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天気にまつわるエトセトラ

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天気と文化、地域に伝わる伝承のまとめです。
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ディープな積乱雲の世界

白くて大きくてモコモコした雲、それが雲の王様「積乱雲」です。十種雲形・下層雲のひとつで、激しい雷雨や突風を発生させることもあるため雷雲とも呼ばれます。遠くから見ている分には雄大で、写真の被写体としても人気がある雲です。 積乱雲の発生条件はズバリ強い上昇気流です。上空に寒気が入ったり日射による地上の昇温など、上空と地上の気温差が大きい時や、前線や低気圧の周辺などに発生します。天気予報で使われる「大気の状態が不安定」がキーワードになります。短時間に急発達するため、大きな雲だな~

+の落雷 -の落雷

3月30日~4月3日頃は第十二侯「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」です。季節の変わり目は天気が変わりやすく、雷が鳴りだす時期です。先日(3月20日)は関東地方でも春雷が轟きました。 雷とひと口に言っても、地上に落ちる対地放電、雲から雲へ飛ぶ雲放電、雲の中で光る幕電など、色々な種類に分類されています。そのなかで落雷と呼ばれるのは対地放電で、雲と地面(地上物)の間に起こる放電です。落雷の中にも正極性落雷(+)と負極性落雷(-)がありますが、関東付近でよく見られるのは積

青天の霹靂

青天の霹靂(せいてんのへきれき)という言葉をご存知でしょうか?突発的な大事件など、予想もしていなかったことが起こることを意味する言葉です。元になっているのは雷で、青く晴れた空に突然起こる雷の意味から、上記ような例えとして使われるようになりました。英語でも同じ意味を持つ言葉があり、Bolt from the Blue を日本語訳すると青天の霹靂になります。似たものに、Out of the Blue がありますが、こちらは突然や予想外を意味する言葉です。 雷の発生には積乱雲が必

ゲリラ豪雨の正体って何?

私の住む地域は地震や雷が多く、特に夏場の雷雨は生活の一部になっています。雷害や雹害が多く、これらに対して保険を掛けている人も多い土地柄です。逆にあまりに多いため、慣れもあって気にしない人が多いですね。そこで、突発的に発生する雷雨「ゲリラ豪雨」の正体に迫ってみたいと思います。こちらの投稿はYouTubeとの連動企画になります。 近年、定着した感があるゲリラ豪雨という言葉ですが、ゲリラ豪雨の正体とは何なのでしょうか?まず初めに、ゲリラ豪雨は正式な気象用語ではなく、突発的に発生す

北関東のライサマ大暴れ

7月10日から13日にかけて北関東では激しい雷雨にみまわれ、4日間全てに突風被害が発生しました。12日を除く3日間積乱雲を追って出動していましたが、いくつもの積乱雲が次々にわいてくるような状況で、竜巻注意情報を知らせる防災無線が鳴り響く中で撮影を行いました。余談ですが12日は不覚にも午前中に熱中症になってしまい、午後になっても体調不良が続き出動することが出来ませんでした。 7月10日レポート 7月10日、午後になると北関東の山沿いで次々に積乱雲が発生、夕方になると平野部

清涼殿落雷事件

6/26日は雷記念日です。なんとなく気象に関係がありそうな記念日に思えますが、中身は政治的な策略がドロドロと渦巻く事件があった日です。 延長8年6月26日(830年)平安京の清涼殿に落雷があり、大納言の藤原清貫が死亡します。他にも多数の死傷者が出て大混乱になったそうです。この落雷が政治的策略で大宰府に左遷された菅原道真の怨霊が雷神を操って起こしたものと噂が流れて、のちに道真が神格化されたという事件です。 藤原時平の策略により大宰府に左遷された菅原道真は、名誉を回復できぬま

ディープなアーチ雲の世界

以前は一部の人にしか知られていなかったアーチ雲ですが、ここ10年ほどで多くに人に知られたように思います。アーチ雲は積乱雲の周囲にできる帯状の雲で、積乱雲から吹き下ろす冷気と周囲の暖気との境目(前線)が可視化した雲です。 積乱雲の発達がピークをむかえると、上昇気流が弱まり下降気流が優勢になります。上昇気流の支えがなくなることで、雲の内部で上下動を繰り返していた雨粒や雹が冷気と一緒に勢いよく地上に下降してきます(ダウンバースト)。地上に衝突した冷気は四方に広がり、周囲の暖気と衝

