すき焼きおいしい
日曜日に、はじめてお店ですき焼きを食べた。
しかも今半だ。別館だけど。
・・・それはそれとして、わたしとすき焼きのメモリーを先に紹介させてください。
わたしの初すき焼きは、おそらく幼少期の家庭でのよるごはんだ。
家で母親がつくるすき焼きだ。
当時はすき焼きに対する興味があんまりなくて、すき焼きも特別おいしいとは思わなかった。
焼き肉とかのほうが喜んでた気がするくらいだ。
うん、今思い返しても、ジンギスカンとかは喜んでた気がするから、やっぱりすき焼きおいしいと思ってなかったんだろうな。
子供ってすき焼きあんまり好きじゃなくない?
気のせい?
家すき焼きのときも、大人だけ楽しんでた気がするんだよな。
わたしのすき焼きに対する気持ちって、そのくらいだった。
大人になってから、ちょっとすき焼きに対する見方がかわった。
きっかけは、ほんとにここ数年。
コロナ禍前に、推しが配信で同期とすき焼きパーティーをしていた。
推しが何かの差し入れとかで用意した上等な肉を、同期といっしょに食べよう、そうだどうせならすき焼きにしようか、みたいな流れだった気がする。
画面の向こうでは、おいしそうにたのしそうにすき焼きパーティーをする推したち。
(かわいい)(おいしそう)(たのしそうだな・・)(よかったね・・・)
すき焼きって、幼少期に食べたっきり食べてないけど、もしかしておいしいのか? と思った。
わたしは、ものすごく影響を受けやすいので、よく見るチャンネルのひとたちがおいしそうに食べてるものは全部食べたくなってしまう。
今回もそのパターンだ。なんかめちゃくちゃおいしそうだな、と思ってしまった。
それから、すき焼き食べてみたいな、大人になってから食べたらおいしいかもしれないし! という気持ちがほんのり燻ったまま生きてた。
でも、もう大人だし、どうせ食べるならお店でおいしいすき焼きが食べたかった。
記念すべきすき焼き仕切り直しがおいしくなかったら、たぶんわたしはこの先もうすき焼きを食べないからだ。そういうものだ。
牛丼屋さんのすき焼き鍋膳の写真を見ても、おいしそうだな、食べてみようかな、でも勇気が出ないな・・といった具合だった。
機会は突然訪れた。
あかねちゃんと、昼前の銀座を歩いていた。
昼過ぎから浅草でひかるちゃんと合流して遊ぶ予定のあったわたしたち。
前日入りして銀座のMUJIホテルに泊まっていたので、昼前にチェックアウトして、微妙に時間あくねぇ、お昼ご飯どうしようか、と歩いていたら、オレンジ色の看板がわたしたちの目に飛び込んできた。
「すき焼き・しゃぶしゃぶ・かに」
・・・・・・。
わたしたちの気持ちが急激にすき焼きに集約された瞬間だった。
いやいやいや。
すき焼きて。
そんな突発的に行くところじゃないでしょ、と平静を装いながら、信号待ちで検索をかけるわたしたち。
「今半 すき焼き メニュー」
・・・。
一万円は、さすがにいきなり出すのはきついよねぇ。
2~3000円とかならまだね。そうだよねぇ。
お互いを落ち着かせながら、最適解を探し続けるわたしたち。
まぁでも、銀座は物価が高いし、それこそ浅草のほうがいいお店がありそうだから移動しようということになった。その間も、「すき焼き 浅草」で検索をかける手をゆるめない。
すると、3500円くらいでおいしいすき焼きが食べられるという浅草のお店が見つかった。
レビュー写真にあふれる肉の写真。うわーもうこれ、すき焼き以外の選択肢を認められそうにない。
もうここでいいでしょう! ここに行こう! いきなり行って席は空いてるかしら!? まぁ行ってみるか!
そのお店を目指すことにした。浅草駅から徒歩10分ほどの場所にあるようだった。
しかし、ホテルをチェックアウトしたばかりのわたしたちは、当然キャリーケースを転がしながらの移動となる。
日曜の浅草寺。人混み。狭い道。正直、10分も歩くのはちょっとしんどいかなと思い始めたとき、今半別館をみつけた。・・・一応、メニューを見ようか。
念のため、念のためね。
すき焼き 上肉定食 2750円
そんなに高くなくない!!??
