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キャンディマン

<イントロダクション>
“キャンディマン” その名を5回唱えると、死ぬ。
ジョーダン・ピールが現代に語り継ぐ、忌まわしき都市伝説。

シカゴに現存した公営住宅「カブリーニ=グリーン」地区界隈では、鏡に向かって5回その名を唱えると、蜂の大群を従えた殺人鬼が現れ、“右手の鋭利なフックで体を切り裂かれる”という怪談めいた都市伝説が語り継がれていた。老朽化した最後のタワーが取り壊されてから10年後の現代、恋人とともに新設された高級コンドミニアムに引っ越してきたヴィジュアルアーティストのアンソニーは、創作活動の一環としてキャンディマンの謎を探求していたところ、公営住宅の元住人だという老人から、その都市伝説の裏に隠された悲惨な物語を聞かされる。アンソニーは恐ろしくも複雑な過去への扉を開いてしまったのだー。本作は、クライヴ・バーカーの小説『禁じられた場所』を原案とする、バーナード・ローズ監督による1992年映画化された『キャンディマン』がベースになっている。

Universal Pictures Japan『キャンディマン』公式サイト

10月24日@TOHO新宿

『ゲットアウト』や『アス』などで知られるジョーダンピールが製作として仕掛けたBLMホラー・スリラー映画。
(人種問題などを主題に設定したスリラー映画のことだが、こういった呼び方が適切かどうかは慎重になるべきだと思うが、BLM運動に呼応する形で確実にジャンルとして盛り上がりを見せている)

特に今回はヴィジュアルアーティストとして活動する黒人のアンソニーが主人公であり、ハイソーシャリティな黒人が中心に扱われるのは、BLMホラー・スリラー映画の特徴とも言える傾向だ。
(ちなみに21年に同じく公開されたスリラー映画『アンテベラム』でも、ジャネールモネイ演じる女性活動家で社会学者のハイソな黒人女性が主人公だ。)

今回BLMスリラー映画としてリメイクされたのは、無実の罪で惨殺された黒人の怨念から生まれ出でた怪物「キャンディマン」が、BLM運動との親和性の高さためだろう。

この作品は日本の宣伝でこそ触れられることが少なかったが、1992年に公開された同名映画『キャンディマン』を元にした実質的な続編となっており、ストーリー内では92年版のストーリーに強く触れられている。

92年から引用されたショットなど、特に冒頭の街を見上げるショットと92年版冒頭の街の俯瞰との対比などは、かなりイケている。

また92年版で劇伴を務めたフィリップ・グラスの作曲で傑作と名高いテーマ曲も引き続き使用されており、また今回の劇伴を担当した Robert Aiki  Aubrey Loweの曲も評判も良く、個人的にも鑑賞後に何回もリピートした。

ただ、全体の構成は少し間伸び感があったかな、、。
人種問題などを題材としながらも、映画内では抜かりないホラー演出と「キャンディマン」が人種差別への復讐ではなく、憎悪の権化として周囲に呪いと殺戮を振り撒く悪魔的モンスターとしての立ち位置が妙にバランスをとっているように思えた。

まだまだこのジャンルの映画は増えそうだが、説法的なメッセージとホラーとしてのエンタメがどこまで融和できるかは、意外と正解への道は細く数少ないように思えた。

( N.T )

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