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【夢日記】脂肪の塊

ぼくは布団に寝ている。

最近はめっきりと秋めいてきて寒くなってきているので、寝床には何枚も毛布が置かれている。ぼくは寝ぼけまなこであったけれども、なにか、違和感を覚えて目を覚ます。

自分の右側になにかがある。

物ではなく、人間のからだのようである(我が家にネコなどは飼っていないので、人間以外の可能性はない)。九つになる娘かと思ったけれども、明らかにちがう。

なにか厭な気分がしたから、ひとつ寝返りをうって左側を向こうと思う。
しかしながら、ぼくの体はいっかな左を向くことはできない。

どうしてか。

それは、ぼくの右側にあるらしい、人間のからだのようなものが、ぼくの腹だったからである。それは信じられないくらいに肥大した腹の肉だ。脂肪がまるで鞠みたような塊となって、仰向けのぼくの傍にある。それはひどく重くて、寝返りをうつつもりで左を向こうとするぼくを引き留めて、きりきりと痛む。

それには脂だの、アルコオルだの、煙草のヤニだの、同僚や知人への罵詈雑言だの、およそ考えられうる限りの体に悪いものがみんな這入っているように感ぜられる。

嗚呼、これでは起き上がることさえできないじゃないか。

然し、いまの職場に移ってから、ぼくは優に十瓩程も目方が減ったのじゃなかったかしらん。ハテ、おかしいな…

……

…と思っているうちに、目が覚めた。

どうも最近は夢のなかでいっぺん目を覚ましてから、モウ一度本当に目を覚ますことが多いようである。でも、本当にいま「起きている」と思っているこの世界は現実なのかしら、と疑う気持ちがないわけでもない。

夜な夜な文字の海に漕ぎ出すための船賃に活用させていただきます。そしてきっと船旅で得たものを、またここにご披露いたしましょう。