※わたしたちは金銭感覚がマヒしています
当初目指していた店をやめて、目の前の今半別館に入ることにした。
今半。すき焼きを食べないわたしでも知ってる老舗の有名店だ。期待値は最高潮に達していた。
いざ、大人すき焼きデビュー!
ほかにも何組かまっていたので、15分ほどで店内に案内された。
趣のある日本家屋。レトロだ。絶対ノリで入る店じゃないけど、ノリで入ったからこその非現実感があった。テーブルの中央には鍋を置くコンロ。
上肉定食を2人前注文した。
着物を着た店員さんが、さっそく食事の準備に取り掛かる。
コンロに火をつけたので、お、と思った。
安いので、出来上がったすき焼きが運ばれてくるのかなと想像していたのだ。そんなことはなかった。
わくわくしながら待っていると、さらに、大量のお肉と卵、割り下を持ってくる店員さん。えっ、まさかここで作ってくれる・・・!!??
コンロに鍋が置かれる。割り下を注ぎ入れる。肉を二枚、鍋に敷く。取り皿に卵を割り入れてかきまぜる。おだやかだった割り下も、次第にじゅわじゅわと温まり始める。赤い肉が、薄く茶色に色づいていく。何度かひっくり返して、わたしとあかねちゃんの取り皿にできたてのすき焼き肉が差し入れられた。ここまで全部店員さんがやってくれてる。
そのあとも、何度か肉を煮ながら調理の仕方を説明してくれる店員さん。
何度か裏返してください、両面に焼き色が付けばお食べになっていただけますから。ごはんはおかわりできますからね。それでは、ごゆっくりお楽しみください。
う、う、う、うわーーーーー!!!!
なんだこのホスピタリティ。
ていうか、肉、多い!
しっかり噛み応えのある厚み!
やわらか、ウマ、なんだこの食べ物。
割り下甘くておいしい。
しらたきも好きだからうれしいなぁ。
あとから運ばれてきたごはんとお新香とお吸い物もお上品でウマい。
お新香はさっぱりしてて口の中リセットしてくれるし、お吸い物はやさしい味付けで無限に飲んでいられる。こりこりしてるのなんだろう。湯葉かな。湯葉もあんまり食べたことないからわかんないけど。
2750円でこんなにいい思いをしていいのか!?
むしろコスパがよすぎるんじゃないか!?
肉も野菜もいっぱいあるし・・・!!!
そのあとも、店員さんたちがたまに様子を見に来てお水をついでくれたり、「ごはん足りてますか?」「おかわりできますよ」と声をかけてくれた。
やさしい・・・・・・
(でも正直肉でおなかいっぱいなのでごはんはもう入らない・・・)
油断していたのですっかりおなかはパンパンだ。苦しいくらいだ。
しかし、ちゃんと自分たちで働いたお金を使って、老舗ですき焼きを食べて、苦しいくらいおなかいっぱいになって、という一連の流れが、なんだかありがたいなぁという気持ちと大人になったんだなぁという実感でないまぜになった。
あかねちゃんとは、なんだかんだ高校生からの付き合いだ。
高校生の頃のわたしたちには、大人になって働いて得たお金でちゃんとしたお店のすき焼きを食べる未来なんて到底見えていなかった。ずいぶん遠いところまできたもんだ。
浅草に来て本当によかった。
大人になって初めて食べるすき焼きが今半で本当によかった。
近くの席に座っていた家族連れの楽しそうな会話が聞こえてきていた。
幼いお子さんはすぐに飽きてしまったようで、早々に帰りたがっていた。
お父さんのお誕生日祝いですき焼きを食べに来たようだった。
「もう帰ろうよ」という子供に、「お父さんはもっと食べたい」と返していて面白かった。そりゃぁお子さんはつまらないだろうし、お父さんはせっかく来たならたくさん食べたいと思うだろう。微笑ましいな。
それから、すき焼きにずっと捕らわれてしまっているわたしは、今日の夜、我慢できずに牛すき鍋弁当を注文した。アルミ鍋仕様で、家のコンロで直火にかけて温めることができる。
ぐつぐつに煮立ったすき焼きを卵にくぐらせた。
ウマい。
ウマいけど、当たり前だけど、今半のすき焼きって、やっぱり別格だなと思った。また行きたい。
※メニューの値段とかはタイミングによって変わる可能性があるかもしれないので、行く方はちゃんと事前に調べてね。値段変わってたらごめんね。
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