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職業写真家の仕事って?

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写真にまつわるエトセトラ、仕事のことなど。
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現代の装備は身軽

ストームチェイサーの装備というと、ドップラーレーダーをはじめとする大掛かりな観測機器を用いて追跡を行うイメージがありますが、それは映画ツイスターが公開された約30年前の話で、ガチな研究者が使う装備です。現代の装備は実に身軽で、スマートフォンに複数のアプリを入れるだけです。今どきのスマホはちょっと前のPCを上回る性能がありますし、気象観測系のアプリも有料無料を含めて多くのものが世に出回っています。 装備に関してはかなりの誤解があるようで、取材の際など何か特殊な機器を用いている

好きを仕事にすると…

全てはここから始まりました。2008年、今から15年前の夏の夜、外では稲妻が夜空を照らしていました。部屋の窓からカメラを構え、タイミングを測ってシャッターを切る、ありゃ、1枚目で写ってしまったぞ。それまでも写真の心得はあったけど、雷は狙って撮れるものではないと思っていました。そうか!狙って撮れるんだ!そう思ったのがそもそもの始まり。 しかし、2枚目以降が続かない。撮れたと思ってプレビューを見ると写っているのはただの夜空。そこから戦いが始まります。撮影方法をあれこれ試し、動体

未公開作品

ビジネスとして写真を撮影していると、何らかの理由で一定期間写真を公開できないことがあります。それらの写真はフォルダに入れてストレージに保存しておくわけですが、そのまま忘れて数年が経過していることも珍しくありません。そんな写真を見つけては、SNSで公開しています。 本日公開した4枚の作品は、いずれも一触即発な状況です。ストームチェイサー的にはAランクに入る写真です。Webで公開するなんて勿体ないという人もいますが、私的にはお蔵入りしたまま人目につかない方が勿体ないと思っていま

関東大雷雨を追う

2022年6月2日から3日にかけて、東北から関東の広い範囲で雷雨になりました。2日には埼玉県北部や群馬県南部でピンポン玉大の雹が降り、大規模な雹害が発生しました。3日には上空の寒気が南下して、南関東でも雹が降るなど大荒れの天気になりました。 基本情報として、積乱雲から降る氷粒の直径5mm以下のものを霰(あられ)、5mm以上のものを雹(ひょう)と呼びます。日本で降る雹のサイズは1~2cmのものが多いですが、今回は5cm以上のものも確認されていて、落下時にはかなりの衝撃だと思わ

脱却

昨年から俳句や短歌の活動をしている方々の依頼で、撮影を請け負っています。句や歌のイメージに合わせて撮影を行い、写真に文字を載せてプリントしたものを納品するという仕事です。荒天撮影のシーズンオフには色々なジャンルの撮影を請け負いますが、今回はその中でも特殊だと言えますね。 俳句や短歌は私にとって全く未知の世界、完全にゼロからのスタートです。そんな感じですから、撮影前にはどんなイメージで句を読んだのか、世間話も絡めて色々とお話を聞くことにしています。直球で来ることもあれば、変化

コロナ禍の活動2021

2020年から続くコロナ禍ですが、2021年12月現在、新規感染者も少なく落ち着いています。とはいえ、新たな変異株も確認されて、まだまだ予断を許さない状況ですが、少しづつ撮影の仕事も戻りつつあります。9月中旬までに二度のワクチン接種も終わり、マスク装着や手洗いの徹底と合わせて、感染予防には気を使っています。 正直、収入面ではかなり厳しいシーズンでした。最盛期に緊急事態宣言が発令されて、決まっていた仕事も全てキャンセル、または延期になってしまいました。当てにしていた収入が絶た

ジャンルの垣根

私は肩書に「写真家・ストームチェイサー」と記しています。その意味をたまに聞かれますが、根底にあるのは写真家、写真が生活の大部分を占めていて、作品を販売したり依頼撮影をこなして収入を得る人のことです。ストームチェイサーとしての活動はあくまで季節限定で、暖候期に限られます。その中でも最盛期は7月から9月、1年の1/4でしかないんです。残りの3/4は何をしているかと言われたら、依頼された仕事を中心に、仕事がない時はアルバイトもします。そんな感じで生活は常にギリギリなのです。 ここ

