DTMにおけるモダンメタルギターサウンドの音作り順序とは?
「メタルのギターなんて歪ませればいいだけだから単純でしょ」
いえいえこれが中々難しいんですよ。「なんかうまくいかない」「ミックスしたら変わってしまった」という時に
下記手順は前提として曲、もしくはギターパートができている前提です。
音作りに行き詰まったらやること
具体的には下記をトライしてみると良いと思います。
基本に立ち返ってみる。
ギターの音作りは他の楽器の音作りの後にする。
3rdパーティーキャビネットIRの選択
ダブルの音作りはステレオで鳴らして行う
ポストEQの積極活用
1.基本に立ち返ってみる。
メタルギターサウンドの基本とは
メタルギターサウンドの基本は下記です。
Drive=0 Tone =50%以上 のTS系オーバードライブ(常時ON)
Peavey5150 もしくは Mesa Boogie Dual Recitifier
ゲイン下げ目、MID下げ目のアンプセッティング
MESA Boogie Oversized 4x12キャビネット
Celestion Vintage30 スピーカー
SM57マイクもしくは SM57+ Royer R121のミックス
参考画像はAmplitube5画面です。だいたいのアンプシミュレータにおいて、廉価版、標準モデルでも必ず含まれている組み合わせだと思います。モダンメタルトーンの大部分はこのセッティングの派生になります。
音作りに悩んだら一度この基本に立ち返って、欲しいサウンドはここからどう変化したものなのか?を考え直すと良いと思います。
2.ギターの音作りは他の楽器の音作りの後にする
割と多くの方が先にギターサウンドは固めて録音する「掛け録り」していると思います。が、最終的なサウンドのレベルをあげる手順として下記の順番を試してみることをおすすめします。
ギターの生音を録音する
仮の適当なギターサウンドを作っておく。
ドラムの音作りをだいたい完成させてしまう。
ボーカル、シンセなど上物の音作りを完成させてしまう
ギターの音作り!(リアンプ or アンプシミュレータプラグイン)
全体調整
ギターの音は曲のサウンドを作る中盤以降で作ることにしましょう。これだけでもだいぶ違います。
適当なプラグインアンプシミュレータで仮音作成
ギターの生音を録音したらとりあえず適当なプラグインのアンプシミュレータで仮音作りをしておきます。クリーン、クランチ、リードが分けられるくらいで良いと思います。
ここでは動作が軽く、そこそこ機能が充実していて、そこそこ音が良いシミュレータが良いと思います。
◇仮音作りでのおすすめプラグインアンプシミュレータ
Audio Assault / Sigma EX
動作が非常に軽く、プリエフェクト、ポストエフェクト、キャビネットシミュレータも搭載でさらに音も良い!のでおすすめです。クリーン、クランチ、リード3ch構成でカバー範囲も広いです。そして何より安さ!コスパNo1ギターアンプシミュレータかもしれません。
Brainworx Diezel VH-4
実機そのもののCH1〜CH4はクリーン〜激歪みまで守備範囲の広い万能型です!そしてこれもまた動作が軽いのに音がいい!エフェクト関係はあまり充実していませんが、仮であればこれ単体でも十分です。
※Plugin Alliance製品は必ずセール時期に買いましょう。
https://www.plugin-alliance.com/en/products/diezel_vh4.html
ドラムの音作りをだいたい完成させる。
そうです。ギターサウンドは後回しです。まずは一番曲のサウンドクオリティで最も重要なドラムの音を完成させましょう。
ドラムとボーカルの音が最も重要。ギターは後回し。
ギターの仮音を作ったら、一度そこで終了。
まずは一番曲のサウンドクオリティで最も重要なドラムの音を完成させましょう。そのあとはボーカル→ギター以外の上物の音作りとしましょう。ギターの音作りは最後にやりましょう。
ギターの音作りは必ず他の楽器の音を聞きながら
まわりがだいたい出来上がってからギターの音作りに入ります。そしてまわりの楽器などと一緒に鳴らして音を決めていきます。この手順を取るだけで最終的な音が変わってくると思います。
3. 3rdパーティー製キャビネットIRの選択
エレキギターのサウンドのキャラクターを決める最も重要な要素はキャビネットとマイクと言えるでしょう。私の主観ではありますが、下記くらいです。
キャビネット&マイク=50%
アンプ&エフェクター=30%
ギター(シングルコイルorハムバッカー)=19%
その他=1%
実アンプマイキングよりも音が良い