春雷轟く

いよいよ2023年のストームチェイスシーズンが始まりました。季節の変わり目には度々嵐がやって来ます。上空には真冬の寒気、地上付近には暖かく湿った空気、温度差が対流を生み、上昇気流となって積乱雲が発達します。 約3年続いたコロナ禍も表向きは収束して、自由に動き回れるようになりました。うまい具合に今シーズンはスタートダッシュをかけることが出来て、上々の滑り出しといった感じです。3月の終わりから4月の中旬までに何度かのチャンスがあり、それぞれ満足のいく結果が得られました。 とは

霧はフォトジェニック

晩秋から初冬にかけて、霧を好んで撮影しています。紅葉の時期が終盤に差し掛かると朝晩の気温が一桁台まで下がり、霧の発生が多くなります。霧は見慣れた風景を一変させて、余計なものを隠してくれる、写真撮影の強い味方になります。 霧と靄(もや)の違いは視程範囲の広さで、現象としては同じ空気中の水蒸気が飽和状態になって漂っているものです。地上に居ながらにして手が届く雲と考えていいと思います。夜間の冷え込み(放射冷却)、適度な湿気、無風または微風、この3つが重なると発生の可能性が高くなり

ラピュタは嵐の中にいる

映画、天空の城ラピュタの名場面の一つで、竜の巣の中をワイヤーの切れたグライダーで彷徨いながら、パズーとシータがラピュタに到達するシーンが印象的でした。公開されたのが1986年ですから、2022年現在で36年前の作品になります。いつの頃からか、積乱雲の代名詞として「ラピュタ」や「竜の巣」が使われるようになりました。実際に積乱雲を見ていると、上昇気流に乗って上へ上へと発達していく様子はまさに竜の巣、ラピュタは本当にあったんだ!と思ってしまいます。 ヘッダー画像はスタジオジブリか

突風は竜巻だけじゃない

5月下旬から6月中旬にかけて、上空寒気の影響で関東地方の各地で荒れ模様でした。季節の変わり目には天気が荒れますが、今年は特に激しかったように感じます。5月27日には群馬県南部の太田市、邑楽郡邑楽町、邑楽郡千代田町、邑楽郡明和町、館林市で現象区別不明の突風が、同27日に茨城県筑西市でダウンバーストまたはガストフロントによる突風が発生しています。大粒の雹による被害が多発した6月2日には、埼玉県北部の深谷市、大里郡寄居町でダウンバーストまたはガストフロントによる突風が発生しています

雷撮影は情報戦

雷撮影に必要なスキルを割合で示すと、情報収集と土地勘が7割、気象の知識が2割、撮影技術が1割といったところでしょうか。撮影技術は続ける間に自然に身に付くのでそれほど重要ではありません。気象の知識は積乱雲が発生する条件や雷の特性がわかっていれば十分です。 そして最も重要なのが情報収集と土地勘(土地勘も情報のカテゴリ)です。積乱雲の発生には色々な条件がありますが、鍵となるのは上空の寒気です。上空の寒気の状況を知るためには地上天気図ではNG、もっと高いところの天気図が必要です。7

技法の確立

私にとっての最重要年は2008年です。前年の2007年から雷の撮影をはじめて、当時はどう撮ったらいいのかもわからず、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる的に撮影していたものです。今見ても下手クソだな~と思うような写真ばかりで、この頃の写真は全て封印しています(笑)。 そして2008年7月、部屋から雷が光る様子を眺めながら、タイミングを図ってシャッターを切ったところ、奇跡的に写ってしまったのです。恥ずかしながら、それまで雷を狙って撮影するという観念はありませんでした。偶然撮れたらラッキ

SNSで拡散される天気の誤認識

天気に関して間違った認識のまま世間に広がっているものがいくつもあります。特にSNSでは間違った認識が訂正されずに拡散する傾向があり、気象関係の方々が苦労されている姿を度々目にします。 台風から変わった温帯低気圧今日現在台風14号が東進中であり、タイムリーな誤認識です。一般的に台風が温帯低気圧に変わると弱体化したと勘違いしている人が多いですが、それは大きな間違いです。単に性質が変わっただけで、危険なことに変わりありません。台風は中心付近で風が強く、内側にパワーを溜め込んでいる