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想像力の中に立ち上がる “演劇“。宮永琢生(ままごと)インタビュー

ストレンジシード静岡のサポートスタッフ、その名も「わたげ隊」。ストレンジシードってどんなフェス? どんなアーティストが出るの? ということを伝えるべく、地元・静岡を中心に活動するわたげ隊が出演アーティストにインタビューする企画。第2回はままごとの宮永琢生さんが登場です。

わたげ隊がゆく!
ストレンジシード静岡2022 アーティストインタビュー

ゲスト:宮永琢生(ままごと)
聞き手:わたげ隊(天野、八木)

「物語」を身に纏う

「演劇を ままごとのようにより身近に。より豊かに。」

劇団のウェブサイトにそう掲げるのは、ストレンジシード静岡の常連アーティストである、「劇団ままごと」(以下、ままごと)。今回は、その結成メンバーであり制作を担当する宮永琢生さんにお話を伺いました。

ままごとは、2009年に劇作家・演出家の柴幸男さんを中心に旗揚げされた日本の劇団です。
当初は東京の小劇場を中心に演劇活動を行っていましたが、2013年の瀬戸内国際芸術祭での滞在制作(小豆島)をきっかけに、劇場公演に留まらず、様々な土地で滞在制作を行うようになりました。

ままごと(PHOTO:Hideaki-Hamada)
ままごと『わが星』Photo: Hideaki Hamada

今回、ストレンジシードで上演する作品『マイ・クローゼット・シアター』も、2度にわたる静岡でのリサーチを経て生まれた滞在制作作品と言えるでしょう。会場に用意されるたくさんの服を観客が自身で選び、服に記録された「物語」を身に纏う…
ストレンジシードのウェブサイトには、こう書かれています。

袖を通した時、ある景色が浮かんだ。
懐かしくて、はじめて見たような。
まるで誰かの記憶の扉をノックしたみたいに。

「ストレンジシードに出演させてもらった過去2回は、いわゆる《演劇》作品や《パフォーマンス》作品を上演させて頂きましたが、今回はコロナ禍での開催ということもあり、参加者が一人で体験する《演劇》作品の上演を模索してみたいと思いました。
本作の衣裳演出を担当する瀧澤日以(PHABLIC×KAZUI)さんは、服飾デザイナーを生業としています。わたしが彼に初めて出会った時、彼は服のデザインをする前に物語を創っていました。そして、その物語に登場する人物が着ている服をデザインする。その過程を経て生まれた服を見せてもらった時、それはもうただの服ではなく “演劇” 作品だったんですよね。」

演劇という名の展示 『マイ・クローゼット・シアター』前回開催時の様子

服を使った展示作品という事もあり屋内の会場を想定していたそうですが、ストレンジシード事務局からの提案を受け、展示会場は駿府城公園の「東御門・巽櫓」に決定。
宮永さんいわく、「ストレンジシードは陽の光を浴びているイメージ」。静岡にやってくる服たちが、たくさんの観客と共に、太陽の下を歩く姿が目に浮かびます。

演劇という名の展示 『マイ・クローゼット・シアター』前回開催時の様子

「新しい静岡」を発見する

2022年4月、宮永さんは創作のためのリサーチとして静岡にやってきました。リサーチには、地元の方との交流が欠かせません。自身も小豆島で「喫茶ままごと」兼「ままごとハウス」(現在休業中)のマスターを務める宮永さんに、地元の方と交流するコツを伺いました。

「なるべくいろんなお店に行って散財します(笑)。そんなことしてると、やっぱり “どっから来たの??” って話しかけたりしてくれるんですよね。いろんなお話をお伺いする流れで “この辺で昔の話が訊けるとこないですかねー?” って訊いたり。」

おかげでレコード屋の店主とお話が弾み、美味しいクリームあんみつの純喫茶に辿りついたそうです。そのほか、静岡にある劇場や、静岡おでん、カレー屋、カトリック教会など、静岡に住む人間にもあまり知られていないような場所やお店のお話を聞くことができたとのこと。

「お客さんがストレンジシードをきっかけに、観光ではなかなか行かない場所や、日常に溶け込んで見過ごしてしまうような街の風景や時間を再発見してくれたら嬉しいですね。」

静岡で暮らしているとなかなか見えてこない「新しい静岡」に気づかせてくれる。静岡在住の私たちにとって、ストレンジシードはそんなフェスティバルなのだと改めて感じました。

