第1章

「今日はArizona Primeで何みよっかな〜、、やっぱ海外ドラマの続きかな」

もうとっくに日は落ち、夜が更けるこの時間に隣の部屋に帰ってくるこの男は毎日同じセリフを言っている。

Arizona Primeとはなんだ?

こんな風に外の世界の情報を少しずつ仕入れている気になっているが、この16日間、本質的なことは何もわからない。

「「公園」があったということは「自然」があるのか?」

そればかりが気になっているのに、それを教えてくれるものはここには何もない。

「16日目」の食事を食べ終えようとしていた。今日の献立は「サバの味噌煮」と書いてある。控えめに言っても美味しい。なんとも言えない優しい甘さ、ホロホロと口の中で溶けるこの食感、たまらない。

ここに来てから16日間いろいろなことを試した。当たり前だが、この移住スペースから外に出ようと試みたこともある。でも、ドアや窓はびくともしない。頭にきて窓には1度ドロップキックをかましてやった。

16日間毎日行っていることがある、いつも変わらず行っているとそれは習慣になる。やることがある、というのは意外と精神安定に重要で、おかげで16日間ノイローゼにならずに済んだ。

今日も1個ずつやっていこう。

まずは食事、これは終えた。

次にストレッチ、これはここに来る前からの習慣でありとあらゆる体の部位を入念に伸ばしていく。気持ちいいし、身体が軽くなる。

窓のカーテンを開けて日光浴、これはここに来てから気がついたことだけど目を瞑って日光浴をしているだけで、身体中の力が抜け、光に包まれていることを実感できる。気持ち良さ的にはストレッチといい勝負。

ここに来てからめっきり会話が減ったため、自分と会話することにした。1日必ず3時間、会話が盛り上がった時には5時間くらい話す。

ぼくって意外と無神経だってことを知った。

それからもう1つ、毎日やってることがある。

窓にはもう触る気も起きないんだけど、ドアのぶを回すこと。

最初の3日、4日は期待もしてた。7日目を過ぎたあたりから、ただの日課になった。今ではただの習慣で、なんの期待もない。ただ、やらないとなんか気持ち悪いだけ、、。

そもそもドアのぶを回すことに期待するなんてどうかしてる。ドアは開いて当然、それがそもそもの存在意義なんだから。開かないドアって、、壁じゃん。

今日も昨日と同じようにドアのぶを掴み、回す。別にいつもと同じこと、

すると突然、大きな穴が地面に開いた。

「え、そっち?」


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