第84話「新人CAトレーニング卒業式」
1999年10月29日金曜日、この日が5週間の新人CAトレーニング最終日。
いつものように767のギャレールームで朝のコーヒーを楽しみ、8時27分頃からインストラクターのミッシェルの登場を待っていると、3分後にフライトアテンダント・マネジャーのサンドラ・ハンターと人事部のアリス・ジョーンズが先に登場した。
ミッシェルが二人を紹介し、初めにサンドラーがスピーチをしました。
「皆さん。おはようございます。フライトアテンダント・マネジャーのサンドラです。私も18年前、今の貴方たちと同じ新人FAとして、このトレーニングセンターを卒業し、国際線に乗務して来ました。18年経った今でも、卒業式の事は鮮明に覚えていますよ。本当に嬉しくて、これから始まるフライト生活をワクワク、ドキドキしながら待ち望んでいました。」
そこまで、言った後、ひと呼吸置いて、「皆さん。本当にこの5週間良く頑張りました。」と満面の笑顔で12人に拍手を送りました。
次に人事部のアリスからは、契約書の説明がありました。
「今から皆に、2冊の契約書をお渡しします。しっかりと内容を確認し、最後のページにある署名欄と日付を記入して下さい。尚、2冊のうち1冊は人事部長が署名した後、皆のファイルに入れておきますので、ご自身で保存下さい。恐らく、来週中頃ぐらいにはファイリングされているはずですが、もし、来月の15日までにファイリングされていない場合は、私までお申し出下さい。」
全員にコントラクト(労働契約書)が配布された。コントラクトはA4サイズで全部で30枚にも及んでいる。かなりのボリュームだが、飛行機の遅延の際の取り決めや、残業代、乗務先でのアローアンス(乗務手当)、ロスター(乗務スケジュール)、病欠、有給休暇、退職、解雇など各項目毎に細かくルールが決まっていた。
「へえー、12時間以上の連続乗務だと、時給が1.5倍なんだ~。」
アメリアがそうつぶやくと、隣にいたキャシーも嬉しそうにうなずいた。
「うわーホントだ、1.5倍も嬉しいけど、14時間以上だと2倍だね。CAの仕事って“飛んでなんぼ”と言われるけど、乗務が長いと身入りも大きいよね。グランドスタッフだったら、残業もあるけど、基本は8時間だし、乗務員みたいにステイ先での乗務手当も一切もらえないから、断然、条件はいいわ。」
グランドスタッフ上がりのキャシーにとっては、客室乗務員との給与の違いが新鮮に感じていた。
「フライト・スケジュールは4週間毎だけど、必ず10日以上のクリア・デイオフ(24時間以内に出発・到着が入っていない状況)が確約されているんだ。普通のOLやってたら、週休2日で4週間だと8日だから案外、休みが多いよね。でも、確実に週末にオフが入る保障はないから、ボーイフレンドとデートするのは少し難しくなるかな?」
カオリはボーイフレンドとの時間をどう作ろうかを悩んでいる様子。
一方、UKエアーでのフライト経験のあるケイトは
「CAの仕事は休むのも仕事だから、オフはしっかり休んで英気を養わないとね。」と、至って冷静の様子。
2日後の日曜日、12時から結婚式を控え、非常に多忙な中でも、5週間のトレーニングをやり遂げられたのは、他社での乗務経験があった点が大きかったと本人は公言していた。
「契約の満了日は来年の3月16日だけど、場合によっては延長があるって部分が少し気になるね。ずっと、契約が伸びてそのまま正社員になれたらいいのに・・・。」
12月に33歳になる、最年長のジェーンは、契約が終わった後の事を少しだけ心配をしていた。だけど、今までずっとCAとして世界中をフライトしたいと思い、10年近くやってきたグランドスタッフの仕事を卒業したので、今は先の事は考えずにフライト生活を楽しむ事だけを考えるそうだ。
契約書のサインが終わると、モックアップルームに移動して卒業式が和やかな雰囲気で始まった
初めに本社からわざわざ、この式の為にやってきたCOOのロジャー・ジェームスから激励の言葉あり、12人の新人CA達は神妙な表情で彼のスピーチを聞き入った。
およそ3分間のスピーチの中で、「君達は会社の顏として、お客様に接する大切な役目をになっています。一人ひとりがその事をしっかりと認識し、キウイエアラインの乗務員として恥ずかしくないよう最高のサービスを心がける事。」という部分に特に力を入れ、最後は卒業おめでとう、と締めくった。
続いて、インストラクターのミッシェルが一人ずつ名前を呼び、呼ばれた生徒に対するユーモアなコメントや激励をした。そして、コメントが終わった生徒は拍手でたたえられ、マネージャーのサンドラからトレーニング終了書を受け取った。
誰も、涙は流さなかったけど、ついに5週間のトレーニングが終了した瞬間でした。
※卒業式の後、クラスの全員にお祝いと言うことで用意された「Congratulation cake」に入刀する著者
「それじゃー、恒例のCongratulation cake(卒業生の為に会社が用意したチョコレートケーキ)は、一番頑張ったカツヒロに切ってもらいましょう。」
とミッチェルが目を細めながら発言すると、
「ホント、カツヒロはスゴイよ。英語が母国語じゃないのに、最後までやりきったもんね。俺なんか、英語で勉強していても、かなりテンパってて、全く余裕が無かったのにね。」
仲良しのジャステインが、カツヒロの肩を叩いた。
すると、カツヒロは少し照れながら、
「本当に皆、たくさん助けてくれてありがとう。私が授業内容から遅れそうになると、サラやジェーン、ケイトらが分かりやすく教えてくれたから、本当に助かりました。」
とお礼を言って、日本人らしく頭を45度近く下げたら、なぜか、そこがうけてしまい、何人かがカツヒロの真似をして頭を下げ返した。
ケーキを食べた後、卒業記念の写真を外で撮ることになった。会社の記録用に真面目なスタイルの写真を1枚撮った後、2枚目の写真はこの5週間の中で最も12人の笑顔が輝いた瞬間をカメラが撮らえた。
※著者と同期生のCAトレーニング卒業式の写真
「ヤッター、終わったぞー」
「ホント、終わったね。」
「もー、最高!」
そんな、雄叫びが聞こえて来そうな思い出の1枚を撮り終え、カツヒロ達は教室に戻った。
つづく。
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