見出し画像

【第3章】8時間をどう生かすか

1.職場とはどんなところか

あなたが、働いている職場とは、どんなところでしょうか。
『8時間しばられて労働するところ、その代償として、生活をしていくための給料を、もらうところ』と、考えている人がいます。
もし、あなたが、このように考えているとしたら、あなた自身が、楽しい人間生活を、振り捨ててしまうことになります。
あなたが、長い学生生活で学んだことは、会社や工場に入るための、資格をとるだけでは、なかったはずです。
また、あなたの両親や、あなた自身が、健康に注意して、働きにたえる身体を、つくってきたことは、月給生活を長く続けたいからというだけでは、なかったはずです。

職場は、「8時間しばられて労働するところ」と、考えてごらんなさい。毎日の生活が、身をけずりとられるような思いで、なんの楽しみも、味わいもないところに、なってしまいます。
学業も健康も、社会のために、大いに活躍する原動力ではありませんか、いよいよ勉強を積み重ね、健康に注意しようではありませんか。
職場は、あなたがもっている全能力を、十分に働かす最良の場と、考えましょう。
運動選手なら、グランドであり、フィールドという、晴れの場所であるからです。
また、給料は、労働の代償として、生活をしていくための給料と考えたら、それこそ人に追い使われながら、生きていくための飼料を、餌箱に投げこまれている、馬や牛の働きと、少しもかわるところが、なくなってしまいます。
わたくしたちは、もっと、人間である自分自身に、誇りをもたなくてはいけません。給料は、労働の切り売りの代価ではないのです。
あなたが、職場を通じて、社会公共のお役に立った、いいかえると、多くの人々に、喜びを与えた報酬なのです。
人間の生活の中には、衣・食・住のたのしみ、興楽や趣味の楽しみなど…がありますが、多くの人々のために、役に立つことができた楽しみ、多くの人々に喜んでもらう楽しみ、これが、最高の楽しみではないでしょうか。
会社や工場に働いているあなたは、職場を通して、多くの人々に、喜びを与えていることになるのです。

2.心身のコントロール

あなたが、職場で、あなたのもっている全能力を、十分に働かすためには、まず、健康の管理が大切です。
ある、プロ野球の選手は、「わたくしが、一番心がけていることは、グランドで十分に活動できるように、健康を、いつも最上のコンデションに、もっていくことです。そのためには、栄養の先生につくってもらった、食事の献立を、忠実に守っています。
先生は、わたくしのスケジュールを調べてもっとも適した献立を、つくってくれるからです。自分の好みで食べていると、つい、かたよったものを食べたり、好きなものを食べすぎたりするからです。
また、睡眠の時間を、十分にとるように、心がけています。それに、野球選手は、目が大切ですから、目を休めるために、夜は映画館にいかないし、テレビも、午後九時すぎには見ません。酒もたばこも口にしないのは、疲れが早いと聞いているからです。」
といっています。
わたくしたちは、運動選手ではないから、そうまですることもないだろうという気持ちがあるでしょうが、寝不足のために、仕事を間違えたり、事故を起こすことがあるのですから、働くものの心がけとしてよい手本としたいものです。
健康でないために、会社や工場を休みがちになったり、仕事にたえられないようになったのでは、あなたのためにも、会社や工場のためにも、大きなマイナスとなることも、知っておきたいものです。
また、あなたにとって大切なことは、心の持ち方です。心の持ち方によって、考え方が明るくなったり、暗くなったりするからです。
上司からの注意をうけても、考え方の明るい人は「教えてもらった」と、受け取ることができますが、考え方の暗い人は「叱られた」と、受け取ってしまうのです。
「教えられた」と、受け取れる人は、持ち前の能力を、グングン伸ばしていけますが、「叱られた」と、受け取ってしまう人は、すばらしい能力まで、失ってしまう結果となるのです。
いつでも、明るい考え方ができるように、心のコントロールが必要です。
また、かたよった心持ちの人は、周囲の人々と、なごやかに過ごすことができません。
かたよった心持ちをもっていると、自分では気がつきませんが、ことばづかいのうちにも、動作や態度のうちにも、周囲の人々に、不快な感じを与えることが多いのです。
職場は、大勢の人が、一緒になって働いているのですから、全体と、調子を合わせていける、かたよらない心を、養っておかなければなりません。
修養に心がけることは、若いものには、ふさわしくないように、考える人がいますが、これから社会に出て、大いに活動しなければならない若い人々にこそ、大切なものです。

