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カーニバルコーポレーション(2020Q4決算速報)

米クルーズ会社大手のカーニバル(Carnival Corporation、ティッカーシンボル:CCL)が2020年第4四半期(2020/9/1~11/30)の決算速報を発表しました。

1.要約

・US-GAAPベースの当期損失はマイナス22億ドル
・手元には95億ドルの現金を保有
・キャッシュバーンレートは予想よりやや良好
・低効率の船舶19隻を処分(うち15隻は既に売却済み)
・広告宣伝費をかけていないにも関わらず、2022年上半期までのクルーズ予約は2019年上半期を上回る水準

2.クルーズ船運航状況

コロナ禍を受け、クルーズの多くは運航できない状況が続いていますが、完全にゼロになっている訳ではありませんでした。

・クルーズの目的地や価格帯が異なる9つあるクルーズブランドのうち、2つ(CostaとAIDA)は乗客を限定し、健康安全対策をとったうえで、運航を再開しています。残る他のブランドも運航再開を目指すとのことです。

3.運航能力の効率化と収益性向上

クルーズが運航できないのはクルーズ会社にとっては厳しいですが、いまは運航再開後の経営効率を高めることに注力しています。具体的には、古い船を処分し、効率の良い船に入れ替えることによって、1隻あたりのベッド数を増やし、客単価も増やすことでの収入増と、燃費改善の支出減です。

・当社は、運航能力は、需要に対して適度な水準に維持できると予想している。運航再開が限定的で需要が限られることを利用して古いクルーズ船を処分していること、新造船の納入が遅れていることが理由です。
・コロナ禍によりクルーズを休止して以降、予定していたクルーズ船の処分を前倒ししている。具体的には、予定していた19隻の船舶処分のうち、15隻はすでに売却しました。
・2019年度と比較して、1隻あたりの平均寝台数が約14%拡大し、船の平均稼働年数は12~13年となり、より効率的な船隊になると予想されます。
・処分する19隻はコロナ前の運航キャパシティの約13%を占めるものの、営業利益では3%しか稼げない、いってみれば「効率の悪い船」です。
・効率の悪い船を売却することで、将来的には客単価(「ALBD : Available Lower Berth Day」)あたり約2%の運航費の効率化と、ALBDあたり約1%の燃料消費量の削減が実現すると発表しています。

4.予約状況(2020年12月20日時点)

2022年上半期の予約が2019年上半期を上回っていることから、コロナを受けても、長期的にはクルーズ船への需要は減っていないことが分かります。

・2021年下半期の予約は過去の範囲内に収まっていますが、2022年上半期のは、2019年を上回る水準の予約が積みあがっています。しかも、最小限の広告やマーケティングでこのレベルの予約が達成されたことを当社は強調しています。

クルーズクレジットは飛行機のマイルのようなものをイメージするとわかりやすいです。クルーズ出航がキャンセルされた場合、クルーズ代金より少し高額なマイルが付与され、再度予約する場合は従来のクルーズよりグレードアップすることができたり、船内での買い物等に使えるものです。

・出航がキャンセルされた場合でも、将来のクルーズクレジット(FCC)を強化したり、現金での払い戻しを選択できるようにすることで、お客様に柔軟性を提供しています。
・クルーズクレジット(FCC)の強化により、お客様の当初の予約の価値を高めるか、または船内クレジットの増分を提供するものです。2020年11月30日現在、同社のスケジュール変更の影響を受けたゲストの約45%が強化されたFCCを受け取り、約55%が払い戻しを要求しています。

5.倒産可能性

短期的な倒産可能性をみるうえで重要なのは手元現金の水準になります。ほぼ売上ゼロの環境では、負債が返済できるだけの現金を持っているかが重要な視点になります。

2021年に返済しないといけない負債額は19億ドルと手元現金95億ドルと比べれば限定的なのは幸いでした。

例えクルーズの運航が出来なくても、人件費やクルーズ船の停泊にかかる費用等、いろいろな費用がかかります。当社は月に5~6億ドルの費用がかかりますが、単純計算でも12カ月はつぶれないことがいえるかと思います。

※(手元現金95億ドルー2021年負債額19億ドル)÷月間6億ドル=12カ月

また厳しい環境でも、2020年9月・11月に株式発行で25億ドルの資金調達ができたことからも、安心感があります。本当につぶれそうな会社の株を買う人はいないわけで、当社はそのようにみられていないということの証左になります。

6.所感

コロナ問題はいつか落ち着くと思いますし、アメリカ人のクルーズ好きにも変化がみられないことから、当社手元現金が潤沢にあり倒産の心配が限定的であることから、コロナからの回復をテーマにすると面白い会社にみえます。

もう一度CEOの発言を引用しておきたいと思います。

CEO:「この期間を通して一貫して経験してきた予約傾向は、当社ブランドに対する根強い需要を裏付けるものであり、これは当社の長期的な成長を支えるものとなるでしょう」

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