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卒業生として、早稲田の政経が数学を入試の必須科目にした件に思うこと

こんにちは。

今年から早稲田大学政治経済学部の入試に数学が必須となったことが話題になっているみたいですね。YouTubeで知りました。

各メディアで色々な取り上げ方がされていますが、今回は卒業生の立場としての意見をお届けしようと思います。学部内の実態とか、一般に知られてないようなことも多いでしょうから。

まず、政経の入試科目変更について、簡単におさらいです。

従来:国語・外国語・地歴公民or数学 の3科目
変更後:国語・外国語・数学IA・地歴公民or理科or数学IIB の4科目

他所でさんざん言われているので、詳しいことは省略します。

私はこの変更に賛成です。

そう思う理由を大きく2つに分けて説明しますね。

Ⅰ.経済学部が文系という分類は珍しい

これは在学時に教授が言っていたのを聞いて知ったことなのですが、経済学部を文系に分類しているのは、先進国のなかでも珍しいみたいですね。

早稲田の政治経済学部は、以下の3学科に分かれています。

・政治学科
・経済学科
・国際政治経済学科

政治学科は、政治学を中心とした"いわゆる"文系の授業が多いですが、経済学科の科目を取ることが必修となっています。経済学科は入学してから卒業するまで数学が付きまといます。国際政治経済学科はなんかもうヤベーです。

私は経済学科でした。経済学科を目指している人で数学に苦手意識のある人はそれなりに覚悟がいります。(後述しますがコミュ力があれば割と何とかなっちゃったりもします。そういうトコは文系っぽいでしょ?)

経済学科って、1年生の春から微積の知識を前提とした授業を取らなきゃいけないんですよ。もちろん初めは復習っぽい話から始まりますが、因数分解も平方完成も知らない状態ではなかなか厳しいものがあります。私はセンター数学までは勉強していたので何とかなりました。

前提知識の足りていない学生は、授業内容とは別に数学の基礎を学ぶ必要があります。大学生、とりわけ1年生というのは、やりたいことが山ほどありますよね。そんな時期に、高校数学の勉強に時間を割かれるのは辛いことでしょう。大学や学部学科は自分で選ぶものなので、自業自得と言われるかもしれません。しかし、彼らは被害者でもあるんじゃないでしょうか。

高校で文理選択の際に理系を選ぶ生徒というのは、「数学あるいは理科が好き、得意だから」というポジティブな理由が多いのに対し、文系を選ぶ生徒は「数学が苦手だから」というネガティブな理由が多いように思います。(それって私の感想ですよね)

そして文系とは名ばかりの「何か得意科目があるわけではない、ただ数学が苦手な人たち」の集団が出来上がります。キツイ言い方ですみません。

そんな文系の生徒に対して募集をかける経済学部って、どうなんでしょうか。入学後に地獄を見るのは分かりきっているじゃないですか。

そういうわけで、数学IAを入試の必須科目にしたのは、ある意味良心的だと思います。

Ⅱ.必修科目の落単割合が高すぎた

私が入学したのは2013年の4月です。経済学科生はまずミクロ経済学とマクロ経済学という、経済学の根幹を成す2科目の入門を受講します。これが最初の関門となります。

皆が同じ教授の授業を受けるわけではなく、3クラスくらいに分かれます。なんと、クラスによっては落単割合が5割を超えたりしてました。そして、早稲田には俗に言う留年という制度がありません。よほど単位を落としすぎたりしない限りは(1年間で2単位しか取れないとか)、1年生から2年生、3年生から4年生へと進級できるんです。

単位落としても進級できるとか楽勝じゃん、って思いますよね。しかし、この仕組みには落とし穴があるんです。1年生で落とした単位は2年生に繰り越され、2年生の必修科目を履修しながら1年生の必修科目の再履修となります。おや、この構図どっかで見たことありません?そう。リボ払いです。

これを見かねた学部は、私の知る限り3つの策を講じました。

・担当教授の統一
・演習クラスの導入
・数学支援室の設立

です。

i.担当教授の統一

まず、複数の教授によるクラス分けを廃止しました。言っちゃなんですが、とてつもなく教えるのが下手な教授とかいるんですよ。高校生までの間、学校や塾、予備校などを通じて「授業で学ぶ」というスタイルに慣れている彼ら1年生は、授業の質が低いと学習結果にモロ影響が出てしまうんです。特に数式を扱う科目は、口頭での解説がとても重要です。結果、授業が上手いと定評のあるT教授が、経済学科の1年生全員を担当することになりました。

ii.演習クラスの導入

本来、ミクロ入門は週1回の科目です。これを週2にしました。各週の1回目は従来通り講義形式で行われ、2回目は少人数制の演習クラスとなります。演習クラスでは、その週の講義で習った範囲の問題を、過去問などを実際に解いて理解を深めます。しかも、少人数制なので分からない部分を質問しやすい環境になっています。また、演習クラス導入に伴い、出席点や課題提出点などの加点制度も盛り込まれました。いや、むしろ今まで無かったんかいという話なんですが。これまで、成績評価の内訳は「期末試験100%」でした。つまり試験一発勝負。泣いても笑っても試験で点が取れなければ単位を落とします。ここにもテコ入れが施され、出席や課題提出をそつなくこなせば30点ほどの下駄を履いた上で試験に望めます。

iii.数学支援教室の設置

先述の通り、高校数学の知識がほぼゼロの学生も一部存在します。そういった学生のために、週1回の数学支援室が設置されました。たしか水曜日だったと思いますが、4限〜6限の間、1つの教室が支援室として解放されています。そこには大学院生が2〜3人常駐しており、ありとあらゆる数学の質問に答えてくれます。さらに、中学数学から復習できる演習プリントも用意されています。KUM○N式で一次方程式の解き方からじっくりこってり数学漬けになれます。

おわりに

ここまで読んでくれた方ならお分かりかと思いますが、いまの経済学科は救済に次ぐ救済で負んぶに抱っこの状態です。恐らく、大学側はこの状況を望んではいないのでしょう。だからこそ入試に数学IAを必須にしたのだと思います。メディアは「あの早稲田大学が!文系学部の入試に数学を必須に!?」みたいな取り上げ方をします。まあ間違っちゃいないんですけど、語弊がありますよね。そうすると、ニュースの見出しだけで「文系に数学は必要ない」とか「数学万能論やめろ」とか言われちゃうんですよね。

今回の件を総括すると、私学のため共通試験を受ける必要がなく、かつ入学後に数学を必要とする政治経済学部だからこそ、数学の必須化を余儀なくされたのです。

おまけ

大学って、人数有利ゲーなんですよね。特に文系は。縦と横の繋がりが広く厚い人ほど、攻略しやすくなります。

政治経済学部とて例外ではありません。同学年と一緒に試験対策したり、先輩に攻略アドバイスをもらったりした方が効率よく単位が取れます。教授と仲良くなるっていう手もあります。

なので、ちょっと数学に自信がないぜという方も、コミュ力がそれなりにあれば何とかなります。たぶん。

あと、政経が数学を必須にしたということは、商学部あたりも近々同じことをしてくるんじゃないかな〜という予想をしてみます。

長々と駄文にお付き合いいただきありがとうございました。

ではでは〜。



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