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「お国はどちらですか?」とコンビニで聞いています。

「接客」がとても苦手です。
一方的に自分の喋りたい事を、つらつらと垂れ流し続けるのは得意です。

思えば、これまでの人生を振り返っても
「接客とかやって、笑顔なんか自然に作って、気持ち良く人と真正面から接してこその人生なのじゃないか?」
と、度々考えて、コンビニやゲーム販売店やパーティー会場の給仕や弁当屋で
「いらっしゃいませー」「ありがとうございましたー」的なアルバイトに挑んでは、逃げ出して、を繰り返してきました。
結局、いつの間にかへの字口になって、いつしか舌打ちをして、笑顔をスッカリ消してしまうのです。すぐに「しゃせぇぇ」「したー」くらいの簡略化された社交辞令を切るようになるのです。

なので、もしかしたら、この世で一番尊敬できる人は笑顔を絶やさず、快活に応じてくれる接客業の方かも知れません。
例えば居酒屋の、例えばたこ焼き屋の、接客業の人がこんな自分にも屈託ゼロの笑みを投げかけてくれる事に軽く感動させられる毎日です。もったいない、もったいない。

そんな自分が接客を受ける機会が最も多いのはやはりコンビニでしょうか。
その店員さんが、最近ほぼほぼ外国人です。
結構、褐色の肌をした人や、目鼻立ちの整ったエキゾチックな人も居て、華やかです。

先日、荷物の受け取り場所を、至近のコンビニに指定し、夜中に取りに行きました。
スマホに届いた「受け取り場所変更および納品完了メール」に記された12桁の番号を用意してコンビニへ赴きました。
店員さんに番号を告げると、まだ不慣れらしく、レジの操作方法で難渋し始め、どうやら夜中だったのでオーナーは不在らしく、外国人店員さん2人でズーッと悩んでいます。
「なんか、レジに打ち込んだらいけるんじゃないスカ?」
「13桁は、入れられるんですけど、12桁は入らないんですよ」
「ちょっと、店長に電話で聞いてみます」
みたいなやりとりで、1人の店員さんが奥に引っ込んで行きました。

かくいうコチラも特に急いでいる訳でもなく、残された店員さんと2人レジを挟んで残されました。店員さんの名札を見ると『カルマ』とカタカナで書かれてありました。

「カルマさんって言うんですか?いい名前ですね?」
「そうですか?そんな事ないです」
「お国はどちらですか?」
「パキスタンです」
「何年目ですか?日本来て」
「まだー、3ヶ月くらいです」
「スゲー、もうこんなに話せるんですね」
「向こうにいる頃から勉強してましたよ」
「カルマは日本語で『業』ですよ」
「『ゴウ』?どういう意味ですか?」
「なんだろう、背負う運命みたいな事かな、仕方なくその人が持ってしまっているモノ?」
「ちょっと、難しいですね」
「そうですね。僕も良くわかってません」

とか会話していたら、なんとか荷物受け取り問題が解決しました。
店長から方法を聴取してきたもう1人の店員さんが、ようようレジを操作してくれて荷物を受け取ることが出来ました。

「ごめんなさい。お時間ちょうだいしてすみません!」
「いや、問題ないです、ありがとう」
「私は『ゴウ』ですね」
「ああ、そう。カルマさんは、ゴウさんです」
「なんの話ですか?」
「背負わされた運命の話です、いい名前です。カルマさん」

異国の地に来て、母国語では無い言葉で、接客をして、相当煩雑になったコンビニの仕事をこなすとか、僕から見ると相当に見上げるような尊敬の対象です。
昨年あたりから、もちろん店内の混雑時は避けて、外国籍の店員さんを見かけたら
「お国はどちらですか?」
と尋ねる事にしています。ネパールとかベネズエラとか様々です。図らずも、この国の功利主義と労働力不足の果てに、コンビニが多国籍化しています。
申し訳ない面が強いけれど、なかなか面白いとも思います。こんなに身近に、多くの国籍を異にした人たちがいる、というのは。

時々「お国はどちらですか?」が通じなくって「ふぇやあーゆーふろん」と言い換えたら余計通じなくって、申し訳ないんですが、コレは続けていこうと思ってます。
店員が外国人じゃなかったら、こんなコミュニケーションなんてコンビニで作ろうとは考えなかった。けっこう、面白いと思うのです。
「お国はどちらですか?」

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