京都大学理学部特色入試に1浪で合格したらしい話(前編)

思い出せば2019年の11月、緊張感と覚悟をもって京都に来ていたような気がしますがそれも遠い記憶。著者は何の間違いか令和2年度京都大学理学部特色入試(数学)に合格し世間的には高学歴と言われるような京都大学に入学いたしました。(僕が受けたときは数学しかなかったのであえて書く必要はないのですが、今後は他の科目も続々増えていくと思うので特記しています)
だからと言って同じ年に入学した一般入試合格者から比べてずば抜けて大学での成績がいいのかと言われればそんなことはなく、むしろ大学に入ってからは怠惰な生活を送り続けて学力は停滞しています。それよりも数学以外の科目ができなさ過ぎて全体的に見たら下から数えた方が早いのではないかというレベルです。

さて、そんな現状報告はさておき筆記試験・口頭試問を受けてからはや1年ほどが経過しましたが今年もこの季節になったのかという気分です。実は僕は1浪し、合計で2回特色入試を受けて不合格と合格をどちらも経験した稀有な人間。受験生のころは特色入試の情報が少なすぎて不安になっていた時期もあったので不合格と合格を経験して思ったことをつづっていこうかなと思いこの記事を書き始めました。駄文がつらつらとつづられることでしょうが、まぁ一人の大学生の素直な気持ちと受け取っていただければ幸いです。

・そもそも京都大学理学部特色入試とは
理学部の特色入試(数学)は以下の4段階での選考によって合格者を決めます。一応枠は5名分あります。具体的には京都大学のHPを確認して下さい。

①書類選考(10月頭)
調査書・学業活動報告書(学校に書いてもらう)・学びの報告書(受験者が書く)を提出します。(ほぼ)通過します。平成31年度は確か5人、令和2年度は確か2人しか書類で不合格になった人はいなかったと思います。ちなみに平成30年度以前は誰も不合格になっていません。平成31年度から令和2年度にかけて少し書く内容が変わったので書類に関しての記述は後編に回そうと思います。

②筆記試験(11月中旬の土曜日)
4時間で大問4つの数学の試験を受けます。面白いことに大問1つごとに解答冊子というものが配られ、計5冊の冊子を手元に置いた状態で試験を受けます。解答冊子という概念を知らなければ気圧されてしまうかもしれません。募集要項で飲み物の持ち込みと試験中のお手洗いが許可されている、日本でも稀有な試験でしょう。ほかにない形式なので時間を計って、飲み物を手元に置いて試験を再現してみることをお勧めします。問題の難易度はかなり難しく、一般入試を考えている人によっては過去問を解いてみて絶望する例も少なくないらしいです。筆記試験の結果はその日の夜22:00ごろにインターネットで発表されます(自分が受かっているかどうかしかわかりませんが)。ここでおよそ15人に絞られます。

③口頭試問(筆記の次の日)
実質的な最終関門。教授と5対1で口頭試問を受けることになります。教室に入ると後ろには黒板、席には昨日受けた筆記試験の白紙の問題。教授陣の手元にはおそらくすでに採点された自分の回答。もちろん書類に関しても軽く質問されるので確認しておいた方がいいですが、メインは昨日の試験の結果です。自分がどの問題をどれくらい解けたのか、解けなかった問題はどうすれば解けたのかを考えておく必要があると思います。詳しくは口頭試問に進むことができた後編で記述すると思います。12月初旬に結果が発表され、ここで5人程度に絞られます。

④センター試験
忘れられがちな最終関門。しかし理学部はリスニング圧縮型で630点取れば無条件で合格なので忘れてもそこまで問題はないでしょう。遅刻して入室できずに科目不足で不合格という事態だけは気をつけてください。12月の口頭試問の発表で合格している人はここで630点を取れば合格です。

・不合格体験談(平成31年度特色入試)入試対策関連
入試チャンスが一回増えればいいなという思いで受けた現役の特色入試。この年は初めて書類での不合格者が出た年でもあり、受験票が届くまではドキドキでした。ほかの大学のAOや推薦を受けている人は担任などから書類のチェックをしてもらっている中僕は何もしてもらわなかったので(この前の年までは書類で不合格になることがなかったので正直書類をなめてました)、受験票が届いたときはほっと一息という感じでした。
ここで落ちても普通に受ければ一般入試で受かるだろうという謎の余裕があったので学校の他の科目の授業中もずっと数学のことを考えつづけ、高3の8月~11月の約3か月を全て数学に捧げるという世の中の受験生の中で最もあほなことをしておりました。

