片耳から聴こえる、それぞれの演劇。 sunday インタビュー
まちは、劇場
天野:みなさんの自己紹介をお願いいたします。
赤星:赤星マサノリです。sundayの前身である「劇団☆世界一団」から参加しています。木下さん(=ストレンジシード静岡のフェスティバルディレクターでもあるウォーリー木下)がずっと作・演出を担当していたんですが、今回の『ひとりいっこ』は僕が演出を担当します。
平林:俳優をやっております、平林之英です。昔、ブラスバンドをやっていたので、音楽と演劇を一緒にやっていきたいなと思って活動しています。焼酎亭という落語のお囃子隊にも所属してます。
年清:年清由香です。今は東京に住んでいる事もあり、最近はあまり参加できていなかったんですが、今回は久しぶりに参加します!
天野:まず、今回の『ひとりいっこ』はどういった作品になるのでしょうか?
赤星:街にある沢山の“オブジェクト“にスマートフォンをかざすと、そのオブジェクトに関する音や物語が音声でスマホから流れてくるという仕組みです。演劇を通して、新しい気付きや違った視点で世界が見えるような作品になっています。
天野:今までのストレンジシードでも観たことがないような作品ですね。
赤星:イヤフォンから聴こえてくる世界に現実の世界を重ね合わせて楽しめる作品になればと思っています。イヤフォンは片耳を推奨します!
天野:このシステムを使った作品を作りたいと思って出来上がったものですか? それとも先に脚本が出来上がっていたのでしょうか?
赤星:久しぶりにsundayで芝居やろうって話になって。で、まず劇場探しからですよね。でもなかなか劇場が決まらなくて。さらにコロナ禍というリスクがある中で、じゃあ「劇場を使わなければ演劇が出来ないのか」というところから考えました。
天野:なるほど!
赤星:お客さんが街に出て、僕らの声を聴けたり物語を感じられたら、それって演劇なんじゃないかなと思って。この方法だったら(遠方に住んでいる)メンバーみんな参加出来るし。そこからシステムを考えたという感じですね。スマホのカメラでモノを検知できるシステムがあって、それに音声を付けたらARっぽい事が出来るよって、エンジニアの久保田健二さんが教えてくれたんです。
天野:そんなシステムがあるんですか!
赤星:そんなシステムを久保田さんに作ってもらいました。そのシステムにあうように、木下さんが書いた脚本を、みんなであーだこーだ言いながらいじりました。いろんな“オブジェクト“にスマホをかざして次々に音声を聴けば、断片的な物語が実は繋がっているんだというのが分かると思います。
天野:それは全部見つけたいですね。
赤星:70個くらいの音声があります!この間、静岡にテストプレイをしに行ったんですけど、駿府城公園にある葵の御紋にも反応してましたよ。
天野:すごいですね!静岡はどんな印象ですか?
平林:おでんの印象です!昨日、地図を見ていたらおでん屋さんがあったので。
赤星:平林さんは実際に駿府城公園で音声を発しますよ。
天野:実際にいらっしゃるんですね!ぜひ、その際におでんを食べていってください!
野外で感じるボイスの世界
天野:今回は皆さんの姿が見えないという状況ですが、ボイスでのお芝居は意識が違いますか?
年清:最初は「なんでこんなに(録音した音声に)息が入ってしまうんやろ!?」って思いました。音声って自分の嫌なところが残るんですよね。
天野:生の舞台だとその場限りなところがありますけど、音声作品はずっと残りますもんね。
年清:そうなんですよね。しかもそれを自分で聴きながら外に出て景色と合わせると、わ、テンポが世界と合わへん!って感じて録音しなおしたり。私はその実験がすごく楽しいです。
天野:世界のテンポと合わない、ですか。
年清:音楽を聴きながら街を歩くっていうのは、皆さん普段からやってはるんやろなって気がしますよね。あれは気分と自分の行動をリンクさせて、曲の合う合わないを選んでる。それと近いのかもしれないです。
平林:外で臨場感がある音声を録音しても、部屋で録音すると全然同じようにはできない。普通の演劇だったら、演出家が「はい」って手をたたくと稽古は終わるけど、今回の作品は一人で演じて録音するから、終わりがないなぁと思いながらやってました。
赤星:みんなが編み出した面白い技があるんですよ。
天野:気になります、それ…!
