普段着としての着物の履物、スニーカーも下駄もありではないかと
いつだったか、着物好きな人たちでおしゃべりしていた時に「浴衣にあわせるはきものがなくて・・・」という話になったことがあります。
聞いてみたら「しっくりくる下駄がない」という話だったので、「普段のスニーカーでいいですよ。ゴールドのキラキラのスニーカーとか今日の浴衣にあいますよ。」と勧めたらビックリされたことがあります。その後、実際に試してみてもらったら「いいね」と納得されてましたが。
別に靴屋さんの回し者ではないですが、和装だからといっていつも草履や下駄でないとおかしいわけではないので、お気に入りのスニーカーがあるなら全体のバランスみてあわせてみたらよいと思います。
儀礼的な場で服装の規定がしっかり決まっているようなシーンはさておき、それ以外の普段着のシーンは、はまるものが見つかるまで色々やってみたらいいです。
坂本龍馬(ブーツに袴)や永井荷風(スーツに下駄)などがいい例ですが、明治~昭和初期の日本人はわりと自由に和と洋のアイテムをミックスして使っていました。洋館に屋根だけ寺院のような屋根をかぶせた東京国立博物館の建築などもいい例です。(帝冠様式)
浴衣は下駄じゃなきゃダサイと思って、サイズがあってない下駄や草履を強引にはくよりは、スニーカーでもブーツでも、サイズがあうものをあわせてもらうほうが、ファッションという意味で全体に見た目がよくなることは少なくないと思います。
下駄のサイズ感について
そうそう。令和の呉服屋さんの中には「下駄はかかとを出してはくのがカッコイイです」という美学を紹介している人もいるようです。
ただ、試しに「かかとがはみでるサイズ」のものをはいてみると実際にはかなり歩きにくいと感じ、「これが本当に粋なのか??」と大いに疑問を持ちました。
そこで、着物が普段着だった江戸時代の絵をいくつかリサーチしてみました。
江戸の伊達男の代名詞、歌舞伎の助六の浮世絵、ぴったりしたサイズの下駄をはいているように見えます。
女性の浮世絵も見てみましょう。
女性の浮世絵で足元が見えるものを探してみましたが、こちらもかかとを出してはくスタイルは使っていませんでした。
江戸時代の絵を全てチェックしたわけではありませんが、歌舞伎役者の助六の浮世絵のような今でいう「人気芸能人のブロマイド」のようなものが、ぴったりサイズのものをはいているというのは見逃せない話だと思います。
おそらく「下駄をかかとを出してはく」というのは、「現代の着物を着る人の間で、カッコイイとして採用されることがあるスタイルの1つ」くらいに認識しておいたほうが正確だと思います。
かかとを出すはきかただと違和感がある人は「かかとを出さないほうが、江戸時代の浮世絵のようないい姿になる」というフィーリングに切り替えるほうがよいでしょう。
オシャレの世界は「やせ我慢して身体的に合理的でないことをするのがカッコイイ」という場合も多々あります。なので、かかとを出すのが「ダメ、絶対!」というつもりはありません。
ただ、「それとは違う美しさもあるよ」ということを江戸時代の絵を例に紹介しておきたくなっただけです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?