を再獲得することにより、集団感染やまん延を防止し、また、被接種者の経済的負担を軽減することを目的とする。(定義)第2条 この要綱において「骨髄移植等」とは、造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、さい帯血移植)とする。 (一部抜粋)
骨髄移植等の項目に但し書きがあり、あくまで移植に限るといった内容になり今回のような「抗がん剤単体での治療による」事例は含まれないとされてしまった。
予後のことを考え最善の治療法を選択し、幸いにもそれで寛解(全治とまでは言えないが、病状が治まっておだやかであること。)しているのに・・・
更に言えば、他市町村では「抗がん剤治療も」認められているところもあるなか、どうにも腑に落ちないのは、わたしだけだろうか?
現在、市町村と都道府県に本件に関して、継続的に働きかけをしている。
各地で同じ動き
予防接種の管轄が市町村ということが起因して、こうやって各市町村の当事者のお母さんたちがそれぞれに声を上げている現状があり、それごとに市町村や都道府県の対応は様々だ。
お母さんはスーパーマンじゃなきゃダメですか?
そこでタイトルに立ち戻りたい。
この一連の請願や陳情活動は、わたしも含めほとんど患児のお母さんが地元の政治家さんと繋がりをもち、陳情し請願をしたり、時には署名活動までしている現状があるのだ。
想像できるだろうか?我が子が大きな病気になって、「人間的ですか?」と問いかけられるような生活を終えた矢先に、今度は行政を相手に意見を言わなければ、自分たちの置かれている不自由さが緩和されない状況を。
お母さんはスーパーマンじゃないとダメですか?
わたしはそう思わずにはいられない。
チャーミングケアとして進めたいこと
各市町村でそれぞれが身を削って陳情するのではなく、国が本件に関して審議を進めて、助成対象項目を骨髄移植だけに限定するのではなく、「など」という幅を持たせた表現にするなど制限を緩和してもらうことを働きかけていきたいと考えている。
お母さんはスーパーマンじゃなきゃダメですか?