「そんなわけない」という意見もあるかと思いますが、キャビネットIRを使用するよりも良い音で録音できるのは、本物の腕前のプロのエンジニア、スタジオ、一流の録音機材と設備が揃った場合だけです。よほど出ない限り、キャビネットIRを使用するよりも良い音にできることはまずないと考えた方が良いでしょう。
キャビネットエミュレータよりも悩まない、良い音への近道
昨今のキャビネットシミュレータでも、そのベースとなるのはIRである場合が多いと思います。細かく設定できて自由度は高いですが、要素が多すぎて迷走するケースも多くなります。また、組み合わせによってはレゾナンスが出やすかったり、低音が多すぎたりと相性の問題が出てきます。
ある程度選択肢が制限されているキャビネットIRを使用してしまった方が結果的に早く、良い音に到達できるのではと思います。
◇おすすめモダンメタル向けキャビネットIR
OwnHammer 412 RECT Essentials
老舗OwnhammerのMESA Rectifier Oversized 4X12のキャビネットIRです。とにかく使いやすく音が良い。キャビネットIRのファイル数も非常に多いです。
YORK AUDIO ORNG 412-V30
ゴリゴリの低音でメタルに人気なOrangeのキャビネットのIRです。YORK AUDIOのキャビネットIRは自然なサウンドでクオリティが本当に高い。
ML Sound Lab MEGA Djent Cab Pack
7弦、8弦ギターのダウンチューニング+低音の強いアンプとの組み合わせでかなりMixreadyなサウンドになります。中高域に特徴があり、曲の中でかなり映える、抜けの良いサウンドが簡単に作れます。
4.ダブルの音作りはステレオで鳴らして行う
メタルではバッキングのギターを2回録音し左右にそれぞれを振った「ダブル」をよく採用すると思います。ギターの音作りで大きなポイントは「ダブルの音作りはダブルにした状態で聞いて行う」ことです。
上の画像では"Stereo"モードでダブルのRhythmギターを鳴らしている状態です。
モノラル→ダブルにすると音が変わる
モノラルのギターサウンドとダブルにした時少し波形比較してみると下図のようになります。
わかりますでしょうか?モノラル(Lのみ)鳴らしている時とダブルで鳴らした時を比較すると、特に高音と低音がLRで重なる部分が多く、センターに音が定位したり打ち消し合ったりして聞こえ方がかなり変わります。
「モノラルで良い音→ダブルでイマイチ」という事態は少なくないと思いますが、聞こえ方が変わるので当然の結果と言えます。
逆に「ダブルで良い音→モノラルでも良い音」というケースは多いです。ぜひダブルの音作りはダブルの状態の音を聞きながらやりましょう。
ダブルで音作りはどうやる?
これはモノラル掛け録りしてしまうともうどうしようもありませんので、アンプシミュレータプラグインかもしくはリアンプ(録音したギタープレイをギターアンプに入力して再度アンプ音をマイキング )を行いましょう。
リアンプはデジタルアンプでない限り、同じアンプとスピーカーを2セット用意する必要がありあまり現実的ではないかもしれません。Kemperなどキャプチャー系アンプを使用する方が良いでしょう。
5.ポストEQの積極活用
ポストEQで全体的に音を整えましょう。メタルの場合、アンプでドンシャリにしているとは思いますが、ポストEQでも中域(500Hz~800Hzあたり)は削ることで、よりワイドレンジな響きに変わります。
また、各ブースト、カットでQをあまり狭くしないところがポイントです。Qを広く数dB程度の増減にしておいたほうが良いと思います。ただ、アンプとキャビネットの組み合わせでレゾナンスが出た場合は細いQでその部分だけ落としても良いと思います。
低音が多い時、まずギターを見直してみよう
メタルギターサウンドはとにかく低音が多いです。曲全体を聞いて「なんかこもっている」「低音が多すぎる」と感じたら、ベースやキックの前にまずはギターの低音が出過ぎていないかをチェックすると良いでしょう。200Hz-300Hzあたりをカットすると解消されることがあります。
まとめ
メタルギター音作りのポイントをいくつか書いてみましたいかがでしょうか?ギタリストはどうしても「ギターを弾いているその時のその音で」と考えてしまいがちですが、曲全体から音作りをしていくことでより良いサウンドになっていくと思います。
昨今はプロもAXE FXやKmeperの使用、リアンプの手法でレコーディングを行っているケースもあるので、旧来の方法に無駄にこだわらず色々実践する方が良い結果になると思います。
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