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チェルシーがパルメイラスに苦しめられた理由

はじめに


先日開催されたクラブワールドカップで南米王者パルメイラスが欧州王者チェルシーを喉元にナイフを突きつけるほどに追い詰めました。
特に前半のパルメイラスはチェルシーに何もさせていませんでした。

パルメイラスの選手個々の能力は決して低くありません。ただ、チェルシーの選手達と比較した時、大きな差があるのは明らかです。

そんなパルメイラスの、欧州きってのビッグクラブを崖っぷちまで追い詰めた戦術は自分にとって非常に興味深く、学びのあるものでした。

本稿では、この試合でのパルメイラスの戦術的ポイントについて考察していきます。

この試合のシステム

白がパルメイラス 青がチェルシー

パルメイラス 非保持フォーメーション 6-2-2
チェルシー  保持フォーメーション  3-2-5

パルメイラスの戦術的ポイント

上図の配置を用いたパルメイラスの戦術には4つのポイントがあります。

①チェルシーの3CBの内、中央のチアゴシウバをフリーにする。残りの2CBには制限をかける

②起点となる2DHと2WBにはマンマークをつける

③ゴール前を4対3の数的優位な状態にする

④奪ったらサイドの裏のスペースを使う

この試合の前半は、蛇口から水が出ているだけの全く機能していないししおどしを見ているようでした。

ししおどし この試合は出所の竹から水が出ているだけのそれのようだった


①チェルシーの3CBの内、中央のチアゴシウバをフリーにする。残りの2CBには制限をかける

これは、流れ出る水は放っておいて、受け皿の竹と石の溜池に全て蓋をすることを狙ったものです。

ボールを持たされて困惑するチアゴシウバ

事実、ボールを持たされた、チアゴシウバからのパスの出し先がなく、若干困惑しながら前進するという場面が何度も見られました。

②起点となる2DHと2WBにはマンマークをつける

これは、受け取った水を石の溜池に流す竹筒に水を入れさせず、ししおどしを機能させないことを狙ったものです。

チェルシーの起点へマンマークにつく かなり強度が高かった

ゴール前へのボールの供給元である2DHと2WBに強度高くマンマークにつくことで、それら4選手を完全な機能不全に陥れていました。

③ゴール前を4対3の数的優位な状態にする

これは、水を受け取る溜池によりも大きな蓋で入り口を塞いで、水の流入を完全に防ぐことを狙ったものです。

前線の3枚に対して常に数的優位な状態を作る

前線の選手にボールが入った時には、ボールに近い4CBの内の一人が強度の高いアプローチをして、絶対に自由な状態でプレーさせていませんでした。

④奪ったらサイドの裏のスペースを使う

これはししおどしの比喩には当てはまりません。

5トップ戦術にはサイドにオープンなスペースができてしまう

チェルシーのように、MFラインの背後に5人の選手を配置する攻撃戦術を採用するチームには、WBの裏のスペースという抗いようのない弱点が存在します。ボールを奪った時には、チームとして迷うことなくそのスペースをスピーディーに活用するためにアクションを起こしていました。

以上の4ポイントを抑えた戦術を強度高く実行していました。

結果的に、前半は0-0でおりかえし、パルメイラスは世界中に「これは、もしかしたら、もしかするぞ」と思わせたことでしょう。

おわりに

このようにパルメイラスは、選手の質という観点で見た時、圧倒的に自分達を上回る相手に対して勇敢に戦い続けました。格上と戦う上での1つ回答を見せてくれたと、僕は感じています。

サッカーチームを率いていれば、今回のパルメイラスと同じような立場で試合に望む場面は幾度となく訪れます。

そんな時、「これは選手の質の差だから仕方ないね」と諦めてしまう指導者にはなりたくありません。

真っ向からぶつかった結果圧倒的に敗戦し、「自分達の哲学を貫いた結果だから」と悦に浸って現実逃避するような指導者にもなりたくありません。

時には、泥臭く、美しくなくとも合理的な戦術を与えられる指導者になりたいです。そんな思いにふけったパルメイラス戦でした。

と、かっこよく締めようかと思いましたが、後半のトュヘルチェルシーの修正がまた気持ちのいいものだったので、それも時間があれば書きたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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