お客さんの想像力の中に立ち上がるものが “演劇“。

わたげ隊・八木「以前、ままごとは豊橋で手紙を使った作品(※)を創られていましたよね。そして、今回のストレンジシードでは衣裳の展示です。このようなアプローチから、ままごとはいつも “演劇” の枠を拡げている印象があります。ままごとにとって “演劇” って何なんでしょうか?」
※穂の国とよはし芸術劇場PLAT「LANDMARK/ランドマーク」プロジェクト『タイムカプセル封印式』

「いい質問ですね……難しいな、どうしよう(笑)。」と宮永さんは言葉を探します。そこで話は、ままごとの『戯曲公開プロジェクト』に。現在、戯曲を公開するという試みは様々な団体が取り組んでいますが、ままごとは2014年から劇作家・柴幸男さんの戯曲を無料公開し、今ではプロの劇団から高校の演劇部まで、年間100件近くもの戯曲使用の問い合わせがあるそうです。

「自分たちの作品が多くの人を通じて広まってくれる。そこでお客さんの想像力の中に立ち上がったものが《ままごと》の “演劇” になっていたら嬉しいな、と思います。だから私たちにとって “演劇” は、人の想像力を生み出す装置なのかな。上演方法や上演形態は関係ないかもしれないですね。」

『その時、その場所で、その人たちとしかできない演劇』
静岡の人にこそ感じて欲しい演劇を、ままごとは届けてくれそうです。

宮永琢生(ままごと)さん

ままごと ソロ・ワークス
「ままごと」は、劇作家・演出家の柴幸男によって2009年に旗揚げされた日本の劇団。
《演劇を "ままごと" のようにより身近に。より豊かに。》をコンセプトに、さまざまな空間や形態で "その時、その場所で、その人たちとしかできない演劇" 作品を多数手掛けている。
2021年より「ままごと ソロ・ワークス」を始動。劇団員それぞれの自主企画を行う中で、一人一人のオリジナリティとポテンシャルを再認識し、ノンバーバルな交歓に特化した演劇表現の創作を目指している。これまでに、端田新菜によるヘンテコ小芝居ミュージカル『おせんべんべん!』、宮永琢生による演劇という名の展示『マイ・クローゼット・シアター』を上演。

ストレンジシード静岡2022
演劇という名の展示『マイ・クローゼット・シアター』
ままごと ソロ・ワークス


袖を通した時、ある景色が浮かんだ。
懐かしくて、はじめて見たような。
まるで誰かの記憶の扉をノックしたみたいに。
* * * * *
会場にある様々な服には、その服が持っている物語が記録されています。観客は自分で服を選択し、物語を「着る」という行為を通して《日常》から《演劇》へと誘われます。
どんな服でも人生という名の物語を持っています。これは服の展示という形式を借りた「演劇」作品です。

日程:2022年
5月3日(火・祝)
展示:11:00〜17:00
体験:11:00〜11:30の間に集合
   11:30〜12:00の間に集合
   13:00〜13:30の間に集合
   13:30〜14:00の間に集合
   15:00〜15:30の間に集合
   15:30〜16:00の間に集合
5月4日(水・祝)
展示:11:00〜17:00
体験:11:00〜11:30の間に集合
   11:30〜12:00の間に集合
   13:00〜13:30の間に集合
   13:30〜14:00の間に集合
   15:00〜15:30の間に集合
   15:30〜16:00の間に集合
5月5日(木・祝)
展示:11:00〜17:00
体験:11:00〜11:30の間に集合
   11:30〜12:00の間に集合
   13:00〜13:30の間に集合
   13:30〜14:00の間に集合
   15:00〜15:30の間に集合
   15:30〜16:00の間に集合

会場:駿府城エリア[お城]

対象:高校生以上
定員:各回5名
参加費:無料
持ち物:なし
所要時間:当日お伝えする服の返却時間まで

空間演出:宮永琢生(ままごと)
衣裳演出:瀧澤日以(PHABLIC×KAZUI)
空間設計:菅野信介(Hand Saw Press)
創作・撮影:石倉来輝(ままごと)

このプログラムは、要予約プログラムです。定員に限りがありますので前日までのご予約がおすすめです。ウェブサイトの予約フォームからご予約ください。
予約受付締切:開催日の前日23:59まで
プログラム詳細・ご予約に関してはこちら

※展示だけをご覧になる場合はご予約は不要です。

インタビュー:天野、八木(わたげ隊)
記録・テキスト:天野(わたげ隊)
編集:山口良太(ストレンジシード静岡 事務局)
編集協力:柴山紗智子

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