人間は精神的に追い詰められると休めなくなる
人間は精神的に追い詰められた時にどうなるのか。
働けなくなる、勤務先に行けなくなるのではと思う方が多いと思うけど、実際には働くこと自体はできる。ただ、全く休めなくなる。
研修医時代、とある診療科をローテートしていたときに、うつ病一歩手前になりかけた。
その診療科ではとあるオーベン(専門医取得して数年後くらい)に朝から晩までつきっきりで過ごしていたオーベンは臨床医としてめちゃくちゃ優秀で仕事が早く、一緒にいてとても勉強になった。医局では期待の星として見られていた。
ただそのオーベンの欠点を挙げるとすれば、患者さんにはすごく物腰柔らかで丁寧なのだが、無能な人間や部下にはめちゃくちゃ厳しかった。部下や研修医の診察手技や対応などに不備があればけっこう厳しい言い方で「指導」してくる。
そのオーベンの前ではミスをしないように、やらかさないように。常に気を張っていなければならない。それが朝から晩まで続く。日々肉体的疲労と精神的疲労が溜まっていく。
それが続くとどうなるか。
ローテート開始後2週目のある日から、一睡もできなくなった。元々寝つきはいい方で、床に入ると割とすぐに入眠できるタイプなのだが、なかなか寝付けない。ストレッチや深呼吸をしたりとリラックスを試みるが、全く眠れない。そして朝がやって来る。
全く眠れていないが、致し方ない。そして着替えて勤務先には出勤することができたのだが、普段と明らかに様子が違うことを周囲から指摘され(自分では気づかなかったけど、完全無表情で目がずっと下を向いていて顔が死んでいたらしい)、「お前マジでやばいよ。一旦休んだほうがいいよ。」と言われてその日は急遽休むことになった。数日間休みをもらい、なんとかローテート期間を終えることができた。
自分がこの経験から感じたことは、
①:人間は1-2週間足らずという比較的短期間でも抑うつ状態に追い込まれる
②:精神的に追い込まれると、休めなくなる/眠れなくなる
③:自分自身がヤバイ状態にあることを自覚することは案外難しく、周囲の人の方が気付きやすい
④:追い込まれた経験があると、それが自分にとっての1つの基準/判断材料になる
ということ。
特に②については意外だったのと、④については、あの時の経験があるからこそ、今現在「この仕事はキツイけど、あの時の状況と比べるとまだ多分できそうだ」みたいな感じで基準のように使える。これがすごく役に立っている。ただこれはあの時のヤバイ状態をなんとか切り抜けることができたからで、もし切り抜けることが難しかったら、周囲の人たちが指摘してくれていなかったら、と思うとゾッとする。
・現状しっかりと休めているかどうか確認すること
・周囲で自分のことを定点観測してもらえる人を作っておくこと(自分では気づけないが、ヤバイ状態にある時に指摘してもらえる)
これらが重要かなと思う。