赤星:バラエティ番組「ナニコレ珍百景」みたいな技です。あの番組って、段々何かにカメラが寄っていくけど、最終的には違う所に焦点が当たるじゃないですか。そういう手法の声のお芝居って、聴いてるとドキッとするんですよ。例えばチョコレートについて話しているのかなと思って聞いていたら、チョコレートが好きな女の子の話にスライドしていく、みたいな。
天野:実はこうでした! っていう事ですね。
赤星:そういう技がすごく面白くて。年清さんも言ってましたけど、家の中で聴いていて「テンポがゆっくりだな」って思っても、外で歩いて聴くとしっくりいったりするんですよ。そういう技をみんな発明してくれて。私ひとりでは生み出せないので、今回はすごく楽しいです。
今の時代でsundayをする
天野:今後「こういった作品をやりたい」というビジョンはありますか?
赤星:どういう演劇ができるかっていうのを、みんなで考えていけたらいいなと思ってます。今の時代に合ったようなことができたらいいなと思って。今って、目の前に相手が実在しないことが多いじゃないですか。SNSとかオンライン会議とか。この『ひとりいっこ』という作品も目の前に誰もいないんだけど、そばに誰かがいるっていうことを感じてもらえる演劇になればいいと思っています。
天野:私も劇団に所属しているのですが、コロナ禍になってからはZoomですら劇団員が集まるのが難しい。さらに全員で何かをやるっていうのがどうしても出来なくなる中で、sundayさんのように「全員が参加できるにはどうすればいいかな」という意識がとっても素敵だなと思います。
赤星:年清さんが参加できない時期とか木下さんが忙しかったりして、3年くらいsundayの活動をやっていなかったんですよね。でも、やっていなかったからこそ「みんなでやりたい」に繋がったのかもしれないです。
ひとりいっこを、わけあいっこ
天野:sundayさんは初めてのストレンジシード出演ということで、どんなフェスになったらいいなと思いますか?
赤星:『ひとりいっこ』はもともと全国どこででも出来るシステムだったんですけど、今回は駿府城公園の中だけでしか出来ないんですよ。
天野:かなり限定的な作品になりますね。
赤星:駿府城公園は観光地ですから沢山撮るものがある。自然に「ひとりいっこ」を体験することができる。
天野:そうですね。しかも当日はフェスですし。
赤星:そう!ガンガン写真が撮れる。さらに他のパフォーマンスも撮ったりして。『ひとりいっこ』も楽しんでもらいながら、ストレンジシードの他の演目も楽しめるような企画になったらいいと思ってます。お客さんには、スマホで検知したモノの写真に「 #ひとりいっこ 」を付けてTwitterにアップしてもらえたら嬉しいです。『ひとりいっこ』で遊べるのは駿府城公園の中だけだから、写真を見た人が同じモノを公園に探しに行きますよね。私も1日だけ遊びに行こうと思ってるので、『ひとりいっこ』をしてる人を見つけて楽しみます(笑)
天野:ぜひ「 #ひとりいっこ 」で!スマホを持って片耳イヤホンしている人がいたら「一緒だ!」って分かりますもんね。それは、今回のような限定エリアのメリットかもしれないですね。
年清:『ひとりいっこ』をやりつつ、「あ、こんなパフォーマンスもあるんだ!」というのも楽しみです!
事務局:「#ひとりいっこ」を付けてツイートをすると、sundayのメンバーがTwitter上で反応してくれるんですよね?
赤星:はい。『ひとりいっこ』の時間内は、遊び方がわからない人のためにTwitterと電話でサポートする「ヘルプデスク」があります。何か困ったことがあれば「 #ひとりいっこ 」を付けてツイートしてもらえると、sundayのメンバーがすぐに対応します。ガイドパンフレットには電話番号も載っているので、Twitterをやっていない方は電話でお問い合わせいただければ。
ガイドパンフレットはストレンジシードの受付でもらえるので、『ひとりいっこ』で遊びたい方は、まず受付に行ってください。
天野:本日は、お忙しい中ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?