部室②

『もしかしてこれはすごいチャンスなんじゃないか？』
女子部室の合鍵を作ればいつでもあそこに入れる…中の物、嗅ぎ放題…。

部室の前では耕太が手持ち無沙汰そうに待っていた。
「おっせぇよぉ　早く開けろぉ」
愛薫がプレハブの引き戸を開けるやいなや耕太は中に飛び込んだ。
「そろそろクニセンが部室チェックしそうだなと思ってよ」
耕太は自分のロッカーからラケットやらジャージやらを搔き出しながら言った。

男子テニス部の顧問、国枝は現国と生活指導の教師で、部活動にはまったくの無関心のくせに時々部室や用具室のチェックに来る。
以前、ロッカーに隠していた煙草を見つけられて停学になった者がいたと聞いた事がある。

「カートン買ったばっかりだかんな。没収されてたまるかって」
耕太はロッカーの中から封の開いたセブンスターのカートンを取り出し、愛薫に見せた。

「買ったばっかって…たいして残ってないじゃないすか」
思わず吹き出した愛薫に
「うっせぇよ」
と笑いながらカートンから1箱抜き出し、
「ほいよ」と投げてよこした。
「いいんすか？」
「うん！アイくんにおだちんあげるー」
麗奈の口ぶりを真似てるつもりらしい。
愛薫がリアクションせずにいると

「本題はコッチ。ウラだぞウラ」

と1本のVHSテープを投げてよこした。
汚い文字で【SM】とだけ書かれている。
「嫌いなら返せよ」

鞭打ちや蝋燭とか痛そうなシーンやプレイは苦手だったが、SM物なら浣腸シーンが期待できる…。
肛門アップもあるかも知れない…。

「いや、見てみます」

耕太は「フン」と鼻で笑ってから
「アイリに鍵返さなきゃな。なんか言ってたか？」

「あぁ…今日はもう櫛田先輩と帰るから明日返して欲しいって。朝練あるからそれまでにって」

用意しておいた嘘。

「だぁぁマジかよ！んな朝早くに来れっかよぉ！かったりぃなぁ」
「俺返しておきますよ。おだちんもらっちゃったし」
「お！マジ？たのむわぁ　さぁっすがアイくん！痩せてるのに太っ腹ぁ〜」
「それ誰すか？」
計画通りにいったのが嬉しくてつい反応してしまうと
「麗奈だよ櫛田麗奈！ わかんねーの？マーをアイくんって呼ぶの麗奈くらいだろ？マーの事がお気に入りなんだってよ」

「宇宙イチ似てないっすね」
「うるせーわ じゃあな」

耕太と別れた愛薫は商店街の金物屋に寄った。

「すんません、コレの合鍵1本作って下さい」

つづく