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「譜読み」の仕方について

即興演奏など特殊な場合を除いて、どんな曲の演奏にも必ず行う譜読み。譜読みは、身近すぎるためにあまり深く考えたことのない人もいるかもしれませんが、プロ奏者ほど決して疎かにしない、とても大事な作業の一つです。

■ 「譜読み」と「練習」は違う?
楽譜は、舞台やお芝居で例えるならば、その台本といえます。役者がお芝居(表現)をするためには、その物語の内容をあらかじめしっかり把握しておくことはもちろん、自分のセリフや動作の意味、感情などを捉えておかなければなりません。そのため、台本を精読することが常に求められるといいます。
この「台本読み」が、音楽では「譜読み」となるわけです。つまり、譜読みとは「自分の楽譜の内容をしっかり読み解く作業」、あるいは「練習に向けて、不明な点やできない部分をしっかり解決しておく作業」ともいえるでしょう。
一方、「練習」は、「譜読み」を踏まえて演奏の精度を高めていく作業を指します。譜読みと同じ意味に捉えてしまいがちですが、その意味も目的もまったく別のものなのですね。

■ 音符の前に、文字や記号をチェック!
「いざ譜読みをしよう!」となったとき、リズムなど音符の確認から始める人も多いかもしれません。しかし、先に記号や文字情報などを確認しておくのがオススメです!
楽譜には、音符の他にも音部記号、調号、拍子記号、臨時記号などの記号類、「Allegro」などの速度記号や「con sord.」などの演奏指示といった文字情報もたくさん書き込まれています。これらを先に把握しておくことで、そのあとに行うリズムや音の確認をより内容あるものにすることができるのです。
とくに、D.C.(ダ・カーポ)やCoda(コーダ)といった反復記号類、転調時に表記される調号、フェルマータ、sub.pなど、演奏していて即座には対応しにくいものをチェックしておくとよいでしょう。また、意味のわからない音楽用語もこのときに調べておき、忘れないように楽譜に書き込んでおくことも忘れずに!

■ いよいよ、リズムと音の確認を
記号や文字情報の確認ができたら、楽譜に書かれた音符を譜読みします。さまざまなやり方・順序がありますが、今回はリズムから先に把握する形で考えてみましょう。
1. 最初は、足でテンポを取りながら手拍子する(または、簡単に歌ってみる)などして、正確にリズムが刻めるかを確認します。このときのテンポは、楽譜に指示されているものではなく、それよりもゆっくりしたテンポ、もしくは自分の歌いやすいテンポにするのがポイントです。
2. 次に、音を確認していきましょう。まずは、楽譜にあるテンポもリズムも無視して、自分の楽譜の音を最初から最後までなんとなく歌ってみます。最後まで歌えたら、今度は運指をイメージしながら(実際に指や腕を動かしながら)もう一度最初から最後まで歌ってみましょう
3. ここまでうまくいったら、1. と 2. を合体する要領で、指示通りのテンポで強弱やニュアンスも踏まえながら楽譜通りに歌ってみます(可能なら、運指も動かしながら歌えるとよいでしょう!)。こうすることで、楽譜に書かれた音を体にしっかり馴染ませることができます。
4. それでは、いよいよ楽器で音を出してみましょう!最初は、やはり指定よりもゆっくりしたテンポでさらってみるのがよいでしょう。うまくいかない箇所は、テンポやリズムにこだわらず、一つ一つゆっくり丁寧に確認していきます

■ より深い演奏表現のために
演奏をより深いものにするために、譜読みの際には以下の点についてもチェックしてみましょう。

・曲中で、一番大きい(小さい)音を出す部分はどこか
・楽譜に書かれているフレーズは、どの楽器と一緒か
・作曲者は、いつの時代の、どこの国の人か

また、譜読みをしている曲の録音がある場合は、それを練習の前に聴いておくことも大変有効です。
「譜読み」と文字だけを見れば、「楽譜を読んでおけばいいだけ」と思ってしまいそうですが、実際のところは演奏に際して必要なことを念入りに準備するという、とても大事な作業なのですね。
 また譜読みは、人の数だけやり方があるともいえます。今回ご紹介した方法もご参考に、是非自分にとって一番やりやすい譜読みを探してみてはいかがでしょうか。

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