写真は良薬か劇薬か

写真には良薬と劇薬の二面性があるから面白いのです。常にスポットライトを浴びる良薬と、使用目的が限られる劇薬、私の写真は劇薬寄りですね、人によっては不快感を示すこともありますし、常に不謹慎という言葉の標的にされています。だからといって長い年月をかけて築いた作風を変えるつもりはありませんし、今後もこの作風を昇華していくつもりです。 ではどんな写真が良薬で劇薬なのか、誰が見ても綺麗とか可愛いと思える、見る人が癒やされる写真は間違いなく良薬でしょう。逆に、見た人が考える写真は劇薬か

40代で写真家に転身した話~其の3

写真家にとって、写真は作品であり、商品でもあります。写真に値段が付いてなんぼです。自分の撮る写真に正当な評価が付いているのだろうか?そんなことを考え始めた時期でもあります。仕事はそこそこ順調、でも収入は増えない、相変わらずアルバイトとの掛け持ちです。気象現象のビジュアル化に関しては、それなりに貢献しているはず。研究機関にも提供して論文にも掲載されています。そんな2018年頃からは、目に見えない敵との戦いが始まったような気がします。 この年は2年連続で、埼玉県防災学習センター

40代で写真家に転身した話~其の2

2013年からの続きです。信頼を得るための補足ですが、プロとして活動をするなら、Web上でも顔は出したほうが信頼されます。プロを名乗っていながら、顔出しNG、実名NGな人も見かけますが、顔も名前もわからないような人と仕事したいと思いますか?私なら嫌です。 さて、自分にとっては青天の霹靂でのあった情熱大陸からのオファー、すでにシーズン終盤に差し掛かっていたため、本格的な取材は2014年シーズンに持ち越しになりました。そして2013年シーズンの終盤、ダウンバースト発生の瞬間を動

40代で写真家に転身した話~其の1

世の中に写真家になりたいと思っている人が沢山いることは知っています。あくまで自称の世界ですから、自身で宣言すれば写真家になることは出来ます。ただ、それを生業にしようと思うと話が変わります。特に今の状況、長く続く出版不況にコロナ禍、カメラの販売不振もあって、これから写真家になろうとしても、入り口に立つことすら難しいでしょう…何か急浮上するようなきっかけがあればいいのですが。 業界の定説として、30代半ばが写真家としてのピークと言われています。それまでに実績を作っておかないと成

プロが教える雷撮影の基本

夜間にバルブで雷を撮影する方法の解説動画を公開しています。カメラの設定から、シャッター開閉のタイミングまで、基本を解説しています。これから雷が発生しやすい時期になりますので、興味のある方は、是非チャレンジしてみてください。 動画の補足です。電子シャッターはローリングシャッター現象が出るので雷撮影には不向きです。画面に明暗差が出てしまい、使い物になりません。他、アンブレラホルダーを三脚に装着するのは危険です。風に煽られて転倒、地面に叩きつけられたカメラはバラバラになります。

実態のないものを追う執念

昨日は関東地方でも春雷が轟きましたが、雷を撮影する難しさのひとつに、落ちてみないとどこに落ちるのかわからないことがあげられます。特に低気圧や前線周辺での落雷は広範囲に散らばり、落雷の場所を特定するのは至難の業です。これが熱雷のような局地的なものであれば、多少は的を絞りやすくなりますが、それでも構図の中に収めることは容易ではありません。 この作品は、2019年5月に開催された写真展「荒ぶる空」で発表した作品「筑波とらいさま」です(2017年撮影)。らいさまとは、茨城県・栃木県

写真屋は技術屋だ

父親が良く言っていた言葉です。私の実家は祖父の代からの写真屋でした。早い時期からDPEの自家処理を初めて、カラー現像が出来ることが自慢でした。当時は作業工程の全てがアナログ、温度管理が腕の見せ所と言われた、昭和40年代の話です。 自宅には暗室や作業場があり、忙しい時には家族総出で作業するような家族経営の店でした。思い出は色々ありますが、印画紙の切れ端をもらって日光写真で遊んだり、期限切れのフィルムで家族を撮影した記憶が鮮明に残っています。小学校の遠足の時などは、スナップ撮影