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【夢日記】マスクをしろ
車を運転していた。ここ最近にしては珍しくあたたかい日で、むしろ暑いくらいだったから、運転席と助手席の窓を両方とも開けて運転していた。バス停らしきところで信号が変わって、車を停める。
すると歩道を歩いていた男がつかつかと歩み寄ってきて、
「おい、おまえ、マスクをしてないだろ」
確かに、車のなかだったのでマスクはしていない。
「マスクをしろ!」
と云って、男は手に持っていたスプレー缶をかちゃかちゃいわせながら縦に振った。しゅーっという音を立てて、フロントガラスにそれを吹きかける。見る間にフロントガラスには白い塗料がべっとりとついて、前がほとんど見えなくなった。
「ちょっと!なにするんですか」
「うるさい。おまえみたいなやつがいるから、いつまで経っても感染がおさまらないんだ」
いつのまにか運転席側にまわりこんだ男がハンドルに手を伸ばしてきたので、前は見えないものの、反射的にぼくはアクセルを踏み込んだ。
しかし、前が見えないので、ぶつかりそうで恐ろしい。ふいに、男が窓から差し入れた手でぐいとハンドルを右に切った。見えないが反対車線に出てしまったようだ。けたたましいクラクションの音が聞こえ、パッシングされているのか、白い汚れの隙間からライトらしきものも見える。
どすん、という鈍い衝撃を感じたときに、ふとぼくは目を開いた。夕刻。どうやら疲れていて、ソファの上で眠り込んでしまったらしい。
夜な夜な文字の海に漕ぎ出すための船賃に活用させていただきます。そしてきっと船旅で得たものを、またここにご披露いたしましょう。