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成敗疳の虫

 二子玉川から溝の口まで往復約4.4 Km歩く。五歳の息子には子連れ狼ごとく選択肢はない。抱っこ合図よりも、節目合図は無口とおふざけである。疳の虫になる前逃げて行くからである。GYOU禅合掌!疳の虫は厄介で情報スラム化している論調では無意味である。
 随分と昔の話である。この辺りの営業所から溝の口よりも先、宿河原、登戸、宮前、梶ヶ谷、辺りまで行商人の仕事をしていた。国産物に限定された品々を足袋を履いて売る。沢山のお客様の顔や御縁と路上に起こる物語。蘇る記憶は決して輝くものだけではない。泥だらけの泣きっ面に蜂な笑い噺しも尽きない。帯と足袋により日本人の霊性に繋がると教えてもらったのもこの頃からである。結果20 Km以上毎日歩いた。
 二週間ぶりの人力俥稼業の休みである。左の脹脛と太腿が夜中攣る。息子と対話が路上では途切れない。飲み食いもしない。しょんべんと身体の重さが無用であるからかもしれない。途中に懐かしい場所に止まった。水の流れは綺麗に変化して、鯲(どじょう)に鯰(なまず)に鮒(ふな)、錦鯉が泳いでいた。眺めながら鬼ヤンマまで捕まえた息子の顔と汗は清々しいものである。

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