見出し画像

【夢日記】青い夜

大学生くらいの若い女性二人と飲んでいる。

ここは二人のうちどちらかの女性の部屋である。ぼくは二人とは仲の良い友人なのだが、誰だったか、不思議とモウひとつ思い出すことができない。

ぼくは部屋にあるリキュウルや果実なぞを材料にして、彼女たちにコクテイルをせっせとこしらえている。

青のリキュウルを入れたロングのコクテイルが出来上がったので、一方に渡す。

「ありがとう」

そう云って彼女は酒を受け取り少しずつ飲んでいく。
けれども、その様子がドウモおかしいのである。

青いリップスティックの塗られた彼女の口から、長い髪の毛がつうっと出てくる。

魚の骨でも取り出すみたようにして、そのまた青いマニキュアの奇麗に塗られた指で以て平然と髪の毛を口から取り出しながら、この部屋の主であるらしい彼女は青いコクテイルを飲みつづけている。

雑然とした部屋。

隅の方には、彼女の脱ぎ捨てた衣服が乱雑に積み上がっている。
見れば、麦酒の空き缶の潰れたのが散乱している。
小さなテーブルの上には、熟れ過ぎた果実がじゅくじゅくとしている。
そのまた熟れた果実には大きな青い蝶が止まって、翅をひらひらとさせている。

廃墟。

なぜこんなところに彼女は住んでいるのか。
違和感があるにはちがいない。

それでもぼくはモウ一杯、ただ青いコクテイルをつくる。
隣に座っている女の為に。

ぼくは青い酒を他方の女に差し出す。

「あたしは、要らない」

怯えるような目で青い酒を断る彼女を見て、急に了解する。
嗚呼、貴女だったか。

それならば、この盃はぼくが乾すことにしよう。

ぼくはむせ返る。
甘い。
熟れすぎて発酵の始まったような芳香がツンと鼻につく。

それだけではない。口内に異物/遺物がある。

それは長くて黒い髪の毛だ。引いても引いても、ぼくの口腔から髪の毛が出てくる。

ぼくはウッと云って、吐き出そうとするけれども、どこまでもどこまでも、髪の毛は際限なくぼくのなかからスルスルと出てくる。

アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ…

眼前の、一人目の女が口の端に黒い髪の毛を垂らしながら嗤う。
モウ一人は、不審のまなざしでぼくを見ている。
彼女らの姿がぼおっと涙に滲む。



…というところで目が醒めた。

ようやく意を決して正直に体調不良を会社に申し出て、医師による診察や検査の結果を伝えたところ、勤務が多少軽減された。プライベートの時間が皆無だった少し前に比べれば、こんなふうにやっと文章を書く時間はできたけれども、矢張り体力はついていかない。

すぐそこに迫る次年度への不安は、あの夢のなかの青い色となにか関係があるのだろうか。兎に角、心休まらない年度末である。

夜な夜な文字の海に漕ぎ出すための船賃に活用させていただきます。そしてきっと船旅で得たものを、またここにご披露いたしましょう。