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#12 伊藤園はメーカーだけど工場を持たない?

決算書を見ながら社会人力を養成しております。今回、環境に配慮した”サスティナブル”について調べたく、ペットボトル飲料の会社を調べたいと思いました。ペットボトル飲料で思いついたのが「お~いお茶」だったので、伊藤園について調べました。

■イメージ

・「お~いお茶」に代表される飲料メーカー
・茶葉は、自社生産でなく農家から仕入れてる
・仕入れた茶葉を自社工場で加工・小売りへ販売
・販売先はスーパーなどの小売業なのでB2Bビジネス
・ターリーズも運営してるので、一部B2Cビジネス
・ペットボトル飲料の種類が多そうなので、ロットが多く在庫多そう
・ペットと言えば、サスティナブルの観点でどう取り組んでるのか?

■仮説

・メーカーなので工場・倉庫等の固定資産が多い
・原料を仕入れるのは契約農家そうなので早めに支払いそう
 =仕入れ債務日数が短い
・自社製品のためPLの原価率はかなり低い(50%以下)
・B2Bビジネスのため売掛金の回収は遅い
 =売上債権日数は2か月60日くらい
・ロットが多いため棚卸資産は一般的な小売業よりも多い
・一度の製造ロットも大きいため、棚卸資産回転日数は長い
・昨年はコロナの影響で外出が減り、自販機販売含めて売上は大幅減

■検証

それぞれの仮説について、実際の決算書短信・説明会資料を見ながら検証を進めます。

仮説1:メーカーなので工場・倉庫等の固定資産が多い⇒結論:意外にもファブレス経営

どれどれと思って決算書説明資料を見ていたら、書いてありました。

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茶葉の仕上げ加工等、一部は自社工場を使用してるようですが、工程のほとんどは提携先工場に委託してます。つまり製造者は伊藤園でなく、伊藤園が管理・監督した基準をクリアした委託先ということ。委託費用などコストはかかりますが、小さな資本で大きな売上を上げることができます。このような「ファブレス経営」の代表はキーエンスでしょうか。

指標としては、総資産回転率=売上高 /  総資産

飲料_資産回転率

飲料メーカー大手各社の総資産回転率は、下記の通り。
・伊藤園 1.34回
・コカ・コーラ 0.84 回
・キリン 0.75 回
・アサヒ 0.46 回
・ダイドー 1.00 回
・サントリー 0.75 回
数字だけ見れば伊藤園は、アサヒの3倍効率よく売上を上げているようです。

仮説2:仕入れ債権日数が短い

これは、仕入れ債務回転率の方が同業他社比較がし易かったので、率で比較。

仕入債務回転率 = 売上原価 /  仕入債務

・伊藤園 7.71回
・コカ・コーラ 4.30 回
・キリン 6.57回
・アサヒ 5.45 回
・ダイドー 4.62回
・サントリー 2.45 回

数値が高い程、売上に対する買掛金等が少ない=支払いがスムーズ と言えるので、伊藤園が業界的には支払いがスムーズと言えそうです。

これは当初仮説では、
「茶葉等の原材料確保の際、農家に早く支払うことで値引き交渉・品質確保がし易くなる」と考えてました。
が、製造を外部委託してるということは、オリジナル商品等の製造=下請け商品となり、法律で「下請け商品は製造から30日以内の支払い」と定められてます。そのため、支払いタームが全体的に早くなる、考えられます。

仕入債務が減る・現金が減る=資産が減る⇒ますます総資産回転率が上がる、ということでこれを経営的に重視してるようです。

仮説3:自社製品のためPLの原価率はかなり低い(50%以下)

これは前提が間違ってました。
外部に製造委託してる=外注コストが発生する=原価としては高くなる
と、考えられます。

・伊藤園 51.8%
・コカ・コーラ 54.2%
・キリン 56.5%
・アサヒ 63.3%
・ダイドー 47.2%
・サントリー 58.9%

とはいえ、他社比較上は、優位性が保たれるように見えます。別の仮説として、「在庫が適正に保たれていて値引き販売の必要がない」「原材料コストがかなり低い」と仮説します。

仮説4:売上債権日数は2か月60日くらい

伊藤園_売上債権回転率

画像4

売上債権回転率は高い程、現金の回収が早い。これはコロナの影響に対してどうなるか?小売店へ卸したものの、休業要請などもあって先方の支払いが遅くなってる可能性もあるかと。


仮説6:棚卸資産は一般的な小売業よりも多い

伊藤園_棚卸資産

よくよく考えると、他社に比べ多いか少ないかよりも、在庫が滞留してるかを考える方が良いと思い棚卸資産回転率の推移。

直近3年は在庫の回転が悪くなっているようです。個人的には、これは飲料が一番売れる夏が、梅雨明けが遅くなったり、大雨・洪水が発生したりと、ピーク時の販売阻害要因が多かった影響かと思ってます。

・サスティナブル対応

ペットボトル飲料が主体のため、色々取組を進めてるようです。

・ラベルレス商品の展開

画像6

・ペットボトルを全てリサイクル素材へ

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・植物由来の生分解性フィルター

決算短信より引用:

「ワンポットエコティーバッグ」シリーズとしてリニューアル発売しました。おうち時間の増加を背景に、家庭で便利な大容量の日本茶ポット用ティーバッグの売上は増加しています。今回、植物由来の生分解性フィルターを採用し、環境に優しいティーバッグとして生まれ変わりました。

・最後に

サスティナブルについて調べたら、意外にもメーカーなのに工場を持たない(一部の工程で工場がありますが)ファブレス経営だったことを知り、勉強になりました。この調子で、あと900社くらい決算書を見れば、社会のことをもう少し知れると信じて続けたいと思います。

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