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ロケット打ち上げベンチャーがSPACでNasdaq上場

近年、注目を集める宇宙業界ですが、先週おもしろそうなベンチャー企業(Astra社)がSPAC(Holicity、ティッカーシンボル:HOL)との合併を通じて上場しました。

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1.Astra社の概要

・創業は2016年10月と若いですが、創業してから4年という早いスピードでロケット打ち上げを成功させました。

・事業は、超小型ロケットの製造~打ち上げです。

・創業者CEOはNASAでの勤務経験、創業者CTOはMIT出身・DARPA(米 国防高等研究計画局)での勤務経験があります。

・すでに既に10社以上から50回以上の打ち上げ依頼を受注済み(5つの政府系機関を含む。NASAからも打ち上げを受注しています。)

・2/4現在、ティッカーシンボルはまだSPACの名称である”HOL"となっています。今後、”ASTR"に変更される予定です。私募投資家にはBlackRock系のファンドが入るようです。

・打ち上げの様子はYoutubeに動画がありました。

・株価は合併を発表したのでSPACの10ドルから16ドル程度まで急騰しました。

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2.業界動向

経産省の資料が非常にわかりやすくまとまっていましたので、抜粋します。

社会基盤としての宇宙システム

・観測衛星、測位衛星、通信衛星、地上局、衛星データ利用システム等からなる宇宙システムは、既に経済社会活動や安全保障分野における基盤となっている。

宇宙ビジネスはベンチャー企業や巨大IT企業がけん引

・民間企業による商業ベースの宇宙ビジネスが活発化。ベンチャー企業が活躍
・巨大IT企業が小型通信衛星の運用や衛星データのクラウドサービスで宇宙市場に参入

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今回ご紹介するAstra社は主に小型ロケットの打ち上げに特化した企業になります。打ち上げるロケットは自社で製造する予定です。

競合にはRocket Labs社、Virgin Galactic社(ティッカーシンボル:SPCE)等があります。

超小型衛星コンステレーションによる衛星データ量の増大

・超小型衛星は従来型衛星に比べ、1基当たりの製造速度(数年→数カ月)及び製造コスト(数百億円→数千万~数億円)に優れ、コンステレーション(星団)化により観測頻度(日単位→分単位)や強靭性も向上。
・また、AI等の解析技術を活用し、新たな価値(ビジネス)を創出する企業が出てきている。

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このような背景の中、衛星の打ち上げは年々増加しています(2010年⇒2019年で19倍)

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3.当社の経営陣

創業者CEO(Chris Kemp氏)はNASAでの就労経験、創業者CTO(Dr.Adam London氏)はMIT出身でDARPA(米 国防高等研究計画局)、マッキンゼー等での就労経験があります。

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4.当社の技術力

・衛星軌道への到達を他社よりも早く達成しています(創業後4年。他社は7年~13年)。

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・米 国防高等計画研究局(DARPA)のコンペに参加した50社以上の中で、最後まで残った1社となっています。※ただし打ち上げを中止したのでコンペの優勝者は「なし」となっています。

急成長している小規模打ち上げプロバイダー業界における、素早くかつ柔軟なロケット打ち上げ能力を実証することだ。打ち上げのインフラを最小限に抑え、国防を目的とした数日間という短期間での打ち上げを可能にすることを目指す。そのためこのチャレンジでは、ペイロード、目的の軌道、打ち上げ場所についての予備知識なしに、数日間のうちに2回の打ち上げ実施が求められていた。
Astraは軌道打ち上げのカウントダウンを開始したが、センサーが飛行の成功に影響を与えうる予期しないデータを検出したため、T-53でカウントダウンをストップ、打ち上げを中止した。

・当社のロケットは、同業他社が打ち上げる小型ロケットの中でも、さらに小型です。高価な複合材料ではなく、主として軽量アルミニウム製なので、安価でもあります。また、高頻度(年間300基以上)打ち上げられるのも強みです。※「年間300基以上」は2025年時点の計画

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このような飛行機に乗せて

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24時間以内に世界中どこからでも簡単にロケットを打ち上げることが可能です。

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超小型衛星を複数打ち上げることによって画像・通信量の増大および高速化してゆくならば、手軽にすぐに打ち上げられるのは強みになりそうです。

5.今後の事業計画

今後の打ち上げ計画は、

・2021年から商業打ち上げを開始
・2022年は毎月1機、2023年は毎週1機、2024年は週2機、2025年は毎日1機の打ち上げを計画

そのために、製造計画

・2021年にロケット製造工場を建設、2022~2023年に量産のために工場拡大

を予定しています。

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・今後の顧客は下記のように分散させていく計画です。

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・少し気になるのは、他社と比べて打ち上げが小規模にみえてしまう点です。2025年に毎日打ち上げられるようになったとしても年間365基。上位2社の計画数が年間単位なのかは不明ですが、すぐに差は縮まらないようにみえます。

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6.今後の収支財務計画

売上計画は、

2021年400万ドル!⇒2022年6,700万ドル⇒2023年2.56億ドル⇒2024年7.8億ドル⇒2025年15億ドル

フリーキャッシュフローは2024年に黒字化する計画で、

2021年̠̠̠マイナス1.75億ドル⇒2022年マイナス1.54億ドル⇒2023年マイナス1.16億ドル⇒2024年1.77億ドルと黒字化⇒2025年6.76億ドル

となっています。計画通りいくといいですね。

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7.Valuation

・各種Valuation比較は下記の通りです。「成長力は高く、割安に評価されている」ということですが、あくまでも「2025年までの会社計画が実現すれば」の計算であることに注意です。

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8.競合他社比較

・著名なSpaceX(Tesla CEOのElon Musk氏が設立)やBlue Origin(アマゾンCEOから退き、宇宙ビジネスに時間を使うとしたJeff Bezos氏が設立)は友人宇宙飛行を目指しており、事業内容が当社と少し異なります。

・打ち上げビジネスに特化している会社で上場しているのは、Virgin Galactic(傘下のVirgin Orbit)と当社のみになります(”First pure-play public space company")。

・Virgin Orbitはロケットを飛行機に乗せて空中から打ち上げるスタイルなので、当社が強みとする「手軽さ」はないのかもしれません。

・Twitterフォロワー数がまだ3万人と、注目度が低いですが、SPAC上場を通じて今後、注目度が上がってくるのかもしれません。

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・目立った同業他社が「上場企業には」いないので、当社への投資によって今後の業界全体の成長の恩恵を受けることができるかもしれません。

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出典

https://astra.com/wp-content/uploads/2021/02/Astra-Investor-Presentation.pdf

https://engineer.fabcross.jp/archeive/200403_darpa-launch-challenge.html


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