【短編小説シリーズ】セラセラハウス 104号室:お見合い
104号室
お見合い
鏡の中にスーツ姿の中年男性が立っている。紺色のスーツにグレーのストライプ柄のネクタイまでつけている。身体は54歳の割にすらっとしている。お腹も出ていない。どちらかというと、細身でしっかりと筋肉がついている方だ。それは、仕事柄、30年以上肉体労働を続けているからでもある。今着ているスーツも10年前のものだが、滅多に着る機会がないので新品のような状態だった。10年前と体格が変わっていないことに、平石正人はほっとした。
しかし、顔だけは10年分肌が黒くなっ