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”アディショナルタイム”をなくしたい

私は、サッカーにアディショナルタイムという制度はいらないと思っています。

試合時間を短くし、アウトオブプレーになったら時計を止める方法で試合を行うことで”サッカー”がさらに魅力あるスポーツになると思います。

そう思った理由を4つ書いていきます。

・はじめに

アディショナルタイムとは

競技者の交代、負傷、懲戒処置、得点の喜びなどにより「空費された」分を試合の前半、後半の終了時に延長する時間のこと。

Laws of the Game サッカー競技規則 2020/21

とされています。
また、

主審は、以下のように前半、後半に空費されたすべての時間を追加する:

・競技者の交代
・負傷した競技者の負傷の程度の判断や競技のフィールドからの退出
・時間の浪費
・懲戒の罰則
・「飲水」タイム(1分を超えてはならない)や「クーリング」ブレーク(90秒間から3分間で)など、協議会規定で認められる医療上の理由による停止
・VARのチェックやレビューに関わる遅延
・プレーの再開を著しく遅らせる行為(例えば、得点の喜び)を含む、そのほかの理由

Laws of the Game サッカー競技規則 2020/21

という記載もあります。

理由① ルール変更によって増えた”空費された時間”

ここ数年のルール変更と試合の進め方の変更で、空費される時間は増えたと思います。

a. VARの導入

VAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)の導入は、間違いなく空費される時間の増加に繋がりました。
それにより、アディショナルタイムは増えていると思いますが、それで十分なのかどうかという疑問が生まれてしまいます。

b. ゴールキックのルール変更

ゴールキックで再開される際、以前はボールがペナルティエリア外に出るまで誰も触れませんでしたが、ルール変更によって、味方選手はペナルティエリア内に入ってパスを受けられるようになりました。

この変更で、
DFがペナルティエリア内でパスを受けようとする

相手FWがペナルティエリア外ぎりぎりでボールが蹴られるのを待つ

後ろから繋ぐのを止め、近くで受けようとしていたDFが前へ上がる

DFがある程度の位置まで上がってからGKがキック

このようなシーンを見かけるようになり、以前に比べてプレー再開までに時間がかかるようになったと思います。

(c. 飲水タイムの導入)

コロナ禍による過密日程とボトル共有の不可から、飲水タイムが導入される試合がほとんどです。
1分とされている飲水タイムがある中で、アディショナルタイムが1分となることもあります。
これは飲水タイムが導入されていなければ0分だったということで、本当にそんなに少ないのかと疑ってしまいます。
(0秒~59秒の追加と判断されているため。)

(おまけ)アクチュアルプレーイングタイム

私は以前から、90分という試合時間の中で、プレーされている時間はどのくらいあるのかが気になっていました。

実際にプレーされていた時間は「アクチュアルプレーイングタイム」と呼ばれ、2015~2017年のデータはこちらです。

(引用元:こちら

これらの平均値から51~58分間くらいしか実際にプレーされていないことが分かります。

最近のデータはなかったので、実際に自分で観戦に行き、計測してみることにしました。(ストップウォッチ片手に観戦し、計測しました。)

2021年4月6日(火)19:03kick off
日産スタジアム
横浜F・マリノス vs セレッソ大阪

前半:
アディショナルタイムは1分の表示
前半終了時の経過時間は46分03秒
前半のプレーされていない時間は18分26秒
アクチュアルプレーイングタイムは、27分37秒

後半:
アディショナルタイムは4分の表示
後半終了時の経過時間は49分07秒
後半のプレーされていない時間は20分51秒
アクチュアルプレーイングタイムは、28分16秒

この試合のアクチュアルプレーイングタイムは55分53秒だったことが分かりました。

1試合だけのデータなので、これが全てとは言えませんが、過去のデータと大きく差はないのではないかと思いました。

⇒⇒⇒⇒⇒
理由①に書いた「空費された時間が増えた」という予想とは異なる結果となりましたが、

・ゴールはあったが、VARの確認が長引くようなゴールではなかった
・ゴールキックからの再開はスムーズだった
・ボールパーソンが素晴らしい連携とダッシュでボールを戻していた