その中で行った対策としては以下の通り
①特色入試の過去問・公式が出しているサンプル問題
やはりこれが一番に上がるでしょう。これをやって全然解けなくて絶望した記憶があります。個人的に好きな問題は特色入試2年目の大問3です。何となく予測はできるけど論理的な説明を構築するのが難しかったですね。ただ、(現役のころの段階で)過去問が3年分しかなかったので、サンプル問題+最初の1年分を受験勉強序盤で解いて、直近2年分は2週間前と1週間前の週末に時間を計って解いてました。とりあえず受験生の皆様はこれは解きましょう。解答・解説はYouTubeなどに上げている方がいるのでそちらをご覧ください。(2021年2月現在、サンプル問題がなくなっていたのでリンクを削除しました。)

②数学オリンピック(JMO本戦・IMO)
https://www.imojp.org/archive/challenge/index.html
自分が簡単に入手できる問題の中で、一番難易度が高いと思ったのでこいつらを解いてました。①は3年分+サンプルしかなかったので正直ここが現役のころのメイン対策だったといっても過言ではないでしょう。ただ、個人的には問題の傾向が違う気がするので直接的な効果があるかと言われれば疑問が残ります。まぁ特色入試を受けるレベルの方からすれば適正難易度の問題自体がそもそも少ないと思うので純粋な数学の演習量の増加のためには一番手っ取り早い方法だと思います。

③数学ガールを読む
https://www.hyuki.com/girl/
これは半分趣味です。数学ガールに限らずとも、純粋に自分が知らない数学のテーマに関しての知識を入れるための読書は十分に価値があると思います。どんな問題もバックグラウンドとなる何かがあるはずなので、そこへの知識が一切ない状態で受けるのと何となくでも知っている状態で受けるのとでは解けるかどうかにかかわらず精神的な余裕も違うので常に新たな知識を入れていくためにはいいと思います。普段から数学を勉強してるような方は普通に自分の持っている本や教科書等を読めばいいと思います。僕は数学ガール以外には浜村渚の計算ノートシリーズを読みました。小説を読むのはかなり早いので直前期にかなり高速で読み漁ってました。実際少し関連がある問題が出たので一切価値がなかったわけではありません。解けたわけでもありませんが。

主な対策としてはこんなところでしょうか。順番としては①のサンプル+過去問1年分→②→①の残り2年分が主なルートで、学校の休み時間などのちょっとした時間に①や②の復習をしたり③を読んだりといったところですね。

他にやったことといえば普通に一般入試も受ける予定だったので一般入試の数学の過去問演習とかをやっていました。普通に受けると150分のところを120分や90分で解いてたりしましたね。まぁ京都大学の教授が作問していることを考えると似たような問題でより難しくなったものが出る可能性があるためある程度意味はあるのではないでしょうか、知らないですけど。


・京都入りしてから筆記結果発表(不合格確定)直後まで
神奈川在住だった私は前日の金曜日から学校を休んで(正直3限くらいまでなら出ることもできましたが2・3限が苦手な先生の化学だったので1限から休みました)京都へと移動。ホテルまで移動してから何かあった時の為に歩いて京都大学までの道を確認しました。
その日の夕食はびっくりドンキー、推しであるにじさんじ所属バーチャルライバーの静凛さんが好きなハンバーグ屋さんです。普通においしかったですね。なかなか寝付くことができずに割と夜遅くまでYouTubeで配信を見ていた記憶があります。みんなは早く寝た方がいいです。
静凛さんのYouTubeチャンネルのヘッダーより拝借。登録者数30万人以上のバーチャルライバーさんです。イラストは鵜飼紗樹さん

キャプチャ

筆記試験当日、朝6-7時くらいに起きてホテルで朝食をいただき、バスで試験会場に向かいました。多少外で待った記憶がありますが、正直この辺は記憶があいまいです。試験会場に入ってまずは受験環境を整えます。(これは模試などでもやっているルーティーンの一つですね)筆記用具を取り出しいつもの状態にセット。今回はそれに加えて飲み物を用意しました。持って行った飲み物は午後の紅茶×2・MAX COFFEE・ドクターペッパーで計2L。紅茶もMAX COFFEEもドクターペッパーも自分が大好きな飲み物たちなので用意していきました。
試験前はあえて数学に関する何かをするわけではなく、確かにじさんじ所属(当時はにじさんじSEEDs所属)バーチャルライバーのシスター・クレアさんの『受験を控えているキミへ』という動画を見ていました。模試の前にも見ていた動画で、ここまで含めて一つのルーティーンだったといえるかもしれません。
試験が始まるとあとはもう問題を解くだけ。思考が止まるとすぐに飲み物に手を伸ばすので試験中は2回か3回くらいトイレに行きました。ただトイレに行くときも思考をリセットするタイミング、その問題がどこまで理解できているのか、どこで止まったのかを整理しながらトイレに行ってました。具体的な各問題に関してはこの後記述します。

(現役特色期の僕を救ってくれた動画の一つ。実は浪人期も同じように動画を見ていたがそれは別の動画なので後編で紹介する。)

