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デッド・ドント・ダイ

<イントロダクション>
カンヌ映画祭を破格のサプライズで騒然とさせた
巨匠ジム・ジャームッシュ最新作は、 愛すべきオンリーワンのゾンビ映画


警察官が3人しかいないアメリカの田舎町センターヴィルで、前代未聞の怪事件が発生した。無残に内臓を食いちぎられた女性ふたりの変死体がダイナーで発見されたのだ。困惑しながら出動した警察署長クリフ(ビル・マーレイ)と巡査ロニー(アダム・ドライバー)は、レイシストの農夫、森で野宿する世捨て人、雑貨店のホラーオタク青年、葬儀場のミステリアスな女主人らの奇妙な住民が暮らす町をパトロールするうちに、墓地で何かが地中から這い出したような穴ぼこを発見。折しも、センターヴィルでは夜になっても太陽がなかなか沈まず、スマホや時計が壊れ、動物たちが失踪する異常現象が続発していた。
やがてロニーの不吉な予感が的中し、無数の死者たちがむくむくと蘇って、唖然とする地元民に噛みつき始める。銃やナタを手にしたクリフとロニーは「頭を殺れ!」を合言葉に、いくら倒してもわき出てくるゾンビとの激闘に身を投じるが、彼らの行く手にはさらなる衝撃の光景が待ち受けていた……。

映画『デッド・ドント・ダイ』オフィシャルサイト

ジム・ジャームッシュ監督作品の『デッド・ドント・ダイ』を鑑賞。

ジャームッシュ監督といえば、『パターソン』(2016)や『コーヒー&シガレッツ』(2003)など、シュールかつ独特なテンポ感が支持を得ており、近年では「鬼才」と銘打たれることも多い。
そんな彼の新作が“ゾンビ映画”ということで期待していたが、まさに彼流のとぼけた演出が光る作品だった。

例えば、ゾンビ映画には必ずお膳立てというものが存在する。
怪しい研究所やら宗教団体やらの状況設定から、これからゾンビに襲われるであろう人々の家庭内不和や個々の問題などが緻密に描かれることによりゾンビ爆誕後の物語にドライブをかけていくものだ。

もちろんこの映画においても、「これがお作法なんでしょ?」とばかりに様々な問題が舞台となる小さな田舎町の中でお膳立てされ、観客に提示されていく。しかしこの映画に限っては、こうしたお膳立てがドラマに推進力を生むことはない 笑

主演2人であるビル・マーレイと、「シークエル・スターウォーズ」から飛び出してきたばかりの筋骨隆々アダム・ドライバーの2人が時たま吐いてしまうメタメタしいセリフが、そうしたお膳立てを見事に裏切っていき、ジム・ジャームッシュ監督お得意のとぼけたテンポ感と共に終始締まりのない物語が展開される。
ゾンビが現れパニックが起きているのは、スクリーンの向こう側だというのに、常に振り回されているのは観客の方であり、そうした感覚こそ可笑しくてたまらなかった。

コロナ事情もあって2ヶ月ぶり劇場に足を運んだわけだが、このユルフワな感じがちょうど良かったと思えた一作だった。

( N.T )

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