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【無料で全部読めます】戦略コンサルタントからみた「フェルミ推定のポイント」

有料記事設定ですが、皆さん全部無料で読めます。
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戦略コンサルティングファームを中心とした入社試験ではもはや定番であり、「できない=落選」が決まる足切り基準である印象が強いフェルミ推定について語ります。

戦略コンサルタントはフェルミ推定で、候補者をどのように評価するのでしょうか。大きく3つのポイントがあります。
 ①定量的な構造化ができるか?
 ②本質(数字を規定する要因)を付くことができるか?
 ③数字自体の精度を検証できるか?

実際のケースのお題を例にして①~③がどのように評価されていくかみていきましょう。以降、”ジュニアクラスの1次面接であれば通しても良いかな”と思える学生の回答イメージです。

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◆ケースお題
日本国内におけるシャンプーの市場規模はどの程度になると思いますか?

◆初期回答 (思考時間ゼロでその場で回答)
シャンプーを「人間の洗髪材(リンス・トリートメントは除く)」と定義しその年間総売上を需要サイドから求めることとします。
市場規模(円/年)=A: 人口(人)×B: 年間シャンプー回数(回/年・人)× C: 1回当たりの利用量 (ml/回) × D: 単位当たり平均単価 (円/ml)
 A=1.2億人
 B=365回/年・人 毎日1回は洗髪すると仮定
 C=5ml/回      ボトル1本500mlが約3か月(約90日)でなくなると仮定
 D=2円/ml              ボトル1本500mlのボトルが平均1000円と仮定
∴市場規模=4380億円/年

◆面接官との議論を通じた深堀評価
面:式自体はクリアだが、なぜそもそも需要サイドから求めたのでしょうか?(①定量的な構造化ができるか?)
候:イメージが湧くためである。実際に使用量と単価も一人のユーザーとして分析がしやすく精度が高くなると考えました。
面:フェルミ推定するにあたって、ご自身の推計で、怪しいパラメーターはどこでしょうか?なぜそう考えられるでしょうか?(②本質(数字を規定する要因)を付くことができる)
候:パラメーターとしてはB,C,Dいずれも怪しいと考えられます。
Bの年間シャンプー回数については全員一律で1日1回のシャンプーと仮定しているが本当にそうか。若い女性は朝シャンプーしており1日2回かもしれない。高齢で介護施設にいる人は2日に一度のシャンプーで事足りているのかもしれない。
Cの1回当たりの利用量については全員一律で5mlと仮定しているが本当にそうか。髪の長い女性は短い男性に比べて利用量が大きいはずです。
Dの単位当たりの平均単価も全員一律で500mlで1000円のシャンプーを購入していると仮定しているが本当にそうか。男性でも薬用シャンプーでは高価格と考えられ、女性でもオーガニックやカラーダメージケアなど高機能のものが存在しており価格帯は異なると考えられます。
面:どうすればB,C,Dのパラメータの推定精度を上げることができるでしょうか?(②本質(数字を規定する要因)を付くことができるか?)
候:前述の通り消費者を層別化する方法が考えられる。消費者の属性によってBやCやDが異なるためです。例えば、年齢軸、性別軸がBやCには効いていそうである。Dではこうした高機能群を求めるユーザーか否か、もっというとシャンプー自体にどの程度の金額を費やしているかという軸で切ってもよさそうです。
面:わかりました。4380億円という数字ですが、あっていると思いますか?(③数字自体の精度を検証できるか?)
候:大きくは外していないと思います。
怪しいパラメーターのB~Dの積である年間一人当たりのシャンプーの購入価格は3,650円に相当します。これを1世帯平均3人で世帯に換算すると年間約10,000円であり、月間で約800円に相当します。家計簿を思い出すとこの程度のレベル感に収まっていた印象であり。桁が違うということはないかなと思っております
面:わかりました。ありがとうございます。
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この候補者は無難な回答をしている。①~③のポイントに基づき簡単に評価をしてみよう。
①定量的な構造化ができるか? ➔ そこそこ
回答時間ゼロで最低限土台となる因数分解式を検討できている。またなぜ需要ベースで式を構築したのかも説明できている。この回答にさらに加点できるとすると供給ベースではどんな切り口があり、なぜそれがNGかを簡潔に述べることであるが、需要ベースから切っている理由に納得感があるため大きな減点にはならないと想定される。(尚、供給ベースの算出だと小売などチャネル別にどれだけ売れるかを積み上げていくアプローチが考えられる)

②本質(数字を規定する要因)を付くことができるか? ➔ Good
この候補者は非常に良い回答をしている。B~Dの数字精度について言及した上で、精度をあげるためのファクター(言い換えると数字がばらついてしまうファクター)として消費者の属性について言及している。そしていずれも納得感がある。いたずらに年齢と性別によってわけますといって細かいフェルミ推定をするのではなく、B~Dの数字を規定する要因を洗い出した上でセグメンテーションの切り口を提案しており納得感がある。

③数字自体の精度を検証できるか? ➔ Good
自分の実感ベースでの推計を、違うソース(家計)からバリデーションできているので良い。よく、”B~Dがだいたい3650円で私の感覚と同じくらいなのであっていると思います”とのたまう候補者がいるが自分の実感をベースにフェルミ推定しているので当たり前であることに気づいて欲しいものである

いかがでしたでしょうか。
勿論、フェルミ推定は1次面接の足切りラインであり、この後、この候補者は「市場規模を拡大させるための方策を考えよ」という質問に対応していくことが求められる。
とは言え、このレベルの回答は戦略コンサルタントを志望する上では必須といっても過言ではない。このケースを参考に対策をしていっていただけると幸いである

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