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【特別公開】≪緊急講義1 ≫ クライムノベルは何を達成できるか?

次代のプロ作家を育てるオンラインサロン"「私」物語化計画"の本編。タイトルは『緊急講義1 クライムノベルは何を達成できるか?』。今回は、28日に登戸駅近くで起きた痛ましい殺傷事件や、最近のさまざまな事件を受けての講義だ。

今週は予定を変更して、クライムノベル(犯罪小説)について考えてみたい。この項目は秋以降に扱う予定にしていたのだが、これは言うまでもなく、5月28日に起きた登戸事件の影響を無視できないからだ。

引用:緊急講義1 クライムノベルは何を達成できるか? 山川健一

Webサイト上にテキストの冒頭部分が特別公開されている。まずは、これををチェックした上で、わたしの感想を読んでいただければと思う。

わたしの感想

今回の講義で取り上げられている事柄は非常に重い。軽々しく「感想」という言葉を使うにはためらいさえ感じる。「クライムノベル(犯罪小説)」についての私見を書いてお茶を濁してもいいのだけれど、あえてそれはやめておく。ぶっちゃけ、このような生々しい事件の後でフィクションについて薄っぺらに語る気にはなれないからだ。

また、事件や、事件の動機といったことに言及するのもやめておく。未だ未確定な情報が多く、ワイドショーでタレントが喋るみたいにアホな面下げて書き連ねるのはとても失礼な話だ。わたしは犯罪心理学の専門家でも透視能力者でもない。一般ピープルとしての種々の感情はあるが、今日現在の時点では事件そのものについては触れないでおく。

テーマは「死刑」。

「死刑」という制度というか言葉を初めて意識したのは中学3年生のときだった。学校で弁論大会みたいな催しがあり、なぜだかわたしがクラス代表として全校生徒が集まる体育館で喋らされた。細かい内容はあまり覚えていないのだけれど、先生たち、世間体を気にしてんじゃねーよバーカみたいな文章だった。

そのとき、別のクラスで、小学校からずっと仲の良かったYくんが「死刑」について話した。Yくんは性格がよくイケメンで秀才で、おまけに妹まで美人という最高のやつだった。たしか、死刑制度反対って話だったのだが、そのとき、さすが頭のいいやつは違うな……と思ったりした。

「犯罪」はなくならない。決して、ゼロにはならない。非常に残念だけれど、それがヒトの性だ。大昔から大なり小なりさまざまな「犯罪」が起きてきた。そして、この文章をPCで叩いている間も世界のあちらこちらで「犯罪」は発生している。

重大な「犯罪」を抑止するために「死刑」が存在する。先進国では死刑制度を廃止している国なども多いが、「死刑」の代わりに終身刑や、寿命をはるかに超えた懲役刑を課している。だが、日本では死刑制度がある。この先、どのように法が変わっていくかはわからないが、現時点で日本の最高刑は「死刑」だ。

登戸事件についてはすぐに様々な意見がネット上にアップされた。僕がいちばん的確だと思ったのは、『「私」物語化計画』の会員でもある作家の寮美千子さんの連続ツイートである。

引用:緊急講義1 クライムノベルは何を達成できるか? 山川健一

連続ツイートについては、ぜひ、上記をクリックして読んでいただきたい。

寮美千子さんは、2014年4月7日に放送された『ビートたけしのTVタックル 死刑制度を考える』で死刑制度反対の立場から意見を述べていた方である。

たしかに、池田小事件の宅間守を例に挙げるまでもなく、自分の人生を自ら降ろしてしまおうと思っている凶悪事件の犯人に「死刑」は無力だ。抑止力にはなっていない。そんなもの犯人にはどうでもいいことだからね。それじゃ、それに代わる抑止力があるのか?なんて話になると思考が行き詰まってしまう。そもそも、絶対になくならない「犯罪」に抑止力が必要なのか?という議論にだって及んでいく。

さて、わたしの感想だ。

「死刑」については反対でも賛成でもない。「死刑」が犯罪の抑止力に成り得るかどうかも、突き詰めていけば正直わからないという意見だ。いや、気持ちかな。被害者感情といった点で語るなら、「死刑」があった方がいいように思う面も多い。ただ、犯罪者を「死刑」によってこの世から抹殺したところで、本当に被害者が救われるのかと問われると答えに詰まる。

校内の弁論大会で「死刑」をテーマにしていたYくん。高校は有数の進学校にいって、現役で東大に入った。今はどこかの機関で牛の研究をしているらしい。

ヒトがつくった法で、ヒトを裁くという行為の難しさはこれからも続いていく。

ヒトって、つくづく、業の深い生き物だな……と思う。


Text:Atsushi Yoshikawa

(注)感想はあくまでも、わたし個人の感想です。決して、"「私」物語化計画"の講義に対する正答や正解ではありません。

#オンラインサロン #私物語化計画 #山川健一 #小説 #クライムノベル

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