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冬の小田原を楽しむための最高の食材、或いは深海の魔物退治について

小田原で過ごす2度めの冬がやってきた。

昨年は移住したてで右も左もわからないままの時に、脚を骨折。松葉杖をつきながら暮らしていた。脚が治る頃には冬が過ぎ去り、暖かな桜が見事に咲き誇る季節になっていた。そんなわけで昨年は、ぜんぜん冬を満喫する感じではなかった。

だが今年は違う。

我々家族は冬の小田原を120%楽しむべく、ついに禁断の魔物に手を出したのだ。そいつの名は

「鮟鱇 -ankou -」

言わずと知れた「深海魚」だ。

だが、こいつを食したことのあるジャパニーズピーポーはどれくらいいるのだろうか。少なくとも東京で売っているのを見たことがない。地元の北海道北見市界隈でも見た覚えがない。第一、これどうやって食うの?

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こんな感じで、魚や貝に混じって、スーパーでもまるごと売っている。
見よ。このインパクト。

もちろん、このモンスターをまるっと買って捌くわけにはいかないので、騒いたあとのいろんな部位をパッケージにした「アンコウ鍋セット」が、これまた小田原のスーパーではふつうに売っている。

ちょっと手元に写真が無いので、想像しづらいかも知れない。
イメージ写真をググって見つけてみた。

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見てもらったらわかるけど。
部位に分けたところで、まあまあな「怪物感」は残っている。というか捌いて部位に分かれている様がなんともいえず、初見殺しというか知らない人を寄せ付けない危うさを一層増加させているようにも感じる。

特にここ(皮)や、

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ここ(ヒレ)

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この写真ではわかりにくいけれど、このヒレ部分は「ウルヴァリンの爪」みたいのが剥き出しになっていたりする。素人がうかつに手出しできない形相。

こいつらを人参や大根などの根菜、白菜や豆腐などと一緒に味噌ベースの汁で煮込み食べるのが「アンコウ鍋」なのだが、この際に重要なことがある。

スープにあん肝を入れるのだ。

あん肝。鮟鱇の肝臓である。
海のフォアグラといわれるほど、旨味と甘味が凝縮されていてうまい。

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こいつもシレっとこんな風にパックに入っている。
それも結構な量が入っている。

この世の七不思議ではあるが、悪魔的に旨いものというのは、なぜか身体にあまり良くない。

あん肝も、プリン体という凶悪かつチャーミングな名前の物質がわんさか入っており、こいつを食いすぎると痛風になると言われている。

だが、これもこの世の七不思議の1つで、ダメだと言われると食べたくなるのが人の性分。

「あん肝、たっくさん入れちゃおう!」

なんて、食前酒に麦酒を飲みながら、テンション爆上げでノリノリで入れる。

味噌仕立てのスープにあん肝がトロっととろけていく。
しばし煮込んで鍋蓋を開ける。
潮の香りと野菜の甘味、そして鮟鱇の旨味が混ざりあった湯気がぼわあっと鼻孔をくすぐる。

あん肝入りのスープが存分に染み込んだ根菜をハフハフ言いながら口に放り込む。ハフハフ。熱い。そこにジンジンにつけた燗酒。クゥーっと胃袋に流し込む。瞬間。身体の芯に火が灯り、全身の血液が沸騰してくる。

「いざ来い、深海の魔物よ」

見た目と裏腹に、いや、悪魔的な見た目を裏切らないといったほうがよいだろうか。マジで人をダメにする旨さだ。スープに溶けきれなかった「ハグレあん肝」もレンゲでさらい、こいつも口に放り込む。あ、もう一合チンしとく?やっぱ冷酒にする?

ひとしきり、鍋の具をさらった後はこのスープにうどんをぶち込む。我が家で検証した結果、細麺のうどんのほうが合う。

うどんの麺にアンコウのスープがまとわりつき、無言で啜る。
ズルッズルッという原始的な音だけが響く、温かい食卓。

翌朝。

足の親指がすこし痛いような気がするけれど。
骨を折った去年に比べればマシさ。

まだ大丈夫。
さ、性懲りもせず、今週末も食べよう。

冬時期の小田原ではこんなところでアンコウが買えます。

言わずと知れた「魚國」
http://www.odawara-uokuni.jp

知らない人はいない「ヤオマサ」
http://www.yaomasa.com

みんな知っている「ラスカ(魚力)」
https://www.lusca.co.jp/odawara/search/17/?lusca=odawara


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