といった理由から以前の時間と大きくは変わらないプレーイングタイムだったかと思います。
後日、他チーム同士の試合でも検証してみようと思います。

理由② 追加される時間の基準が分からない

〈はじめに〉で記載した「空費された時間」の全てが追加されているわけではなく、どのシーンを”空費”と捉え、どのくらいの時間を追加するのかは主審に委ねられています。

そして、それは人によっても事象によっても試合展開によってもバラバラで、基準が分からないと思います。

このような事象がありました。

2021年6月20日(日) 17:03kick off
鹿島アントラーズvsベガルタ仙台
@県立カシマサッカースタジアム

試合は後半にベガルタ仙台が1点を先制。
後半アディショナルタイムに鹿島アントラーズが追いつき、1-1の引き分けで終了しました。

最後まで諦めずにプレーし、終了間際に追いつき、引き分けで決着というサッカーの面白さがある試合展開ではありますが、試合終了のタイミングについて多くの意見がありました。

この試合で表示されたアディショナルタイムは5分。

つまり、終了時間の目安は95分00秒~95分59秒の間ということになります。

しかし得点は96分42秒に決まりました。

アディショナルタイム内で空費された時間はさらに追加されることは理解していても、違和感を覚える方が多かったのだと思います。

この事象については、ジャッジを検証するコンテンツの「Jリーグジャッジリプレイ2021」でも取り上げられていました。

出演されていた方々のご意見(抜粋)は、

原 博実さん(Jリーグ副理事)
交代・負傷もあった。(攻撃側である)鹿島のCKが続いていた。
適用の範囲内。

深野 悦子さん(FIFA・AFC・JFA審判インストラクター)
アディショナルタイム中のアディショナルもある。
交代・治療・警告は空費された時間に該当するので加算されるので、時間の範囲内だと思う。
サッカー的ではなく嫌ではあるが、(計算をすると)交代で20~30秒・負傷の確認で40~50秒・イエローカードが出た一連の行為で30~40秒かかっていて、それらを足すと1分30秒以上になっている。
問題なかったと思う。

平畠 啓史さん(Jリーグウォッチャー)
長いとは思ったが、長すぎるかどうかは人次第

ジャッジリプレイの全編動画はこちらから。

この3人の中で、審判やジャッジに関しての1番の専門家である深野さんのご意見に注目してみようと思います。

私自身も、「このプレーで○秒追加」という考えは好きではありません。
ただ、あえてそれをなさっているので、その考えに基づいて考えてみようと思います。

アディショナルタイムの5分の中で主に3つの事象があり、1分30秒以上空費されているから1分30秒程度追加されていても問題はない。

ならば、

45分間行ってきた中でも同じ基準で追加しなければおかしくないでしょうか。

この試合の後半の45分間の中には、
・両チーム合わせて5回の選手交代
・ベガルタ仙台側が得点を決めた時のセレブレーション
・VARチェック
・飲水タイム
・その他の空費された時間
があり、同じ基準で考えるならば、確実に5分~5分59秒の追加では足りないということになります。

現在は、通常の試合時間内とアディショナルタイム内での基準が違うことが明らかです。

このように、「試合時間」という非常に重要な部分の基準が明確でないということから、アディショナルタイムというルールに疑問を持っています。

理由③ 遅延行為と思われる行為の横行

サッカーを観ていてもっとも見たくないシーンであり、私がスタジアムの時計を止めてほしいと思った最大の理由がこれです。

多くのリードしているチームは試合終盤になると、安全に時間を使い、タイムアップに向かい時計を進めようとします。

勝利するためには当然の考えだと思います。

インプレーで時間を使うことはリードを許しているチームにもボール奪取や攻撃の可能性があり、戦い方の一つとしてとしてありだと思います。

ただ、アウトオブプレーになり、インプレーにするまでに時間をかけることは”サッカー”の魅力を低下させていると思います。


このようなシーンを見たことはないでしょうか。

・選手交代する際に、新たに入る選手のところまで歩き、主審に急かされて少しだけ走り、ライン直前でまた歩く。
(本来は、選手はタッチラインに最も近い場所からピッチを去らなければいけない)

