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見えてる色彩が皆同じとは限らない 3話【note創作大賞2024|漫画原作部門】

【第一話】

【第二話】

【本編】
 絵の製作は捗ってきて、もうすぐで着色かなーなんて考えながら根気強く進めていた。

「私の過去の話なんだけど」
 お互いに作業中ということもあり、作業用BGMのように聞いてもらおうと切り出しにくい事を切り出そうとした。

「志帆ちゃんが話したくなったらで良いのに」
 睦月くんは、優しい声色で言ってくれた。

「睦月くんなら、話してもいいかなって」
 そう思えたのは、思っている以上に、信頼してしまっているからだろうか。

「小学生の頃なんだけど、昔からこんな絵で」

「同じように似顔絵描くってテーマがあってね」

 『志帆ちゃん、一緒に描こう?』と誘ってくれた子がいて、『けど私、絵下手だし』って一回は断ったんだけど、半ば強引にペア組む事になっちゃって。
相手の子が『私、こんな顔じゃないのに』って大泣きしちゃって、そこから大問題に発展して……先生とか、PTAとか色んな大人が入ってきたりして、孤立したり。

なんてことを、洗いざらい睦月くんに話した。

「そっか……。大変、だったよね。僕も、他人に色々言われてたから気持ちは少しわかるかも」

 睦月くんの言葉には、少し驚いてしまった。

「睦月くんも?」

「そうだね。気持ち悪いとかも言われたし、なんで皆と違う色使うの?とかも言われたかな」
 告げる彼の表情は、少し淋しげだった。彼の描く線や色遣いは、綺麗なのに。

「私は……睦月くんの描く絵、綺麗だと思うよ。それに私は、睦月くんのおかげで美術を選択したよ」
 正直に、目を見て、真っ直ぐ伝えることにした。

「今は、言われたりしてないから大丈夫。梛戸先生や志帆ちゃんのように、褒めてくれる人はいるし」

「……睦月くんって、友達とかいる?」
 失礼なのは重々承知しているが、先生と私の名前しか出てこなかったので尋ねてしまった。

「まぁ、それなりには居るかな。中学の時はプロの絵を見たり、自分で描いたりして美術ばっかりでほとんど居なかったけどね」

「志帆ちゃんが、俺の友達一号って事でいい?」
 こちらを見つめてくる目は、逸らせなかった。

「え……でも、親しくなったの最近だし」

「ほら、一年生の頃『早川さんは、綺麗な絵を描くんだね』って声掛けてくれたでしょ?」
 確かにそんな事も合ったかもしれない。けれど、そんな一言で友達になっていたとは思えない。

「けど、あんな一言……」
 思っていた事をそのまま口に出す。

「一言でも、俺は救われたから。今こうして友達なんだし、ダメかな?」

「じゃあ……それで!」
 照れ隠しとして、私は口元を隠した。


【表紙画像はCanvaで作成いたしました。】

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