戻って来た母
児童養護施設で過ごしたあの頃の出来事を思い出すと、決して伸び伸びと自由に過ごせた幼少期ではなかったと思う。
そして、いつも寂しくて両親の愛情に飢えていた私は、誰にもバレないように小4になっても指しゃぶりをして眠った。
自分には、別の両親がいて私は、とっても深く愛されて幸せいっぱいな暮らしをしていて…
とそんな空想をよくしていた。
「母はもう死んでしまった」…とそう
思い込んでいた方が気持ちが楽だった。
施設で暮らして4年が過ぎた頃、
行方不明だった母から突然電話がきた。
「ごめんね」と母の声を聞いた瞬間私は号泣した。
ずっと会いたくてずっと恋しかった母
そしてその年の冬休みの一時帰省で母と再会した。
久しぶりに見る母は、少し小さく見えた。
派手な身なり、メイクは昔と変わっていなかった。
私達はどうしていいかわからず、
モジモジしていた。
母は、最初は笑っていたけれど「おいで」
と言って私達一人一人を抱きしめた。
抱きしめながら「ごめんね、ごめんね」と言って母は泣いた。
私も妹も弟も姉もみんなで泣いた。
その2年後、私が中学3年になった時、私達は再び母に引き取られて母との暮らしが始まる。
そこには、お父ちゃんと呼ぶ人ではない別の人
(男性)が母の隣にいた。
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