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第73話「最初のロスター(乗務表)」

カツヒロは水曜日の朝、何時もより1時間早く自宅を出発して、オークランド空港に到着した。少し緊張した表情で乗務員オペレーションセンターの入り口でエントリーコードを打ち込む。

グリーンライトが点灯し、ピーっと言う音が鳴ると同時にドアが開錠できた。入口を通過し、最初に乗務員毎の個人ファイルが置かれているロッカールームに行き自分のファイルをチェックした。

M4.カツヒロ

本当は昨日のうちに初めてのロスターを(4週間の乗務スケジュール)確認したかったのだが、ロスターの配布が遅れていて、トレーニングの帰りに立ち寄った時点ではまだ準備出来ていなかった。

何だよ、折角、時間を作ってロッカールームに寄ったのに、空振りだ。”

と少しガッカリしたまま、自宅に戻りったのだが、夕食の時にその事を先輩の木村に言うと、

M5.木村

「武藤君、そんなのよくある事だよ。形式上、ロスターのファイリング日時は決まっているけど、半日から丸2日近く遅れる事もあるからね。」

とあっけなく、言われた。ロスターの発行が遅れる事なんで特に珍しくないようだ。

※(ロスターは現在、紙ではなく、PDFをメール添付で送ってもらえるので、空港の個人ファイルを確認する必要はない)

「それから、マニュアルにフライトコントロールのヴォイスレコーダーの電話番号が出ていると思うけど、そこに電話すれば、最新のフライト情報とロスターの状況も録音されているから、これからチェックしたら良いよ。」

新人CAのカツヒロにとって、先輩乗務員の木村のアドバイスは非常にありがたい。カツヒロにとっては、結構やっかいな問題でも、木村に相談すると簡単に解決できる事が多かった。

「あっ、そうでしたね。来月からフライトするようになったら、フライトの3時間前にチェックしようと思います。」

通常、CAやパイロットは自分が乗務するフライトが予定どうり運行されるかを、ヴォイスレコーダーで確認する。このヴォイスレコーダーにデレイ(遅延)情報が入っていると、その遅延時間、例えば1時間なら、オリジナルのスケジュールに1時間を送らせて出勤する事になる。

39.ファイリング

カツヒロがロッカー室で自分のファイルをチックすると、ファーストフライトはオークランド→シドニー間をB747でフライトするDutyと言う事が判明した。シドニーで一泊した次の日にフライトタイムが14時間30分もあるシドニー→ロサンジェルスに乗務。ロスで2泊したら次はロンドンのヒースロー空港へフライト。

ロンドンで2泊、そこから再びロスアンゼルスに戻って、ロスで2泊、最後はロサンジェルス→オークランドと言う行程。

※(AKL-SYD1泊-LAX2泊-LHR2泊-LAX2泊-AKL)

「えー、いきなりロンドン行きの10日間のDutyが当たってる。その後は、日帰りでブリスベン往復とメルボルン往復、シドニー往復が1本ずつ、それから、フィジーのナンディ経由のロスアンジェルス行きの5日間の乗務。そして、その後に再びロンドン行きだぁー。」

と思わず叫びそうになるくらい、意外なロスターで少し驚いた。

“俺、日本人だからてっきり成田や名古屋、関西フライトが中心になるのかと思っていたのに、全く日本便が入っていない。”どうしてなんだろう?

と言うカツヒロの疑問はその時点では、解明出来なかったが、後になって分かった事はカツヒロは日本語スピーカーとしての登録が済んでおらず、普通のニュージーランド人クルー達と同じ扱いになっていた。

まあ、仕方ない、千葉の両親にはしばらく会えないかもしれないが、いずれ成田便にアサインされたら必ず会いに行こう。とカツヒロは思った。

anaブリーフィング

※ANAのCAさんのブリービング

カツヒロとジェーンは9時出発の関西便のブリーフィングに参加した。今日のチーフは、運よく特に優しく多くのCA達から人気のデブラだった。緊張している二人にとっては、とてもやりやすかった。

「本日、トレーニングでお邪魔させていただきます、カツヒロです。767のギャレーセッテイングを見学させて頂きますのどうぞよろしくお願いします。」

一通り先輩クルーに挨拶を済ませた後、全員が搭乗ゲートへと向かいました。

予定通り、出発の約1時間前に登場ゲートに到着した。機内はまだ清掃中。こう言うケースは結構多いのだが、チーフとサブチーフ、それから、エコノミーとビジネスのギャレー担当は搭乗が許されたので先に機内に入った。彼らは出発前にやるべき準備が多いので機内清掃の邪魔にならないようにギャレー等に移動する。カツヒロとジェーンも一緒に機内に入った。

この便のエコノミークラスのギャレー担当はベテランのケビンで乗務歴25年。彼はエコノミークラスが好きで、ビジネスやファーストクラスのサービスを行うプレミアサービス要因の資格は取らないポリシーとの事でした。

スチュワード3人

「折角、見学に来んだから、少し手伝って見なよ。」

ケビンは笑顔でカツヒロ達に指示を出す。

「ジェーンはコンテナから、プラスチックカップを出し置いて、あーあと、ドリンクカートのカギを外して置いてね。セキュリティシールはフライトしてから外すので、そのままでいいよ。」

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「カツヒロは紅茶のセットを4つ作って置いて、それから、ミルクをジャグに入れてあそこのコンテナに戻して置いてね。」

前方から、チーフのデブラがやって来て、ケビンに乗客リストを渡した。ケビンはそれを元に、スペシャルミールをオーダーしている5人の座席番号を確認し、チャイルドメール3つとヴィーガン(ベジタリアンの一種)メール2つのカードに席番号書き込んだ。

次に8つあるオーブンを一つ一つ開けて中味を確認する。チェックするものは5つのスペシャルミールがある事、朝食の“おかゆ”又は“スクランブルエッグ”が人数分入っているか?それと、ブレッドロールが人数分以上用意できているか?

時間にして7分程度でギャレー準備が完了。他のFA達も機内に搭乗してきたので、カツヒロとジェーンは一緒にヘッドセットを座席にセットして行く。それが終わるとデブラに挨拶し、新人FAトレーニング日報にサインをしてもらった。

つづく。

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