【感謝を込めて】演劇観賞④ ペーパーカンパニーゴーストカンパニー

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リアルで立て込んだのとMリーグ開幕で備忘録も滞ってしまい、またまたガチで泡沫ブログが弾けるのを何とか回避すべく、ほぼ雑感・備忘録的に観賞イベントを書き散らかし。

まずは、10月6日から10月10日まで、ここ、

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池袋のシアターKASSAIで上演された、舞台「ペーパーカンパニーゴーストカンパニー」。宇田川美樹さんが、戸籍上の本名である、松本美樹としてプロデュースして、夫である陽一さんが演出を務めた作品で、2002年だかに松本さんが20代後半に書き初演、以来数度の公演を経ている良作という。

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あらすじとしては、
―「タブロイド」紙を発行する新聞社を舞台に、翌日発行の締め切り間際のドタバタの中で、やる気のない主人公の記者の、一年前に亡くなった妻の霊が降臨して、唯一その姿が見える同僚の女性記者と、夫含めてその姿が見えない他の社員達との「すれ違い」でさらに騒動が広がり、救急車を呼ぶまでの事態になる。おまけに社には、過去のある記事が「女性への冒涜だ」と主張して女性権利保護団体が抗議に訪れており、対応にたまたま見学に来ていた、一人の記者の親戚の新聞部の高校生を充てるほどなのだが、当の夫は我関せずと早々と帰り支度で、一年前の姿から変わり果ててしまい、妻は途方に暮れる。

やがて社にはもう一人の老人の霊が降臨して、亡妻とそれぞれの過去を話し出すと、老人はホームレスを続けるうちに公園で凍死したのだが、なぜか呼び寄せられるようにここにやってきたという。生前新聞社には縁もゆかりも無いという老人だが、ひょんなことから彼の名前が、過去の夫が追っていた事件に関わりがあると分かり、妻は同僚女性記者にその事を何とか伝えると、女性記者も、かつては敏腕だった夫記者の変わりようが許せずに追及すると、どうやらその名前は不正会計疑惑のある架空会社の社長の名前であることが、彼の取材ノートから明らかになる。その架空会社と老人の名前に別記者が、今追っている芸能スキャンダルに関連していると反応するが、夫は過去の話を頑なに拒絶。そのノートの日付が妻の亡くなった日ー家電不良による一酸化炭素中毒による事故死ーと分かり、妻は女性記者を介し夫は悪くないと伝えるが、取材にかまけて妻を省みなかった報いだと、その時から事勿れ主義化。さらに女性権利保護団体の記事も、彼が熱く事件を追っていた時に書いたものであり、その追及には、単なる部数伸ばしの興味本位記事だと言い放ち自暴自棄になる。

このまま彼を放っておけない妻は、老人の助力も得て、女性記者のみならず社員すぺての身体を借りて、今そばにいる旨、生前真に愛していた旨、そして不器用な彼とデート変わりに山登りする時に口ずさむ、どこまでも行こう、という歌で励ますと、彼は彼女の存在を認めて改めて救えなかった旨を詫びるなど硬い心を解す。仕事に打ち込むあなたが好きという彼女に押されて、いつしか自らのノートを精査し始め、さらに女性権利保護団体が置いていった新聞の別記事などから、老人の名前が悪用されて、その戸籍を不正に利用したのが件の架空会社の代表で、それが芸能関係者と同一人物だと突き止めて歓声を上げる社員達。局長は直ちに裏取りを命じ、最終版の輪転機を回せ!と叫ぶ。

安心した妻は、先に行きますといい成仏した老人に、私もそちらに行けますと微笑み、翌日版の読書投書欄に少しだけいたずらを残して姿を消す。取材から戻った女性記者が、ふとその投書欄に目をやると、カップラーメンばかりの夫にバランス良い食事を促す妻の願いが載っていた―

という感じの2時間きっかりの作品。

幽霊に対しての発言なのに、それが見えないという設定だから、その発言は傍にいる人に対しての発言となるので、曲席の我々はそこを笑うんだけど、いつもながら、それが不自然にならないようにセリフや立ち位置とかを練っている脚本と演出、そして俳優には、ただただ見事だなあと素人は脱帽してしまいます。どれかひとつが足りないと笑いも涙も比例して最高とはならないところ、素人目にも素晴らしい精度なんだなと思えました。幽霊モノって、全員が見えるパターンと一部の人しか見えないパターンがあるけど、全員が見えないって設定のものは、さすがに面白くならないんだろうが、あったりするのかしら?初稿から数回改訂とのことで、現在の世情にも話を合わせたりはもちろんだろうけど、例えば女性権利保護団体の抗議なんかは、あと10分くらい上演時間が長くなってもいいので、新聞社の本音的な部分をもう少し見てみたかった。もちろんこの作品は、マスコミの在り方みたいなものは主題じゃないけど、本作の新聞社のイメージは東○ポとかゲ○ダイとかで、こうした上下左右からの抗議はしょっちゅうだろう。本作も、多少はそれに辟易してるって感じが取れたけど、権利団体の登場部分が短かったのが、小生にはちょっと足りないって思えたのかもしれないね。

主演の夫妻役。夫の藤堂瞬さんは長身で目が鋭いので、いかにも敏腕記者だっただろうという感じがどうしても強い気がしたので、前半のやる気のない演技も小生には熱く見えたが、感情表した後半はまさに熱くて圧倒させられたね。女性権利保護団体への、売らんがためだ何が悪い、と椅子を蹴飛ばして逆切れするところは、勿論本意ではないんだけど、まさに「自暴自棄」ってこういう表現なんだ、とリアルに思えて怖さすら感じたね。妻の高橋明日香さんは、葉月智子・ちょもの二作品で、それぞれ指導者的演技と、新興宗教教祖の演技と拝見していたけど、今作品では前半実にチャーミングに、そして後半は実に切なく、亡き妻を演じられていたね。女性記者の栞菜さんとのやり取りも双方素晴らしくて、笑いと涙を誘われたね。その栞菜さんは、あいさつで、私はお疲れさまって言われるの、というのは、劇を観ればそれはこちらもそう言うよね。なまじ霊が見えるもんだから、芝居は本当に大変でお疲れさまでしたwww。

ワハハ本舗の佐藤正宏さんや、実年齢は40代なのに嘱託かな?70歳に近い生き字引の整理部員役の水野愛日さん、そして「OYUUGIKAI」で小生気に入ってしまった宇敷浩志さんほか、みなさん素敵な中、3Bjunior出身役者と年代が近い、整理部員役の結城美優さんが、声色をもう少し高い年齢ってことだからかな、枯れるくらいになるほど熱演していて、コメディシーンも若さ溢れてって感じで好演されていたので、この辺の若さでも、ここまでやるってのを見てほしいな。宇田川さん作品も常連とのことで、小生もまた目にする機会も多くなりそうだ。

2021年10月6日から10月10日まで上演。小生は、10月6日初演を観賞しました。

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