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隣から仲間が消えた日 (前編)

新隊員教育とは


自衛隊では6ヶ月間(前期・後期)
新隊員教育というわかりやすく
言えば研修のようなものがある。

ざっくり説明すると
前期→自衛官の基礎を学ぶ期間
後期→専門知識を学ぶ期間

前期教育
(この教育が終わる頃には職種が決まる。)
*職種→歩兵、戦車、大砲など

自衛官の基礎とは
・基本教練(敬礼や歩き方など)
・基礎体力
・心構え

後期教育
(前期教育で決まった職種について学ぶ)

こんな感じで6ヶ月間教育を受ける。

中でもこの前期教育がしんどいのだ。
高校卒業したばかりの18歳の青年が親にも厳しくされたり怒られた事がないのに、他人に怒鳴られたりするのだ。

そんな新隊員教育(前期教育)
地獄の3ヶ月が始まりました。

部屋は10人部屋で一つの班として過ごす。

部屋の中を紹介しよう。
2段ベットが5個。
テレビはない。
ロッカー
貴重品BOX(キャビネットという)
本当に何もない部屋である。

ベットバディTくん

次は部屋のメンバーだ。
10人と多いので
1番関わりの多かった
Tくんを紹介する。
もう10年以上前なので、少し曖昧だ。
彼はベットバディといって3ヶ月
ともに過ごす運命共同体である。
何あればお互いを助け合う存在だ。 

年齢
私の1つ上の19歳。
身長
180㎝ないくらい。
見た目
色白でイケメン(川崎真世似)。
性格
少しクセがある。
厳しいけどなんだかんだ優しい奴。
好きな事
パソコン・ゲームが好き。
得意な事
ランニング

このTくんとは苦難の3ヶ月を共にした。

キャビネット閉め忘れ事件発生

ちょうど3ヶ月の内
半分くらいが過ぎていた頃だ。

私が貴重品BOXの鍵を閉め忘れて
訓練に行ってしまったのだ。

こういった何かを忘れてしまったり
物をなくすなどの行為をしてしまうと
反省の対象になるのだ。

*反省とは*
何かミスをした際に腕立て伏せをしたり
つらいことをさせられる事を意味する。

訓練が終わり部屋に帰ると
貴重品BOXがないのだ…

この瞬間になんとなく察する。
やってしまったなと。

元々私は忘れ物や物をなくす事が多いので
こういう時なんとなくわかるのだ。

閉め忘れた…

こういった時は班長が鍵を持っているので
返してもらうために
まず班長に謝りに行くのだ。
班長室があるので、そこに行く。

反省があると思うと憂鬱で仕方ない。

「第◯班〇〇候補生入ります!」

こんな感じでノックをして部屋に入る。

班長「その場に腕立て伏せの姿勢を取れ!」

私 「ヤー!」

今思い出すだけで嫌な気持ちになる。
ただ同時に少し笑えてくる。
何をやっていたんだろうと。

この時の反省は何回やれとかは
言われなかったので
終わりの合図があるまで
ひたすらやっていたのを覚えている。

汗だくだくになりながら部屋に帰ると
班員やTくんに笑われる。

お前何やってんだよって。

このやりとりで救われるのだ。
みんなに迷惑かけなくてよかった…
少しホッとしていた。

同じことは何回かやってしまいます。

訓練が終わり部屋に帰ると
貴重品BOXがありません…

これは今度こそやばいと。

次はTくんも一緒に呼ばれます。
この時点ですまんと。
一緒に反省ですよ。

腕立て伏せしながらごめん…
心の中で何回言ったことか…

なんとか終わりTくんは

笑っているような
怒っているような
微妙な感じでこう言いました。

Tくん「マジふざけんなよ!笑」
    「もう絶対閉め忘れるなよ!」

私  「もう絶対閉め忘れないから!」
   「ホントにごめん!」

こんなやりとりをしたのを覚えている。

2度あることは3度ありますよね。

もう1度鍵閉め忘れます…

この時は自分にがっかりしました。

何をしているんだと。

ここからは僕の人生の中で1番涙を流した事件が起きます。
次回最終章です。

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