ガラスの蜂裏表紙__2_

翻訳「ガラスの蜂」12月12日発売

「満目青山は心にあり」で予告していた初のドイツ語の翻訳ーーエルンスト・ユンガーの『ガラスの蜂』(田畑書店、税込3080円)が、表紙デザインも決まり、最終校了して印刷に入りました。発売は12月12日(木)です(一報を⒓月2日としましたが、間違いでした。訂正します)

写真は作者が第一次大戦でドイツ兵士最高の勲章、プール・ル・メリットを最年少で受賞したときの記念写真。鉄十字章しかもらえなかったヒトラー伍長とは段違いの戦功で、ルーデンドルフ参謀総長らと肩を並べました。なかなかハンサムです。そのドイツがいままた落ち目、旧東独地域でAfDが躍進しているのを見るにつけ、その屈辱の根深さを思い知らされます。

NHKキャスター、有馬嘉男氏がベルリンの壁崩壊30周年でドイツを取材、既得権を失った旧東独市民で、いまはAfD支持の老夫婦を取材していましたが、いかにも意思の弱そうな夫に比べ、妻の鋼のように冷たい目が気になりました。あの目はシュタージ(東独の情報機関)に密告していたに違いないと思わせる怖さでした。有馬キャスターはその過去を問うていない。

まだ敗戦の傷が癒えぬ1957年に書かれたこの小説も、いや、メモワールというか、エッセイというか、何とも類別しかねる作品が発する鋭い視線とどこかで共通しているのかもしれません。

帯には内田樹氏の推薦文をいただきました。彼が師事したユダヤ人哲学者、エマニュエル・レヴィナスもフランス軍に従軍、捕虜として生き延びたので、反対側の占領軍にいたユンガーと対称していただこうとお願いしました。こんな文章です。

ユンガーのものを読むのははじめてです。大戦間期のドイツで「敗戦と近代化によってドイツが失ったもの=もう一度蘇らせるべきもの」に固執するユンガーの喪失感にカール・シュミットやマルチン・ハイデガーに通じるものを感じました。
モンテロン、ヴィットグレーヴェ、フィルモア、ローレンツといった軍人たちについて、わずかな行数で彼らの相貌をありありと現前させる「ポルトレ」の技にも驚かされました。
僕自身はこれまで大戦間期のフランス知識人のものを多く読んできましたけれど、ここまで濃密な身体性を持った同時代の書き手はフランス人作家には見出し難いと思います。ドイツ・ファシズムの感性的な淵源について、学ぶことが多かったです。
ぜひ多くの読者に送り届けて欲しいと思いました。
訳文もみごとでした。
(注)「ポルトレ」とはフランス語でportrait(英語読みだとポートレート)のこと。

おそらく内田氏は高校と大学では少し学年が下の後輩で、同じ空気を吸ったはずです。あらためてお礼申し上げます。

アマゾンでも予約販売が始まりました。よろしくお願いします。


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ノンフィクション・ライター兼編集者。調査報道の最先端から、知的に「美しいメディア」を始めようと独立。翻訳、批評などウィングを広げ、めざすはA terrible beauty is born.
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