見出し画像

はじめての「個展」に向けて①

個展をする意味を考える

 今年の秋に小さな個展をしてみようと思う。私の筆人生はそこそこ長い。しかし、いままで自ら運営する書道教室の展覧会は主催したけれど、考えれば自身の個展は経験がない。何故か。
 生徒の展覧会においては、こどもたちは親御さんや同志に成長や上達ぶりをみてもらう喜び、いろんな人の作品を見ての学び。成人の方は自分の挑戦や力試しとお互いに言葉で褒めあったり心で競い合ったり(笑)。とすごくすごく意味のあるものだと思う。しかし、いざ自分だけの展覧会をするとなると少し躊躇してきた。私は人に教えるのだから書道のプロだと思う。でも各書体の文字や、かなが美しく書けたり、臨書がよくできたりは当たり前で、それ以上のものって私にあるのかなと常に思っていた。だから誰が見ても正しく美しい文字といってもらえるのもしれないけどそれ以外の感想なんて何もないんだと思う。個展でそれらをを展示したとして「誰が見たいねん」「興味ある人いるんかな」「義理で見に来てくれるんかな」と不安しかない。だから個展はしていなかった。そう。何かが足りなかった。それは何?

教育書道から芸術書道へ

 いままでルールの中で書道を学び、墨のすり方、含ませ方、筆の持ち方、運筆法にはじまる〇〇法、△△法とまるで掟のような枠の中で書いてきた。そのおかげて知識も技術も向上した。そして初心に戻り、今、改めて宗師の言葉(書物)を思い出す。「実用書道か芸術書道かは書写か鑑賞かの考え方の違い。書写でも人によって実用に役立つこともあれば鑑賞にもなる。昔から詩歌を揮毫し、表札、帳簿、目録、色紙、はがき、装飾など書道は意思伝達の単なる記号ではなく東洋や日本の伝統精神だ。」というようなことが書かれていた。時代は変わり、活字やデータ通信が主流になった今でも、歴史ある筆跡には想像できない民族精神が宿っている。「日本人は書道を世界に誇るべきものとしてこの道を子々孫々に伝えていくだろう。」と。
 使命感を感じた。伝えていかなくては!!。ということで、私なんぞがこの奥深いしきたりのある書道という「道」を伝えるにはおこがましい気持ちもあるのだが「藁書」というツールを使ってなら少しならお手伝いできるのかも。と思ったわけだ。 藁書は書道とは違う。入口?でもない。共通部分は、伝統的な和紙や墨という用具を使い、文字を表現する黒と白の世界。これで十分。
 色紙や短冊をインテリアにしたり、手描きのはがきを送りあったり、目録や熨斗紙、祝儀袋を筆で書いてみたり、看板やラベルを筆文字でデザインしたり、墨は日本人の心で癒しでもある。ただなぜ現代になって筆離れしすぎたか。手書きが実用的に必要でなくなったことに加え、筆慣れしていないと「下手コンプレックス」があるからだと思う。ある程度の文字書きの基本がないと難しさや敷居の高さなど感じるのかもしれない。しかし藁筆なら和紙に文字を書くだけで、だれでも楽しい表現ができたりする。それが藁書。毛筆は使い方を誤れば美しくは書けない。しかし藁筆は、正しく美しい文字を書く道具ではないから老若男女がとっつきやすい。私は墨で書く楽しさ、伝統的な和の深みをたくさんの方にひろめたい。このためのツールとして藁書を活用したい。
 書道は「道」です。しきたりや技術など古くから伝わるものも大切にしなければと私は思っている。芸術なのだから、好きに書けばいい。用具も好きなもので自由に使えばいい。という思いの半面、ここはゆずれない。とかこれは許せないという部分が私の中でいつもあって、作品制作のブレーキとなっていたのかもしれない。藁書との出逢いが、私にとって墨で文字を美しく書くことから墨で自由な表現をすること、芸術としての書を創っていくことに踏ん切りをつけてくれたようだ。わたしは芸術としての書を「見てください」というだけではなく、「書いてみてください」と提案するために活動していきたい。日本人の伝統を、心を後世に残すために。
 ただ書の個展ではなく、しきたりや技術を超えた、新しくて楽しくて、書いてみたくなるような書。そんな個展にすれば「見たい」「書きたい」って思ってもらえるかな。

個展の企画へ

 まず日程と会場をピックアップし、選んで押さえることから。コロナ禍で考えるところもあるが、とにかく対策を徹底してやる方向で動いておこうと思う。なので日程や使用するにあたり、あらかじめ柔軟に対応してくださいそうな会場を考える。都会ではないのでないのでギャラリー的な場所がなかなかなくて、公共文化施設の一室になるのか。でも搬入室など条件が厳しいし日程の調整、変更がききにくい。いろんなことを考えて考えて考えた結果、今、書道教室で時間借りしているオーナーさんに相談した。今まで個展など連日使用はされたことがないらしく、時間貸し以外の料金設定もなかった。が、「いいですよ。使ってください。」と安価料金で快諾していただけた。少し狭いがいつも使っていて備品や鍵など勝手がわかり慣れている。駅からも近い。が、問題が・・・両壁にはピクチャーレールは通っているがスポットが全くない。なにか照明の方法を考えないといけないな。
 ということで、とりあえず場所と日程だけは決まった。これから手作りで開催にむけて進めていこうと思う。



応援してください。