革命

アートが社会に与える影響

■アートは世界を動かしている

アート思考について語るため、アート思考を活用したアーティストがどのようなことをしたのか、まず最初はピカソと彼の有名な絵「ゲルニカ」でお話しますね。

この縦3.5m、横7.8mもある巨大な作品はスペインのバスク地方にあるゲルニカという町が空爆を受けた時の様子を描いたもので、今はスペインのソフィア王妃芸術センターにあります。1937年のパリ万国博覧会のスペイン館への展示のためにピカソに依頼をしたのですが、同年4月26日にゲルニカで空襲が発生しました。この事件をきっかけに描いたこの「ゲルニカ」は、美術史において最も力強い反戦絵画芸術の一つとなりました。

そしてこの絵には同じ大きさのタペストリーが世界に3点だけ存在し、ニューヨークの国連本部、フランスの美術館、そしてもう1点は高崎の群馬県立近代美術館に所蔵されています。
※これとほぼ同寸で織られたタピスリ(タペストリー)を中心に、同作にまつわる様々な側面を検証する展覧会『ピカソ展 ゲルニカ[タピスリ]をめぐって』が、群馬県立館林美術館で開催されています(会期は2019年10月5日~12月8日)。

この絵の影響がどれくらいなのかの一つのエピソードをご紹介しましょう。2003年、アメリカによるイラク空爆の前日、当時のアメリカ国務長官であるコリン・パウエルがニューヨークの国連本部で記者会見を行った際、そこにあるはずのタペストリーが暗幕でおおわれていたそうです。戦争をしかけるという宣言をする場面にその反戦絵画がふさわしくないと判断されたのでしょう。しかし、それが逆に人々に自分たちがやろうとしていることのメッセージになってしまったのです。つまり、絵画は黙して語らず、しかし観る人に強いメッセージを与えているのです。
このエピソードに興味がある方は、原田マハさんの「暗幕のゲルニカ」がお勧めです。

もう一つ、絵画ではなく音楽のお話をしましょう。

ジョン・レノンというシンガーソングライターをご存知でしょうか?彼はビートルズのリーダーという地位だけではなく、平和の象徴として知られています。彼はアメリカのベトナム戦争の参戦を公然と非難し、平和を訴え続けました。彼は、自分の夢を言葉で、歌で語らずにいられなかったのです。彼の「イマジン」という曲にそのメッセージが全て詰め込まれています。この歌詞をみると、ジョン・レノンは戦争反対を訴えている、というより、人々によりよい人生とは何かを問いかけ想像させているのです。是非、丁寧に歌を聴きながら自分にとってのよりよい人生について想像してみてください。

他にも多くの人物がアートを通して人々を挑発しています。それは絵画の場合もあれば、歌の場合もあり、言葉や行動の場合もあります。また少しずつご紹介していきますね。

■どんな人がアーティストと呼ばれるのか

さて、ピカソにしろジョン・レノンにしろ、すごいアーティストだということはわかります。彼ら、アーティストに共通するものはなんでしょう?私は今回、次の3点を挙げたいと思います。

(1)「常識という檻」から飛び出す

当たり前ですが、人と同じことをやっていてはアーティストとは呼べません。慣れ親しんだ「常識」からどれだけかけ離れたことができるか、それがアーティストに求められます。常識からかけ離れたことをやるためには新たな発想が必要になり、そのためにはアート思考を極める努力が必要です。但し、努力と言っても「頑張ろう」と悩みすぎるとうまくいきませんので気を付けてください。

(2)自らリスクを取りに行く

常識からかけ離れたことを思いついた時に「これをやってもいいですか?」と人に問うてはいけません。なぜなら自分以外の誰もその答えを持っていないからです。誰かにその質問をするのはリスクを恐れて責任を回避したいのかもしれませんが、リスクは自分で持つしかないのです。世に知られるアーティスト達は、ほとんどの人が最初は非難ばかりを浴び、むしろその非難で名を知られていた人も多くいます。しかし彼らはそこで諦めず、自らの信念を信じて突き進んでいます。

(3)人に刺激を与えて問いかける

アーティストは人に感動や、また逆に拒否感など、なんらかの刺激を与える必要があります。なぜなら人は刺激を与えられて気づくことができるからです。

相手に何も感じさせることができなければ、メッセージは伝わりません。そして相手に感動を与えれば、問いかけるためのメッセージを相手は受け取ることができます。

貴方の周りにそんな人はいますか?


■今は誰もがアーティストになれる

しかし、昔も今も誰もがアーティストになれる時代です。信念をもって自分の信じる道を進めればアーティストなのです。

しかも今の世の中は情報発信する方法は溢れています。ブログやTwitterから、Facebook、LINE、そして言葉だけではなく、表現方法自体もアートにするならYoutubeやInstagram、TikTokのように映像でも発信することができます。

後は、"何を"発信したいかを自分に問うだけです。これがなければ何も始まりません。誰かと同じことをして過ごすのか、誰にも迷惑をかけないよう息を殺して過ごすのか、そんな人生を100年続けていきますか?

今の時代、多様性が認められつつあり、変化が求められる時代です。是非、社会を挑発してください。挑発することでぬるま湯の生活から飛び出して、自身も周りの人たちも想像力が活性化します。もちろん、一時的には混乱が生まれるかもしれません。しかし、混乱がなくては進歩は生まれませんし、あらゆる進歩は一人ずつの変化の結果です。

貴方自身がアーティストとして現状を変える決断と勇気を持ってください。

アーティストは単なる改善者ではなく"改革者”でもあるのです。

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