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【夢日記】となりの客

バーのカウンターで独り飲んでいる。軽くて、安っぽいワインの味。まわりの客が盛り上がっているのか、バーテンダーの声が聞こえづらい。

ふと、となりの客に話しかけられた。三人連れの女性たちのようだ。年の頃は三十くらいだろうか。

「ゲソにはマヨネーズをつけるんですか」
「え?」
「ゲソってマヨネーズつけるとおいしいですよね」
「はあ、まあ、そうかもしれないですね」

手前の女性がよくわからないことを言ってくるので、いい加減に応じる。するといちばん奥の女性が興味をもったのか、さらに話しかけてくる。

「えーすごーい、お兄さん日本語わかるんですね」
「いや、まあ」

すると、スキンヘッドで大柄のバーテンダーが訳知り顔で、
「そうなんですよ、この方、日本語何でもわかるみたいなんですよ」
軽い斜視なのか、目の焦点が合っていないように見える。

そのあとも手前と奥の女性とよくわからない会話をつづけていたのだが、真ん中の女性は押し黙ったまま、乾き物をぽりぽりとつまみながら、ハイボールらしきものを流し込んでいる。

…待て。どうしてこんなにやかましいのに、そんな音まで聞こえてくるんだろう。疑問があたまをよぎった。

真ん中の女性はあいかわらずぽりぽりと良い音をたてながら乾き物を食べている。そのとき、小皿に載ったものが目に入った。銀色にピカピカ光るネジが皿いっぱいに盛り付けられていた。

真ん中の女性がこちらを向く。



寒いクルマのなかで目が覚めた。どうやら前日の仕事で疲れて、クルマのなかで眠り込んでしまったものらしい。大きなくしゃみをひとつしてから、ぼくは凍え切った体を自宅まで引きずっていった。

夜な夜な文字の海に漕ぎ出すための船賃に活用させていただきます。そしてきっと船旅で得たものを、またここにご披露いたしましょう。