3.仕事に専念する

1970年当時のお話ですが、「アメリカの会社や工場を、視察した人々が第一番に感心することは、会社や工場に働いている人々が、一生懸命に、働いているありさまです。
上司がついていようが、いなかろうが、 見学者がそばを通ろうが、少しもかわりなく働いている、ということです。
日本の会社や工場でも、アメリカの工場におとらない働きぶりのところが、たくさんあります。
これは自分たちの会社、自分たちの仕事という気持ちが、働く人たちに、高まってきたあらわれと思います。」
2021年の現在では、日本は海外から働き過ぎだと思われているくらい当時の印象から逆転したのだと感じます。
しかし、残念なことに、そこまでいっていない会社や工場もあります。
勤務時間中、用もないのに、ぶらぶら廊下を歩いていたり、雑誌やスマホをみていたり、ただ音楽を聞いていたり、まったく、仕事とは無関係のことに、時間をつぶしている人がいます。
金曜日などは、週末の遊びの相談をしたり、はなはだしい人は、社外の友だちに電話をかけて打合せなどをしているほどです。
先にも、のべたように、職場は、自分のもっている全能力を、十分に働らかすところです。仕事以外のことを考えたり、仕事に関係のないことを、するところではないのです。
食堂や売場などでは、店員同志が、立ちばなしをしていたり、お客の服装やかたちについて、ひそひそ話し合っているところを、見ることがあります。
こんなことでは、どんなに、おいしい料理をつくっても、どんなにすぐれた商品を、ならべていても、その会社の信用というものをすっかり失ってしまうことになります。
一人の心ない社員の行動は、ただちに、全体の能率を下げ、 会社の信用をきずつけてしまうことを、考えておかなければなりません。

4.休憩時間は十分に休養する

休憩時間は、十分に休養をとることが、大切です。
休憩時間は、気分の転換と、頭やからだを休めて、次の勤務時間には、心もからだも軽々とした、新鮮な気分で働くための、大切な時間だからです。
からだを使っていた人は、静かに。腰をかけてばかりいた人は、軽い運動などをすることも、よいでしょう。
また、屋上や屋外に出て、自然の空気を吸いながら、同僚と話し合うことも、気分の転換になったり、友情を深めることにもなるでしょう。
キャッチボールなど身体を動かす運動も、大いにけっこうなことですが、疲れないようにしなければなりません。
工場で、機械を扱っている場合でも、特別な任務をのぞいては、ほとんどの人が、休想しているでしょう。
ところが、事務などの仕事の場合は、休憩時間も休みなく、仕事も続けている人を見かけます。
見た目には、たいへん熱心に見えるのですが、長く経験を積んだ人から見たときは、あまり感心できないのです。
“怠けものに休日なし”という、ことわざがあります。やらなければならない仕事があっても、
すぐにかからなかったり、あとまわしにするために、いつでも、仕事に追いかけられるように、なってしまうからです。
そのために、他の人々が休んでいるときに休めなくなってしまうのです。
ときには、会社のつごうで、急にやらなければならない仕事ができたり、特別に忙しい仕事がある場合は、休憩時間も返上して、やらなければならないときも、あるのです。
このようなときは、すすんで休憩時間中も仕事を続けるだけの、熱意がなければなりません。
休憩時間の、上手な利用によって、よりよい働きを、していただきたいものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?