・GKがゴールラインを割ったボールを後ろのボールパーソンから受け取らずに遠くのボールを取りに行く

・ファウルを受けて倒れ込み、外に出て治療を受ける指示が出ない程度の時間で立ち上がる(※これに関しては、打撲などで一時的にすごく痛いがすぐに痛みが引くということもあると思います。)

ここに挙げた行動・プレーは”サッカー”に含まれないものと思うため、可能なら全て”空費された時間”として追加してほしいと思っています。

ただ、それらは計測が難しいため、ならば時計を止めることで試合時間を確保するほうが良いと思いました。

こちらも「アディショナルタイムが必要ない」と思う理由です。

理由④ 100分を越えての試合終了

2021年のJ1リーグではVARが再導入され、VARチェックに時間がかかる影響などで試合終了時に表示時間が100分を超えることも出てきました。

いくらプレーをしていなかったと言え、「90分」で一区切りだと思っている中で、10分以上の時間が追加されるのは選手・スタッフ・サポーターにとって違和感のあるものだと思います。

2021年のJ1リーグでは、13試合が100分に近い時間で終了しています。

4節 徳島vs福岡 (99分53秒)
5節 福岡vs鹿島 (101分11秒)
5節 神戸vs川崎 (100分31秒)
10節 札幌vs横浜FM (99分04秒)
10節 大分vs柏 (99分45秒)
13節 徳島vs札幌 (99分11秒)
14節 仙台vs福岡 (100分47秒)
15節 C大阪vs広島 (100分22秒)
20節 湘南vs柏 (101分35秒)
21節 福岡vsG大阪 (99分39秒)
22節 湘南vsFC東京 (101分04秒)
28節 大分vs湘南 (100分14秒)
29節 湘南vs福岡 (99分49秒)

こちらも「アディショナルタイムがいらない」と思う理由の一つです。

・新ルール提案

そこで私が提案したいのが「プレーイングタイム制」の導入です。

プレーイングタイム制とは、

タイムキーパーがいて、ボールがピッチの外に出たり、ファウルがあった場合は時計が止められる。

というもので、フットサルのトップリーグやバスケットボールなどで導入されています。

これにより、ボールがピッチの外に出てから試合が再開されるまでの時間が試合時間に計測されないため、いわゆる遅延行為という反則が激減すると思います。

さらにプロの選手がプレーしている時間が確実に確保されているため、”サッカー”がより魅力的になると思います。

・現実的な試験的導入

先述した通り、VARの導入が空費された時間を増やしているのは明らかだと思います。

得点が決まった際には、絶対にVARチェックが行われるため、そのタイミングで時計を止めるのは可能なのではないでしょうか。

主審がゴールと認定したタイミングで時計を止め、キックオフまたはFKなどの再開時に再び時計を動かし始めることは可能だと思います。

ただ、”サッカー”において一時的に時計が止められることなど聞いたことがないため、これももしかしたら現実的ではないのかもしれません……

・結論

プレーイングタイム制は、”サッカー”を見られる時間が確保され、サッカーの魅力的な面を多く見られるようになると思います。

将来的にアディショナルタイムがなくなり、プレーイングタイム制になったらいいなと思っています。


現行のルールに異を唱えると「だったら見なくていい」と言われることが多々あります。
しかし、過去のバックパスに関するルール変更などがあったように私の提案は”サッカーの本質”をより引き出すことに繋がると考えているため、「アディショナルタイムが嫌ならサッカー見なければいいじゃん」ってご意見はないとありがたいです。
(と言いつつ”サッカーの本質”もまた定義難しい……)


色々な方の意見を聞いてみたいです。

また、加筆・修正をする可能性が大いにありますのでご了承ください。

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