とりあえず試験を受け終わり、回収されて会場を出た直後、なぜか解けなかった大問1が閃きました。あんなにわかりやすい問題なのになぜ解けなかったのかを絶望しながらホテルまで歩いた記憶があります。あれがとても簡単だということに気づいた時点で、心のどこかで終わったという感じがしていました。
そのあとの記憶はほとんどありません。ホテルで結果を確認して親や学校に報告したことだけ覚えています。次の日は一応観光したはずなのですがほとんど記憶にありません。それだけ絶望していたのでしょう。

・各大問の感想等
ここからは各大問についてどれくらい解けていたのか、という話をします。ネタバレも含まれますのでこれから平成31年度の過去問を解く方はいったん引用パートが終わるまで読み飛ばすことをお勧めします。問題はここから見れます。(※僕は開示をしていないので点数がわかりません。ご了承ください)

大問1
過去最高レベルで簡単です。多少数学が得意な人なら解法くらいは思いつくでしょう。僕はなぜか一切思いつきませんでした。おそらくこの大問を普通にとれていれば次の日には進めたのではないでしょうか。この日以降、区分求積法を忘れたことはありません。むしろ最近は好きになってきました。

大問2
(1)は誰でも解けるでしょう。(2)が解けなくてかなり時間を費やしてしまった記憶があります。最近勉強してるテーマが関連してるのではないかと2年ぶりに思いました。普通に難しいと思います。

大問3
これは(記憶が正しければ)解けた問題ですね。x_kで2cになることを前提にそこから漸化式をさかのぼっていくことで生成される数列が無限に続いていくことを確認する手順の中で(2)まではすんなりいけると思います。(3)も問題文の式が示しているのはqが正負いずれかの無限大に発散しうるということと同値であることがわかれば戦えるでしょう。ただ、記述があまりうまくいかなかった記憶がありますね。個人的には好きなタイプの問題です。

大問4
(1)は力業で何とかした記憶があります。(2)は時間がなかったのですが、今思えばじつはそこまで難しくないのかなぁという気もしています。記述の書き方も分かりやすいですし、こっちこそ解くべきだったのかもしれません。

・その後の話
親にも言っていませんが、じつはこの後食欲と睡眠欲が1週間ほど立ち消え、初期の自律神経失調と似たような症状に見舞われます。土曜日まで普通に学校があったので昼食を毎日とっていたのにもかかわらず、実家暮らしで1週間で二けた回数食事をしたかどうかというレベルでしたので、かなりやばい状態だったかと思います。そこからの立ち直りも遅くなり、数学に3か月をささげたことで他の科目が間に合わなかったため一般入試も見事に失敗、後期は北海道大学理学部を受験したのですが、(これもまた親に言っていないのですが)試験の集合時間に遅刻し、慌てて試験会場に入って受けたのですがそんな状態ではまともに解けるはずもなく、合格0校という結果で現役を終えることとなりました。

・振り返り
良かったこと
①好きな数学の勉強だったので集中してできたことですかね。対策方法もそこまで間違ってなかったと思います。ほかにも京都大学特色入試を受けた方がインターネット上でブログを書いてたりするので見てみると様々な対策案が載っているので参考にしてみてください。
②テスト前のルーティーンを確立していたこともよかったと思います。筆記用具をセットして、試験監督から声がかかるまでの間に推しの動画を見て、開始一分前から黙想をしつつ推しに祈りをささげて最後に心の中で一言”神のご加護があらんことを”と唱えて試験を解き始める。どんな時もルーティーンに入ってしまえば落ち着くことができましたし、そのルーティーンのおかげで集中して試験に臨めたと思います。

良くなかったこと
①直接的には関係ないのですが、他の科目を捨てたのは合格した今でも間違いだと思っています。特に英語は入学後もバリバリ使いますので、決して苦手だからと言ってあきらめないようにしましょう。合格したとしても、その後絶望的なほど苦労します。
②基礎がおろそかだったといえるでしょう。大問1などは正直すぐに出題背景に気づかなければいけない問題だと思いますが、試験終了まで気づけなかったのは自分の甘えだと反省しました。1問解くのに時間がかかるような難しい問題を解くのもいいですが、きちんと基礎固めも忘れないようにしましょう。

・終わりに
駄文をつらつらとつづってきましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。不合格になったことも今となってはいい思い出、いい経験だったといえるのは1年越しに無事に合格したからでしょう。これから受験を控える皆様はぜひ自分の実力を最大限発揮できるよう頑張って下さい。

p.s.前編と書きましたが、後編を書くかどうかはどれくらいの人に見てもらえるかで考える予定です。書かれなくても苦情は入れないでください。質問や書いてほしい内容の要望等がありましたらコメントかtwitterの質問箱の方によろしくお願いします。また、note自体初心者なのでタグなどでつけた方がよさそうなものがある場合も教えていただけると嬉しいです。


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